「Frozen Butterfly/WOLF HOWL HARMONY」リリースによせて!
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前の記事でも書いたように新曲がブッ刺さりすぎてやばい。曲調と歌詞とMVが全部好きなやつだったので冷静に抗いようがない。
本人たちにも特典会で毎回「フロバタがめちゃくちゃ好き」「今日はフロバタを聴きにきました」「衣装めちゃくちゃカッコいいですね!」とわざわざカンペを拵えて伝えている。冷静に考えたら金払ってまで伝える内容がそれでいいのか。いやそれこそ伝えなきゃダメなことだろ。顔合わせて作品の感想言える機会なんてそうあることじゃねえぞと常に正当化しながら何回かいろんなところで書いてるのでまたかと思われそうですが、守りに入らない芸術家が好きです。
ハングリー精神というか。VIPぶらないというか。
わたしは気がついたら20年くらいゆるーくGLAYさんのファンをしてるんですが、先週末のGLAYさんは札幌ドームでQueen+Adam Lambertの前座をやってはりました。あのQueenを本邦に招いて行われる非常に貴重な機会とはいえ前座よ? かつてデビュー3年かそこらでベストアルバムを500万枚売って社会現象になったバンドが、デビュー30周年迎えてドームで前座とは。様々な事情と背景があろうとはいえ恐れ入りました。そしてそのハングリーさがやっぱ好きだなあと思った由。
芸術といえば反体制とまでは言わないんですが、何かしらの活動における指針というか情熱というか、芯のようなものが見えるとやはり嬉しいものです。アウェーに殴り込むのって矜持がないとできないだろうし、その矜持を裏付けるだけの技量や経験や実績があると尚更かなと思う。GENERATIONSがフェスに出続けた昨年も同じことを言っていました。不易の世の中で自分たち自身が普遍であること、その一方で常に攻め続ける姿勢を保つことは容易に両立することではないと思います。
思えばそういう、一筋縄ではいかない芸術家ばかり好きでい続けている気がします。もちろん彼らが代わりに言ってくれたと賛美するのではなく、そういう表現を作品通して普段からしているから地続きなんだろうな〜と思わされる感じが好きなのかもしれません。ああこの発言は口だけじゃなかったんだな感と言いますか。インタビューやSNSでわかりやすく紡がれた発言、例えばそれは政治発言だろうが何かの批判だろうが、時には自分と意見が違おうが、ああ作品でそういうこと言ってたもんねえと答え合わせをするような感覚に安堵できるのかもしれない。作品が表現する言説や世界観と矛盾しないアーティストの立ち姿勢に安心して応援ができる。それは有体な言い方をすれば「信頼」ともいえます。自分もいい年してるのでやっぱ信頼できない芸術家には知らないとはいえ金落としたくないじゃないですか(言い方)そういう意味では誰かのフィルターを通して綺麗に整備されたものより、多少危うくても自分たちで制作意図や楽曲コンセプトを語ってくれて、それが普段の発言や通ってきた歴史と合致する方がずっと信頼に値すると感じています。
前置きが長くなりましたが、今回この「Frozen Butterfly」、今までストレートなラブソングを歌ってきたWOLF HOWL HARMONYの新境地にして真髄じゃないかなあと思ったところがあって、まあ何せ「胸の奥に凍らせていた想いや情熱を空に羽ばたかせる」という歌詞の世界観が、まんま応援してきたこの1年半(もう1年半にもなる!)と重複する部分だなあとつくづく痛感しました。私は本当にゆるいファンでにわかで歴も浅かったけど、興味持って間もない人間がテレビでの切り取り方がアレとはいえまあまあな言われ方をしてるのを「テレビの演出やから……」と流せるほど温和ではなかったので、十二分に作為的な演出にもなんでやねんって思ってましたし今も残ってる(どういう神経でああいう書き込みしてるんですかね?未来永劫残るのに)番組公式動画のコメント欄を見るたびに腑が煮え繰り返る想いなんですが、なんだかそういう思いも当人たちのインタビューや発言を見聞きする中で納得できた部分、前向きに捉えられた部分があります。この楽曲もその一つの解になりそうな気がします。
痛みは痛覚を麻痺させれば感じないのでアイシングする。どんなに熱い想いがあっても胸中で凍らせる。
蝶の翅は意外と個体差があるようです。同じ種で同じ地域に分布していても少しずつ異なる。ジャケ写で使われてる蝶はモルフォという種類らしいんですが、南米原産のものが多いようで。蝶の翅って意外としなやかで、空気を受け流すように捻れながら翔んでいるようです。確かに外骨格の昆虫と骨を持つ鳥類の飛翔構造は大きく違いそう。あの華やかな見た目に至る前に蛹の姿で越冬し、春にその身を空へ羽ばたかせる。
示唆に富んだモチーフじゃないですか? 同時にWOLF HOWL HARMONYがこの曲に賭けた思いもなんかわかるような気がした。
蝶って優雅に見えて結構食われるし危なっかしいし脆弱なんですよね。翅が弱るともうどうすることもできない。羽化で何か異常があってちゃんと翅が開かないこともあるし、どんなに自然界で華やかな姿を見せていてもそれらはすべて身を守るための擬態だったりする。一方でめちゃくちゃタフでもある。成体の状態で半年くらい生きたり、1000kmくらい翔ぶ種類もいたり。しなやかで嫋やかに見えて、意外に力強くて、そして何より美しい。ウルフはウルフ(狼)というモチーフがすでにあるんですが、同時に蝶というモチーフも内なる心象の表象としてあるんじゃないかと。3グループの中では「踊れない」と思われていた彼らが、Dance Performance Videoを出すっていうのがもはや羽化そのものだし、今後もそうした表現を選択肢の一環として持つというそのしなやかさ、メタモルフォーゼ的な変遷の過程を見られてファンは、ファンは嬉しいです! と声高に叫びたい。完全変態の生き物はこれから如何様にも化ける。極めてなお進化し続ける。
蝶のように舞い蜂のように刺してほしい。ちなみに2曲目はSugar Honeyである。はちみつ。そういうこと?
