不登校の海⑭ ようやくスタート地点
2020年5月、新5年生になったばかりの長男が不登校になりました。noteでは長男が9ヶ月かけて学校に復帰するまでの記録を公開しています。
「はじめに」はこちら★
ようやくスタート地点
そもそも学校には行けた方が良いのか?
「はじめに」でも少しお話したんですが、この記事を書く上で「そもそも学校には行くことが正解で、行けない状態は良くない」という前提には立っていません。
あくまで私たちは長男の気持ちに沿いたいと思っていましたが、彼が最終的に何を望んでいるのか?がわからずにいました。
このまま学校に行くための努力をするのか?学校に行かずに過ごすのか?
長男自身もたぶん自分の気持ちがわからなかったし、それを言葉にすることができなかったからです。
結論が出たのは、初回のカウンセリングを受けてしばらく経った6月も半ばを過ぎたころだったと思います。
少しずつ長男との対話を重ねるうちに、ようやく長男の口から「本当は学校に行きたい」「不安な気持ちにならずに学校に行けるようになりたい」という言葉が出て来ました。
実は、この言葉が出るようになるまでに何度か長男を泣かせてしまいました。
私自身が「学校に行きたくない」と思った経験が無かったこともあり、長男の「学校に行けない」状態をうまく推察することができなかったのです。
折しもコロナ禍で、インターネット学習できる塾や教材が急激に増えるなど「学校に行かなくても自宅で勉強できる環境」が整いつつありました。
そんなこともあり、私は「もしかしたら学校に行かない」という選択肢をちゃんと考えた方がいいのかも?学校に行かなくても大丈夫ということを長男自身が理解できると気持ちが楽になるのかも?(私自身ははまだまだ受け入れられて無いくせに)なんて考えていました。
東進やスタディサプリなどのオンライン授業の「お試し」などを申し込み、「今は学校に行けなくてもこういうので勉強もできるから!」みたいに励ましたつもりでした。
ところが長男としては、そんなふうにパソコンででひとりで勉強なんてやりたくなかったのです。
「自分は学校に行けるようになりたいのに、何でお母さんは検討違いのことばっかり言ってくるんだ?全然自分のことを理解してもらえてない!」
と、悲しい気持ちだったでしょう。
だけど、うまく言葉にすることができないままでした。
長男自身の言葉を引き出せるようになったのは、私自身が持っていた「前提」を変えたからだと思っています。
「長男は何か私たちに言いたいことがあるけれど、言えていないのだ」
という前提。
それまでは「どうして学校に行けないんだろう?」「何が引っかかっているんだろう?」一方的に疑問に感じているだけでした。
カウンセリングを受けたことで、長男の中には「まだ言えていない言葉」があり、それを言わせなくさせている原因は私自身の関り方であることを知りました。
それがわかっただけで、関わり方も自然と変わったように思います。
そして、自分の言葉を文字起こししたことも効果があったように思います。
私だけでなく、夫も長男との会話を文字起こしして一緒にカウンセリングに行き、先生に会話を見てもらいました。
私たち二人ともが自分の話してる言葉やそれに対する長男の言葉を文字に起こしてみて、少しずつ自分の間違いに気づいていきました。
その積み重ねでようやく「対話」ができるようになり、長男の口から「本当は学校に行きたい」という言葉が出てきたように思います。
こうしてようやく「学校に行く」という私たちのゴールが見えました。
ただし、単に学校に行けるようになることではなく、「安心して学校に行けるようになること」。
つまり最上位の目的は「学校という場所に限らず、長男が安心して過ごせるようになること」でした。
当時の長男は、家の中ではリラックスして過ごせていましたが、外に出ることができませんでした。
平日の昼間に外出すると、「学校に行ってない子」と思われる可能性があるからです。
学校に行っていないことに罪悪感を感じている長男は、常に肩身の狭い思いをしていました。
土日は外出も平気でしたが、平日の昼間に「一緒にランチでも行く?」と誘っても、人に見られるのが嫌で出かけることができなかったのです。
「不安を感じることなく学校に行けるようになる」
ゴールが見えたことで、ようやく私たちは「不登校の海」を泳いで渡るためのスタート地点に立つことができました。