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③機材・申請篇 【機材購入とお作法を知らない保健所申請】
弊社は自社ブランドとしてサステナブルジン”YORI”を展開しています。
2024年9月には弊社初の自社店舗として、オフィス兼飲食店「COYORI」を渋谷区広尾に開業しました。
自分への備忘録と今後誰かの参考になることを願って、思考と事業のプロセスを全7回に渡ってここに連載しようと思います。
①立ち上げ篇 【飲食店未経験者がオフィス兼飲食店を作る】
②物件篇 【物件との出会いと知らないだらけの施工】
③機材・申請篇 【機材購入とお作法を知らない保健所申請】 ←今回
④ソフト篇 【太いコンセプト作りと細々したアレコレ準備】
⑤オペレーション篇 【一番重要なのは人とオペレーション】
⑥資金篇 【鉛筆なめなめPLと自己資金での挑戦】
⑦現実篇 【営業してみてとこれからの展望】
【前記事はこちら】
【マガジンはこちら】
③機材・申請篇 【機材購入とお作法を知らない保健所申請】
■必要な機材の洗い出し
図面ができてきた状態で実は保健所申請には行けるのですが、運用面を考えて先に大きな機材選定を行いました。
仲の良い飲食店にも見学などさせてもらいながら、初めての機材選び。
何が良いか、どのくらいのサイズが必要だったのかもよくわからないまま、予算と合わせてリストアップを始めました。
・冷蔵庫
・冷凍庫
・製氷機
・ワインセラー
・コンロ(ガスがないのでIH)
・スピーカー
・照明
・シンク
・その他細かい機材(レジ、コーヒーメーカー、各種食器、各種家具、棚、事務所備品など)は第4話のソフト編で記載します
■冷蔵庫・冷凍庫・製氷機は視察で決める
正直サイズなんて全くわからないし、どれくらい必要なのかのイメージもつかないので、基本は事例が全て!という考え方のもと、飲食店をハシゴしまくり聞き込みをしました。
①立ち飲み業態(冷蔵1200mm2台/冷凍1200mm2台/冷蔵ショーケース3台)
1日に30人程度が入り1日約60人が入る立ち飲み屋さんの場合、客単価3000円として二の売り上げが18万円と推計。COYORIは客席数が15席程度なのでその1/4(日売りで5万計算)のサイズ感で良いと判断。
冷蔵ショーケースはワインストックにも使われていたが、どこまでワインが出るかわからないので自店にはショーケースは保留した。(クラフトビール的に見せたいものが多ければ入れても良かったけど)
特に立ち飲み屋は料理よりもドリンク業態に近いので、製氷機のまわり方も参考になった。おそらく55kgの製氷器を使用していた。
②バー業態(冷蔵1200mm2台/冷凍1200mm1台)
席数はカウンター8席とテーブル8席程度。ほぼCOYORIと同じサイズ感の店舗。ほとんどドリンクだけで採算を取るバーも視察。冷蔵庫は基本フルーツやドリンクの冷やしにも使われているそう。
製氷機はおいておらず、氷を発注し自店で砕いて氷を成形していた。それを入れておくためにも冷凍庫があるそう。
うちはフルーツはほぼカットしないので割材を冷やすかつ食材ストック程度で十分と思った。
③居酒屋業態(冷蔵1200mm3台/冷凍1200mm2台)
COYORIとほぼ同じ席数の居酒屋(小料理屋)も視察。やはり料理がメインになると仕込みのストックがあるので冷蔵庫が増える印象。冷凍も納品が冷凍で来るものが意外とあるようで2台はMAXで使っている様子。
製氷機はかなり小さいもので25kgで製氷器を使用していた。
COYORIは料理ストックが少ないので冷蔵庫3台はいらないなと思いつつ、1台だと少ないな、ということを学びました。
■3機材の決定と購入
結論、視察を含めて機材のサイズを決めて購入をしました。
・冷蔵庫:パナソニック1500mmコールドテーブル
1200mm1台だと不安があったので、少し大きめの1500mmを1台に。
・冷凍庫:パナソニック1200mmコールドテーブル
食材ストックくらいしか入れないと想定し、通常サイズを1台に。
すごく地味ですが、コールドテーブルはユニット(ドアではない音で表示など基盤部分)が左右どちらについているかも重要で、左に置く冷蔵庫は左ユニット、右に置く冷凍庫は右ユニットにしました。
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・製氷機:ホシザキ アンダーカウンタータイプ 35kg
他の店舗規模を見てこれくらいかなと。足りなくなった時のためにジップロックに氷を入れて冷凍庫で冷やしたストックを常に置いています。
■機材選定のポイント
サイズについては前述のとおりですが、他にも2つ大きなポイントがありました。
①メーカー
どのメーカーで入れるかは結構迷った。なんとなく「やっぱりホシザキだろ!」って思って検討したけど、ホシザキは良いもので値が張りますね。。
氷は密度が重要と思うので、一番口コミが良かったホシザキを、ポイントがたくさんついたので楽天で購入。コールドテーブルは性能の差がわからなかったのでコスパの良いパナソニックにしました。
②リースか購入か
初期費用を抑えるなら間違いなくリースだよな。。と思いつつ、リースの金額で購入との金額分岐点を見ていくと約3年弱。物件も3年で更新だからこそ、最後に判断するのは”覚悟”でしかないと決断しました。笑
3年で辞めるくらいならやらないよな〜という気持ちで買いきりだ!と判断。あとはリースだと保証も入っているのでその辺の割り切りは必要です。
パナソニックは1年保証がついていたのでその後は実費での修理になります、どこまで保証をつけるべきかはapple careに近い判断かと。
また、サイトは基本ここで新品購入を検討できました。
■機材設置での問題
機材も決まり、機材に合わせて図面は引き直したものの、コールドテーブルをどうやって2階に釣り上げるのか問題が勃発。。階段が細すぎて持ち上げだと入り口が入らない、ということで吊り上げを考えました。
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「2階キッチンの方の夢叶えます!」心強いコピー!!!
