成人の日。庭師になった父と、いつまでも大人になれない私と。
新年早々、亡くなった父の夢を見た。
なかなか父は夢に出て来ない。
出て来ても話が出来ない。今回はちゃんと話すことが出来た。
夢の中で、父は何人かの職人さんと共に庭仕事をしていた。生前の父は、公務員だったが庭いじりが大好きだった。あちらの世界では、いよいよプロの庭師になったらしい。
かっこいいじゃないか。
父と私がいる場所は、少しだけ世界が違うようで、話しかけにくい雰囲気だった。
しかし、どうしても伝えたいことがある私は、一緒にいた友人に急かされ、意を決して話しかけることにした。(友人が誰だったのか思いだせない)
「お父さん、あのね、私、もうすぐ死ぬの」
え?マジですか?初耳ですが。
予想もしないことを語りだした自分に驚く。
すると父は、たいして驚きもせず、
「そうか。俺も、もうじきあちらの世界に行こうと思っていたんだ」
じゃあ、ここはどこだ?
この世とあの世の中間地点なのか?
「私が行くまで待っていてくれる?」
と聞くと、
「おう、分かったよ」
と、元気に答えた。
そこで目が覚めた。
衝撃的だった。
はっきり覚えている。
「死ぬかも」ではなく、
「死ぬの」と私は言った。
これ、やばくないすか?
こんな夢を見ちゃうなんて、ダメでしょ。
心当たりはある。
このままでは死ぬぞー!と恐れていたことがある。
最近、ずっと寒気がしているのだ。熱が上がる前のような寒さ。でも体温はずっと正常。36℃以下の時すらある。いくら暖房をつけても厚着をしても、ちっとも暖かくならない。
もしかしたら、とんでもない病気にかかっているかもしれない。
そう思って過ごしていた。
病院へ行こう。
いつものクリニックへ行くと、あまり深刻に扱ってもらえなかった。風邪を引いていたんだろうけど、風邪薬を飲む時期は、過ぎてしまったので、身体を温める漢方を飲みなさいと、漢方薬を出された。
寒気以外は何もないと伝えたら、血液検査も、胸部レントゲンも無かった。
病気に関して、私はどうしても考え過ぎてしまう。悪い想像ばかり膨らんで、いつも落ち込む癖がある。それが夢にまで出てきてしまった。
どうしたものか迷ったが、ちょっと衝撃的な夢だったので、姉に話をしてみた。
「あれ、私の夢と、そっくり」
同じ日、姉も父の夢を見たと言う。
夢の中で、姉は父に、そちらの世界は楽しいか?聞いたそうだ。父は、
「うーん、どうかな」
と、どちらの世界も同じだと言いたげな様子だったらしい。
「私がそっちへ行ったら、待っていてくれる?」
と、姉も同じようなことを父に聞いた。
父は、
「うん」
と、高橋一生さん張りの笑みを返してくれたらしい。
なんというか、双子的シンクロ。
どこなのかは分からないが、同じ時間、同じ場所で父に逢っていたのかもしれない。
今でも父は私達姉妹のことを気に掛けているのだろうか。父には父で、やるべきことが沢山ありそうなので、こちらの心配は掛けたくない。
いくつになっても、親にとって子は子供のままなのか。親になったことがないので、実感することが出来ない。
心底、申し訳ないなと思う。
今日1月10日は、成人の日。
私が20歳になった年、将来の夢も見つけられず、ただただ焦る毎日を過ごしていた。かたちばかりのお祝いなど意味がなく思い、式にも出ず、晴れ着も買わなかった。
思えば成人式は、自分のためではなく両親のために行うのかもしれない。ここまで育ててくれて、ありがとうございました、と。
生きているうちに感謝や恩返しが出来なかった私は、少しだけ苦い気持ちで毎年この日を迎える。
そして、こんな歳になっても、父を思う度、いつまでも情けない子供のままなのだ。