春の大人の遠足へ出かけよう!ストラスブール発:ハイキング&城&ワイン
晴れの週末を利用して何をしようかと思った時、アルザスで自然を満喫しない手はありません。アルザスは南北約190㎞、東西約50㎞と小さな地域ですが、都会近郊の森もあるし、もう少し足を延ばせばブドウ畑やヴォージュ山脈でのハイキングも可能です。都会のストラスブールからも簡単に自然にアクセスが出来るんですよ。
今回は、春先のある晴れた土曜日の遠足のレポートをお届けします。
ストラスブールから日帰りでワイン街道の村や自然が楽しめるアルザスの選りすぐりをギュッと凝縮したコースです。ストラスブールを出発し、ワイン街道の村を通ってヴォージュ山脈に残る城塞のひとつ、アンドロー城に登ります。
リュックにお昼のピクニック用のサンドイッチ、チョコレート、飲み物を入れたら、さぁ出発です!
ストラスブールから電車で出発
ストラスブール駅から電車で40分でバール村へ。この村はかつてコルマールと並んでアルザスワイン商取引の中心地でもありました。今もワイナリーは健在ですし、街並みは可愛らしく、この村とその裏手に広がる特級畑のブドウ畑の斜面を散策するのもとても気持ちがいいです。ストラスブールから気軽に訪れるワイン街道の村としてもお勧めです。
バール駅に着いたら、村の中は通らずにまずは今回の目的地、アンドロー城を目指します。バール村の横を通り過ぎ、お隣のミッテルベルグハイム村まで行ったところにお城に繋がる山道が始まります。バール村からミッテルベルグハイム村までは約1.5㎞の道のり。ゆるい高配のあるブドウ畑が村と村をつないでいます。ブドウ畑は見晴らしも良く、東側に広がるアルザスの平野地まで開けた風景が楽しめます。晴天で空気が澄んでいれば、ライン川の対岸にあるドイツの黒い森まで見渡すことが出来ます。歩みを進めてミッテルベルグハイム村の北側に到達すると、そこは特級畑ゾッツェンベルグ(ツォッツェンベルグとも)です。51あるアルザスの特級畑のなかで唯一シルヴァネールのグランクリュが認可されている畑という事もあり、ご存知の方も多い畑の一つかもしれません。
この時はちょうど春先でブドウ畑には野生のチューリップが咲き始めたところでした。普段見かけるチューリップよりも少し小さくて、花びらの先がツンととがった形の素朴で可愛らしい黄色いチューリップ。特にこの一帯のブドウ畑に群生していることから、ミッテルベルグハイム村の野生のチューリップは有名で、この村のシンボルにもなっています。この時期にいらっしゃる方には是非ご覧いただきたい春のアルザスワイン街道の風景です。(※保護植物に指定されていますので摘み取りは禁止です。)
アルザスの城塞を巡るハイキング
ミッテルベルグハイム村の中を通って山道を目指します。小さな子供連れの家族から上級登山者までが楽しめるバラエティーに富んだハイキングコースが整備されていますので、それぞれのレベルに合わせたコースを選ぶことが出来ます。ハイキングや山の本もたくさん出ています。こちらに来て思ったことの一つに、アルザスの人は自然に親しむのが上手だなという事です。普段は街に住み働いていても週末は日帰りで登山を楽しんだり森に散歩やサイクリングに出かけたりと、とても身近に自然を感じる生活を営んでいることに感銘を受けたものです。
アルザスの西側に南北に連なる山々がヴォージュ山脈で、中世の頃には約400ほどの城塞がありました。現在は廃墟の城跡も含めて80ほどが残っています。こういった城塞は守備・戦略の観点から見晴らしの良い(遠くまで見張りが出来る)山の上に作られたのですが、今では風光明媚な場所という事もあり、ハイキングをするのに人気があります。整備されたお城を巡るハイキングコースは全長450㎞にもなります。
山道には行先と赤い丸や青い十字など様々なマークが所々に付いています。ハイキングの地図と確認しつつ自分の行きたいコースの示すマークを辿って進みます。
アンドロー城は標高約450mの低い所にあり、標高約210mのミッテルベルグハイム村からの山道は穏やかで、ゆっくり登っても1時間もかかりません。森林浴を楽しみながら山道を行きます。ただし分岐点で自分の行きたい方向のマークを確認しないと道に迷う事もあるので簡単なコースでも注意が必要です。
アンドロー城
アンドロー城は二つの塔が特徴的なお城で、遠くからでも識別が出来るお城の一つです。記録によると、13世紀後半にはお城の存在が確認できますが、お城を任されたアンドロー家は12世紀からあり、最初の建設はおそらくこれよりも前になると考えられています。
13世紀後半の記録とは神聖ローマ帝国最初のハプスブルク家出身の皇帝ロドルフ・ド・ハプスブルクがこの城塞をアンドロー家の3兄弟に任せるとしたものでした。
その後アンドロー城はフランス革命後に人から人へと売り渡されるようになります。19世紀初頭まではこの塔にはきちんと屋根が残っていたそうですが、なんと1806年にバラバラに資材として部分的に売られるようになる中で、屋根が解体されてしまったとの事。なんと勿体ない!!!!
