【林明子さんの絵本のおはなし】『クリスマスの三つのおくりもの』(福音館書店)
わたしが研究対象としているのが、
絵本作家の林明子(はやし・あきこ)さん。
『はじめてのおつかい』(福音館書店)などで
大人気の作家さんです。
わたしはおととし、修論執筆のために
ご自宅で林さんにインタビューさせていただきました。
【林明子さんの絵本のおはなし】では、
その研究成果を含めた林明子さんの絵本のことを書いていきます。
クリスマスですねぇ。
いかがお過ごしですか?
クリスマスといえば、
やっぱりまっさきに思い浮かんでしまうのが、
大好きなこの絵本です。
『クリスマスの三つのおくりもの』
1.『ふたつのいちご』
2.『サンタクロースとれいちゃん』
3.『ズボンのクリスマス』
林明子 作
福音館書店 1987年
*『ふたつのいちご』
クリスマスケーキに飾るいちごを探しに
森へ出かけたかすみちゃんが、
うさぎの一家に出会う、心温まるおはなし。
*『サンタクロースとれいちゃん』
イブの夜、念願のサンタクロースに出会うも、
サンタの袋の中に入ってしまったれいちゃんの、
不思議なひとときのおはなし。
*『ズボンのクリスマス』
クリスマスパーティに出かける支度をしない
もっくんを置いて、ズボンだけが
先に行ってしまう、ユーモラスなおはなし。
上記3冊の絵本がケースに入った、
ちいさなサイズのセット本です。
***
みんな大好き、林明子さんのクリスマス絵本。
もう随所でおすすめし尽くされている絵本なので、
ここでは林明子さんの研究者として、
裏話?をご紹介したいと思います。
*実在する主人公たち
まず、この3冊の主人公、
かすみちゃん・れいちゃん・もっくんが、
実在するのをご存知ですか??
この作品の子どもたちは、
かすみちゃん・もといくん・れいちゃんの
3きょうだい。
おはなしに登場するのは、
ちょっと順番が入れ替わってますね。
林明子さんは6人きょうだいのまんなか。
なので、たくさんの姪っ子、甥っ子に恵まれていらっしゃいます。
林さんの絵本は、
姪や甥にモデルになってもらい、
その姿をカメラに収め、
撮り溜めた写真を見ながら描くことで生まれます。
彼女の絵本の中の子どもたちが、
わたしたちの心を掴んで離さないのは、
愛情に満ちた瞳で姪や甥を見つめる
林さんのフィルターを通して描かれていることが、
理由のひとつといえそうですね。
今では3人とも立派な大人。
インタビューの際には、
「こんなお仕事をしててね…」と、
姪っ子や甥っ子の現在の様子を
嬉しそうに話してくださる林さんが印象的でした。
*ファンタジーのリアリティ
ところで、
わたしにとってこの絵本でとくに印象深いのが、
サンタクロースの手です。
3冊の中で唯一、サンタクロースが登場する
『サンタクロースとれいちゃん』。
クライマックスで、
れいちゃんをベッドに寝かしつけてくれるサンタクロースが、
彼女のおでこに添えているのが、
皺の刻まれた大きな手です。
少しゴツゴツしていて、優しげで大らかで温かそうな手。
空想世界の存在のはずのサンタクロースなのに、
物凄くリアリティがあって、
幼い頃からこのページがとくに大好きでした。
その訳は、
林さんのお父様の手をモデルに描かれているから。
徹底的に追求されるリアリティが、
ファンタジーの世界に現実感をもたらしているんですね。
林さんの絵本を開くと、
まるで空想世界がすぐそばにあるかのような感覚になる理由が、
少しだけ垣間見えます。
*絵本誕生のひみつ
最後に、この絵本の誕生秘話を。
林さんはよく、幼い姪っ子や甥っ子に
即興でおはなしを語って一緒に楽しんでいました。
そこから生まれた作品も少なくなく、
『ズボンのクリスマス』もそのひとつ。
元々は、
「にげだしたズボン」というタイトルだったそうですよ。
***
いかがでしたか?
こんな裏話を頭の片隅に、
林さんの絵本を楽しんでみてくださいね。
今回、
林さんの記事を書いてみて、あらためて
ご本人にお会いできてほんとうにありがたかったなぁ、としみじみ思いました。
林さんの絵本好きなみなさまにも
いっしょに楽しんでいただけるように、
また少しずつ投稿していきますので、
お楽しみに!