MVも解禁されたのでMVにも言及しておくと、今新進気鋭のMV監督であるSpikey Johnを迎え、KADOKAWA DREAMSを招聘して作った豪奢な映像が目を引く。このゴテゴテの照明直張りの壁、あるんだ。と思ったらセットでした。そうだよね。トンネル型の流線型もだけど、どことなくゼロ年代のavexを感じる。もっと言うならアメリカのR&BのMVでも見たことある気がする。パッと出てこないけど。何よりアス比が4:3じゃないか??? 私はずっと「何このアス比4:3で見たい画質のやつは」とトレイラーに向かって言ってたんですが(画質が完全に90年代ポップスのそれだった)、再生用のプレイリストで別のMV流すと画面のサイズが変わる。渋い。最高。ちなみによく一緒に見るのはPSYCHIC FEVERのJust Like Datである。監督繋がり。
めちゃくちゃ踊ってる一方でボーカリスト・ラッパーに特有のあの立ってるだけでカッコいい独特の空気感も全然醸し出してくる。ビーニーがよくお似合いです。魚眼レンズを覗き込む構図、なつかしい感じ。今のアラサーくらいの大人は思春期にだいたいそういうのを浴びて育ってるんですよ。
蝶を指先に止めるように手を差し伸べる振りが静と動の合間に位置付けられていてみるたびに背筋が伸びる。いろんな人の、春先の新しい挑戦の背中を押す曲になるのでは。雪は解け、水は温み、蝶の羽搏く季節にこういう高い天を見上げる曲は数多の人々の未来を彩ると思う。
そういえばこの曲の4人は4人ともみんなめちゃくちゃ明るく晴れがましい、美しい表情をしている。凍らせたガラスの内側にいるときでさえ美しい。中でも年下2人の笑顔が極めて美しくて、この人たちこんなにきれいなのか、と改めて思った次第。撮り方が良い。本人たちがみんな最強にビジュが良いのに加えて光の当て方やヘアメイクの加減が最高。カラコンのチョイスも素晴らしい。
あと細かいところでいうとラスサビを歌う比嘉さんが最後の一音だけ横を向いて横顔で終わるのも綺麗だし計算され尽くした美の角度を感じる。実は黄金比だったりしない? なんかあの美術の教科書によく出てくる螺旋の図を並べたくなった。1:1.618のやつ。
まあ詳しくはみて。
MV見た人が「平成感」と言ってるのもわかるし私も確かに既視感ある〜と思ったけど、それってつまりある種の普遍性を踏襲したと言うこともできるわけで、定石を重んじながら新たなアレンジを加えるのは並大抵のことではないと思っています。スタンダードの潮流の中に自分たちを位置付けるのはもちろん挑戦であり、それだけのことをやってるという自負が不可欠で、そこに芸術家としての矜持と教養を見ました。つくづくDJ DARUMAという偉大な賢者、私はDARUMAさんのアート、フィクション、カルチャー受容とその見識にそれこそ絶大な信頼を置いているので、その彼の薫陶を直接受けるWOLF HOWL HARMONYがどこまで行くのかを心の底から見届けたい。大いに刺激を受ける日々です。人生に影響を受けることができて幸せという域まで来ています。このへんはかろうじて当たったオンライントークイベでリーダーに余す所なく伝えてくるとしよう。歴史背景を重んじる音楽オタクにとって、あなたがたのようなチームが存在することが何よりの福音です。多分本人を前にしてこんな気取ったことは言えないのでブログに書いときます。
WOLF HOWL HARMONYというグループの魅力が見る目のある人、芸術を愉しむ人、音楽を愛する人にバイアスなしでたくさん伝わりますように。
ということで新曲、おすすめです。カップリング曲も良いよ!
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