そこで、当時の当主アントワーヌ-アンリ・ド・アンドローが1818年にお城を買い取り破壊から城を守りました。
そしてアルザスでも最も古い貴族の家のひとつアンドロー家ですが、この21世紀にも続いていて、現当主のギヨーム・ド・アンドロー氏によりお城の修理保全を担うアソシエーションが2000年に組織され、お城は現在に至るまで大事に守られています。
お城にも入れますし、眺めも最高です。アルザスの平野を見下ろして中世の頃に思いを馳せてみるのも壮大でロマンチックですよ。
フランスの最も美しい村、ミッテルベルグハイム村へ
お城を一通り見た辺りから、空の様子が怪しくなってきました。雲が厚くかかるようになり、急に気温が下がって寒くなってしまいました。下山するのに、もう一つの隣接する村、アンドロー村へ降りて、南側のブドウ畑を通ってミッテルベルグハイム村に帰りたかったのですが、あまりの突然の寒さにもと来た道をピューっとたどって村まで直帰しました・・・。
ここでお昼。この村にも美味しいレストランがあるのですが、なにせコロナ禍で休店中のため、特級畑ゾッツェンベルグの横でピクニックを広げてサンドイッチを頬張ります。ちょっとこの日は寒かったですが、気候が良ければ、こうしたピクニックもお勧めです。朝パン屋さんでサンドイッチを買う事も出来ますから、ホテル滞在でもピクニックは可能です。(村には一つだけ小さな商店がありますが、お昼は閉まるので要注意。)
ミッテルベルグハイム村は「フランスの最も美しい村」にも認定されている小さな美しい村で、その歴史は古くは7世紀~9世紀、いえ、もっと前のケルト時代までさかのぼる古い場所です。ブドウ畑に囲まれ、ワイン産業で栄えた村で、家並みは木組みづくりの可愛らしい小さな家ではなく、16世紀頃から立派な大きな石造りの家に建て替えられました。今も700人足らずの小さな村に沢山のワイナリーがひしめくアルザスワイン街道の村です。(現在17ワイナリー)
家並みもさることながら、ワインの歴史をたどる博物館(要予約)もあり、この小さな村の中だけで多方面からアルザスのワインの歴史を紐解くことが出来ます。
また、毎年7月に開催されるワイン祭りでは、タルトフランベやお菓子の屋台にワインの催し物の他、民族舞踊に音楽が小さな道をいっぱいに繰り広げられ、毎年多くの人でにぎわいます。
さて。ワイン街道の村を訪れて、素通りで帰るわけには行きません。山にも城にも登ったし、後は電車に乗って帰るだけ・・・・ならワインの試飲も良いでしょう?