ただ、COYORIは窓が大きすぎて、冷蔵庫の負荷に耐えられず割れる可能性があるとNGをもらいました。。
発注した後の判明なので施工業者と相談して入口のドアを外して(これがファインプレー!)、縦にしたり横にしたりしながらなんとか運び上げました。(本当はフロン漏れの可能性があるのでNGみたい…)
サイズと持ち上げ手法は先に確認してから購入しましょうね。。。
■その他細かい機材
・ワインセラー
そんなにワインも出ないだろうということで必要になったら購入にしました。基本はスクリューキャップのワインを仕入れることにして、いつもは冷蔵庫に横倒しでの保存にしました。
赤ワインは冷えずぎるので若干のデキャンタージュをしてから提供が必要だけどマスト要件ではないとの判断です。
・コンロ
コンロはIHで探しました。結論、アイリスオーヤマすごい。
業務用ではないですがバーフードには十分。コスパよくある程度の火力に繋がるコンロになりました。
・スピーカー
天井に備え付けだと施工が必要かつ、アンプセットなどかなり大変だったのでprimedayを利用してプロジェクター兼スピーカーになるものを購入。
android内蔵でこれだけでYoutubeやDAZNも見れるし、音楽も繋げる。何よりも自動で画角修正が入り斜めでも綺麗に投影できてすごく楽!
追記)
開業3ヶ月でやはりスピーカーが欲しいなと思いBOSEのスピーカーを2個購入。こちらもブラックフライデーでコスパよく。
決め手は、iPadに1個をペアリングしたらもう1個にも同時に音楽が流れる
「Bose SimpleSyncテクノロジー」。
2台のSoundLinkスピーカーを組み合わせて、パーティモードやステレオモードを使用でき、店内の左右においてのいい感じのステレオ再生が可能にありました!
・照明
照明は昼夜通し営業であることから調光可能なライトを中心に購入。レールライト用とソケット用で調光機能付きを購入。
ちょっと高いけどおしゃれライトが多かったのでこちらも参考にしました。
■ハードに影響があるソフトが決まったので保健所へ
保健所申請なんて全くわからない〜〜〜〜だったので参考にしたサイトはこちら。
「飲食店営業許可」を取ればいいということはわかるのですが、具体的にどんなステップで進めればいいのかは、該当の保健所によって異なる部分もあるので、COYORIの場合は渋谷区役所にある渋谷区保健所とすり合わせをしながら進めて行きました。
営業許可を取るために必要だったものの一覧はこちら。
・営業許可申請書・営業届
・施設の構造および設備を示す図面(2部)
・(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合)水質検査成績書の写し
・(法人の場合)登記事項証明書
・営業許可申請手数料
・食品衛生責任者の資格を証明するもの
参考)渋谷区営業許可申請について
■ステップ① 図面をもって事前申請へ
施設の工事着工前に施設の設計図(平面図)を用意しての事前相談が必要になります。これ結構大切で、施工してからではどうしようもないことを言われる可能性があるのである程度握っておいた方がいいです、施工前に。
・キッチン区画をスイングドアで区切ること
・シンクは2層以上、肘で動かせるレバーにすること
・トイレにも手洗い場をつけること
・キッチンの天井はあらわしがNG(これが結構大変)
・キッチンにはレンジフードが必要(今回は軽飲食なので免れた)
■ステップ② 言われた部分を図面変更
・キッチン区画をスイングドアで区切ること
みんなに聞くと申請時はつけないとだめだよと、ただスイングドアって結構根が張るのよ。。
そんな時に見つけたのがこのサイト、手作りスイングドアとっても役立った。
ヒンジをこれで買って、近くのホームセンターで一枚板買って手作業で作りました。
・シンクは2層以上、肘で動かせるレバーにすること
基本は3層(手洗い+2つのシンク)が必要というのがルールではあるが、アルコール主体のバーなど(おそらく軽飲食)は2層でもOKがもらえます。
参考にしたのはこのサイト。
シンクはTemuで2層のめっちゃ安いやつを買いました(製造中止になってた笑)、ノズルはIKEAで。
・トイレにも手洗い場をつけること
これは元接骨院だった名残で手洗い場がついていました。なのでそれを活かしておきました。ここも手洗いしながら肘などで水が止められる条件などを求められました。
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・キッチンの天井はあらわしがNG
