不登校の海① はじめに
2020年5月、新5年生になったばかりの長男が不登校になりました。それから9ヶ月かけて学校に復帰するまでの記録をひとつの記事にまとめたのが2021年のこと。ずっと公開していなかった記事ですが、少しずつnoteに出していこうと思います。
はじめに
2020年5月、新5年生になったばかりの長男が不登校になりました。
最初のうちは「すぐに行けるようになるだろう」と軽く考えていたのですが、海は予想以上に深く、広く。
学校に行くことができないまま、時間だけが過ぎていきました。
それはまるで、乗っていた船から突然海に落ちたような感覚でした。「不登校」という海に。
突然足元の感覚が無くなり、自分がどこにいるのかわからなくなる。捕まる場所も無い、どこに向かって泳げばいいのかわからない、陸も見えない。
「このまま学校に行けなかったらどうしよう…」
今は不登校のためのフリースクールもだってあるというし(噂で聞いた程度の知識だけど)、オンラインで学習もできるし(実際やったことは無いけど)…
不安を打ち消す材料をかき集めてみるものの、心から「学校に行かなくても大丈夫」と思えるようにはなりませんでした。
そして「ずっと学校に行けずに引き籠りになってしまうんじゃないか?」と、根拠のない想像を膨らませ、勝手に不安を感じ、その態度は長男にも伝わっていたと思います。
だから「一日も早くこの海から抜け出したい!」って、親の私はずっと思っていました。
不登校になってるのは長男であって私じゃないんだから、私が焦ったところで仕方がないんですけどね。
長男は、どうだったかな?
抜け出したいと思いながらも、かといって学校に行くのは怖いって言う気持ちもあり、相反する気持ちの狭間で、それこそ波のように揺れていたんじゃないかな?
しばらくは親子ともども揺れ動く日々を過ごしていましたが、不登校が始まって1か月近く経った頃、あることがきっかけで、こんな風に考えるようになりました。
長男の不登校は今に始まったことではないのかもしれない。
だとしたら、そんなにすぐに解決するものでも無いだろう。
それなら…
「この海から抜け出すことだけを考えるんじゃなくて、一度深く潜ってみよう。」
「この海の中にあるものを、しっかりと見つめてみよう。そもそも海に落ちたことに、意味があるのかもしれない」
水面でバタバタもがくのをやめて、深く深く潜ってみることにしたのです。
今の生活が変わったとしても長男との時間を優先してみようと、覚悟を決めて、腰を据えて。
すると…海の中には、思ったよりもずっと穏やかな世界が広がっていることに気が付きました。
海に深く潜ることがなければ気付かなかった長男の優しさ、次男の優しさ、長男の苦しみ、長男の才能、知らないうちに犯していた私と夫の失敗。
長男と私、それぞれが自分と向き合うための「時間」を過ごすことで初めて、気づくことができました。
不登校を美化するわけじゃないし、もちろん正当化するわけでもありません。
ただ、しばらくの期間学校に行かない選択をしたことで、見えてくる世界が間違いなくありました。
その世界を見ることができて、私も長男も本当に良かったと思っています。
長男も私も、それまで気付かなかった「新しい自分」に出会うことができたから。
海の中へ潜ってみたことで、私たち親子は不登校という海の泳ぎ方を知りました。
海を泳ぎ切って、元居た場所に戻ったのではありません。
たどり着いた先は、全く新しい場所だと感じています。
不登校の海を泳ぎ切るのに、9か月間かかりました。
なかな進まないように感じたし、先が見えくて焦る時期もあったけれど、今振り返ってみるとあっという間だったような気がします。
最初は、突然「不登校の海」に落ちて、もがいていた当時の自分に届けるつもりでこの記事を書き始めました。
不登校の指南書というよりも、ただ「大丈夫だよ」と伝えたくて。
その「大丈夫だよ」と思える根拠になるようなエピソードを記事にしようと。
だけど、書いていくうちに気が付きました。自分がこの記事を届けるべきは、一番自分が子育てに苦しんでいた時期、長男が5歳、次男が生まれたばかりの頃の自分なんじゃないか?と。
当時の私は「良い親に見られたい」という思いに捉われてしまい、長男の気持ちに気づくことができず、長男を十分に甘えさせてあげることができませんでした。
それが今回の不登校につながっているかどうか?はわかりませんが、私が本当に「大丈夫」と声をかけてあげるべきは、あの頃の自分なんじゃないか?と思ったのです。
詳細は、また明日からの記事で。
「はじめに」の終わりに
この記事には、不登校だった9か月の間に試みたこと、効果を感じたこと、気づいたこと、そして長男が学校に行けなくなった本当の理由やそこに至るまでの「大きな後悔」を、自分への戒めも込めて記録しています。
最初にお断りしておくと、「学校に行けている状態が良くて、学校に行けてない状態は良くない。」という前提ではありません。
(本音を言えば「ふつう」に学校に行ってくれたらそりゃもう楽に違いないですが!!)
長男の場合は学校に「行きたくない」わけでは無く、「今は不安な気持ちのが大きすぎて学校に行けないけど本当は学校に行きたい」という状態だったので、「登校」というゴールに向けて取り組んでいこうと決めました。
もちろん、自分の経験が全てでは無いし、不登校のパターンも、子どもの数だけあると思います。
自分がやってきたことだけが正しいわけでは無いということを承知の上です。
それでも、子どもの不登校を経験した一人として、私たち親子が不登校に向き合った記録がどなたかのお役に立てればとても嬉しいなと思い、公開することを決めました。
最後までお付き合いいただけますと幸いです。