ワイナリー訪問:ドメーヌ・リーフェル
普段、ワイナリーにお邪魔するときはアポを取ってから行くのが常ですが、今回はハイキングをメインの目的で出かけたため、万が一に何かあった場合(転んでけがをしたり等)に約束の時間に行けない可能性もあるし、そもそも行けなくなるかもしれないと思い、特にアポは取らずに出発しました。ワイナリーにお邪魔できる余力があった場合、どこかアポなしで受けてくれる所があれば、くらいの気持ちでした。
この村にはもう何軒かお邪魔していて、お客様とも伺ったワイナリーもありますが、今回は以前から行ってみたくても機会が無かったドメーヌ・リーフェルさんを訪ねました。
アポなしでしたが、タイミング良く中に招いていただけました。
リーフェルさんは、3つのグランクリュ(特級畑)と5つのリュー・ディを含めて村の周辺に約10ヘクタールを所有しています。オーガニック農法で、酸化防止剤を出来るだけ減らしたワイン造りをされています。
こちらのボトルは全てコルク栓からスクリューキャップ移行しています。天然、加工に関わらず、コルクはワインに影響を大なり小なり及ぼすもので、その点において、スクリューキャップの方が品質を保つのに優れているからだそう。コルクの見た目が良いのは重々承知だけれど、品質第一だからと力説してくれた三代目のリュカさん。ワインは彼の実直さそのものが現れたような、しっかりと芯のある(ボディのしっかりした)ワインでした。
ただし、見た目に無頓着というわけではなく、エチケットは3人のアーティストに依頼してデザインしてもらったもので、とってもオシャレでカッコいいんですよ!
お昼と登山ガイドブックだけを30リットルの登山リュックに入れて来た私。もちろんワインを詰めて帰れるようにとわざわざ大きなリュックで来たのです。ボトル4本を厳選して詰めて、時間いっぱいまで丁寧に付き合ってくれたリュカさんにお礼を言ってお別れしてきました。
さて、リュックも心も満たされたし、ぶどう畑を通って帰りましょう!
と、思ったら。
もう一軒行こう!!!
と、この日の遠足仲間の友人。(笑)
ワイナリー訪問2:ドメーヌ・ギルグ
というわけで、この日のアポなし突撃ワイナリー訪問パート2へ。ギルグさんです。2つのグランクリュを含む29ヘクタールと広大なブドウ畑を所有されています。こちらはちょうどオーガニック農法に転換しているところで、2021年収穫分からオーガニックを名乗れるそうです。転換には3年がかかり、4年目からビオワイン(オーガニックワイン)と名乗れるようになるため、表示はされていなくても2018年収穫の分からは実際にはオーガニック農法で栽培されたものです。
お客様とも何度かお邪魔しているギルグさん。いつも暖かく迎えてくださいます。今回の突撃にも笑顔で応じてくださいました。お手頃価格の美味しいワインが揃っているので、アルザスワインあまり知らないという方も気おくれすることなくアルザスワインの世界の扉をドーンと開けます。(そしてドンドンはまっていくのです~♡)
こちらは12本からストラスブールまで配送料サービスで配達してくださるとの事で、友人と合わせて12本を購入、後日ストラスブールに届けてもらいました。
と、楽しい時間はあっという間。電車の時間が迫ります。ギルグさんを嵐のように後にして、重いリュックもなんのその、ブドウ畑をずんずん歩いてバール駅へ。発車10分前には駅に到着。
こうしてハイキングから始まったアルザスの土曜日。最後はワインでしっかり〆て無事に家に帰りました。
さて、ハイキングにお城にワイン街道の村と、アルザス選りすぐりの遠足をご紹介してみましたが如何だったでしょうか。ガイドの解説というよりも、ガイドブックに無いアルザスでの過ごし方の一例として、アルザスをどうやって満喫するかをイメージしていただければと思います。
因みに同じようなコースは勿論他のお城や村でもできますヨ❤
パリにご旅行中の方がショートステイでいらっしゃるか、さまざまな地方/都市を巡る中で2日程度アルザスにいらっしゃる方が多いのですが、もっとゆっくりアルザス見ていただきたい!!!という野望のもと、遠足記事を書いてみました。
世界遺産の街ストラスブールはもちろんのこと、かわいいコルマールもブドウ畑の真珠といわれるリクヴィール村もいいけれど、2、3日ではもったいないし、それだけではない、そんな旅は如何でしょう。
そもそもお休みを取るのが大変な忙しい日本人。せっかく取れた休みなら、最大限色々まわりたいのも分かります。でも、パリ7日間があるなら、アルザス7日間があっても良いじゃないか!と、変なジェラシーに燃えている私でありました。
とは言え、かくいう私も詰め込み弾丸の旅に出て疲れて帰ってくることもあるので人のことは言えないのですけれど。
ゆっくり時間を取る事こそ、贅沢ですね。悩ましいところです。
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