閉所恐怖症の小口は絶対天井を上げたかったので(第2話参照)全部天井を抜く施工をしました。客席は全く問題ないのですが、キッチンの上は本当はダメのよう。
配管があったりすると埃が溜まったりネズミの通り道になる可能性があるからだそうです。図面チェック状はここに配管は無いです!と突っぱねました。現地調査の時の話は後述。。
■ステップ③ 再度保険所に更新図面を持っていく
上記、指摘された事項を全て修正して事前確認の2回目に。
上記の内容で大枠がクリアできていることを検査員の方と握り、必要書類を持って次回は申請に来ることに。
■ステップ④ 申請書類を記載する
・営業許可申請書・営業届
A4両面の申請書です。ぱっと見面倒な感じがするけれど、これは書き方を事前申請の時に検査員の方が教えてくれます。必要な部分は先方で記載していただいて書類をもらえたので意外とスムーズに。
・施設の構造および設備を示す図面
前述のとおり図面の修正はしているので、こちらも印刷して提出するだけ。
・(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合)水質検査成績書の写し
COYORIは水道水を使用しているのでこちらは必要なしでした。
・(法人の場合)登記事項証明書
こちらも3ヶ月以内の謄本を取り、原本を持っていくだけ。個人の場合は必要ありません。
・営業許可申請手数料
飲食店営業の場合は18,300円を現金で持ち込みでした。
・食品衛生責任者の資格を証明するもの
通常は6時間の講習を受けて資格を取得して提出すればOK。
ただ、小口にはウルトララッキーが!
衛生管理者の資格要件に「食品衛生監視員又は食品衛生管理者の資格要件を満たす者」と。
そして食品衛生管理者の資格要件には「学校教育法に基づく大学、旧大学令に基づく大学又は旧専門学校令に基づく専門学校において医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学、農芸化学の課程を修めて卒業した者。」と。
小口は薬学部(4年生で薬剤師免許はないけど)卒なので、卒業証書のコピーでOKでした。ありがとう薬学部!初めて役に立った!!!
■ステップ⑤ 書類提出に保健所へ
あとは上記資料とお金を持って保健所へ!施工終わりに店舗でやる現地調査の日程を決めて帰路へ。
■ステップ⑥ 立ち合いの現地調査
そして現地調査ですが、色々怒られつつもなんとかなりました…笑
・シンク小さすぎ(キッチン・シンク共に)
サイズの指定が昔はあったようですが今は無くなっていて推奨サイズになっています。が、それにしても小さいと怒られるのでご注意を。。
・天井コードもっと綺麗に
天井あらわしはいいけど、天井のコード類は全てテープでまとめて綺麗にすること、と言われました。
・天井パイプ、本当はダメ
前述したけれど、キッチンもあらわしにしました。が、案の定怒られました。笑
衛生面NGなので、よく掃除すると約束し次回のリノベなどのタイミングで天井をつけると約束しなんとかOKをもらいました。ここは押し合いでなんとかなったポイント。
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・天井のビスの穴ダメ
天井があった名残のビスの穴がいくつかありましたがそれもNGだったので、それは追ってパテで埋めました。
・スイングドアの隙間がダメ
スイングドアつけたはいいものの、小口が板のサイズを間違えて隙間が40cmくらい空いており、流石にそれはNGでした。。
10cmの隙間に、ということで追ってドアを伸ばして(ここは書けないですが気になる人は聞いてください)、写真を撮り後日保健所宛に送信しました。
■ステップ⑦ 営業許可証ゲット!
そうこうしていろんなことを頑張って営業許可証をもらいました。
めっちゃ嬉しかった〜〜〜!
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■続いてはソフト面!
ここまでが2024年6〜7月くらいのプロセスでした。
何にも知らないまま進むにつれて誰か教えてくれ〜〜〜と本当に思った。
色々調べても自分にドンピシャなものがないのでまとめることにしたきっかけかも。
ここからは開業に向けて、お客様への営業に必要なものを揃えたりオペレーションの構築フェーズに。
次回は2024年7~8月ごろの、コンセプト決定〜細かい機材について、乞うご期待。
④ソフト篇 【太いコンセプト作りと細々したアレコレ準備】