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休職日記2 〜艶髪は身を助く?①

↑絶賛休職中。
つい先日、日曜の昼下がり。
私は美容室の帰りだった。
トリートメントでツヤツヤになった髪で、ひとり街をブラブラしていた。

そして、気づいたらとある酒屋の角打ちの席に収まっていた。

暇だったのだ。

暇だからといって、休職中の身。
真っ昼間から1人でお酒を飲もうとして「こいつ終わってんな感」がハンパ無いと思うのだが、言い訳させて欲しい。

いつも行っているジムとサウナが…

いや、言い訳はやめよう。
いくら言い訳したところで、どんな諸事情があろうとも仕事もせす昼間から1人でお酒なんてどう考えても…

終わってる。


友達も少ないし、暇だし、元々1人飲みが好きだし、髪はツヤツヤだし、とにかくまぁ私は「日本酒3種利き酒セット」を前にニヤニヤしていた。

ニヤニヤしながら、おでんの大根と共にゆっくり日本酒を味わって、ちょっと飲み足りない心持ち。

でも、まだ陽も高いしこの位にしておいて、夜にまたゆっくり家で飲もうかな。
確か、家にビールとワインはあるけど、日本酒が無くなったばかりだったから何か買って帰ろう。

そう思って、ショーケースを眺めていた。

すると、

「すみません」と50歳前後と思われる人の良さそうな男性が声を掛けてきた。

趣味仲間と飲んでるのだが、飲み足りなさそうなので、良かったら一緒にどうかと言う。

そんなに私は飲み足りなそうな、物欲しそうな顔をしていたのだろうか。

「いえ、結構ですー」やんわり断ったのだが、「ちょうどレアな日本酒を開けたところだから、是非味見だけでもしませんか?」と、にこやかに押してくる。

レアな日本酒か…。
「いただきます」
即答した。

そして、私は声を掛けてきた男性+他男性2名の中に入り、レアな日本酒をちゃっかりいただいていた。

50代男性の他にいたのは、30代半ばと20代後半のスポーツマンぽい男性だ。
聞くところによると、バドミントンの社会人サークルのメンバーで、朝からバドミントンの試合をしスーパー銭湯で汗を流して、ここで軽く打ち上げをしているらしい。

なんて健全なんだ…。

彼らの健全さに後ろめたくなりながらも、レアな日本酒を遠慮なくいただく。
50代男性は日本酒に詳しいらしく、マニアックな銘柄をいくつか話題に出してきたのだが、申し訳ないが私はその5倍位詳しい。
どんなに鋭く打ち込まれても、いくらでもスマッシュを返せるのだ。

ポンポン返されて嬉しかったのか「いやぁ参りました、こんなに詳しい人はなかなかいませんよ。好きな日本酒を1本ご馳走するからケースから選んできてください」と言ってくれた。

御相伴にあずかるだけでなく、更にご馳走になるなんて、ありがてぇ。

仕事もせずにお天道さまが高い内から1人で酒屋の角打ちで飲み、店に居合わせたお客さんに奢ってもらう。
まるで落語に出てくる、貧乏長屋のダメな住人のようではないか。

終わってる感が更に増すなぁ。
でもせっかくだからご馳走になろう。

ルンルンで日本酒を選び、談笑しながら杯を進める。

しばらくすると、50代男性が30代半ば男性を指差しながら私に言った。
「こいつめちゃくちゃ良い奴なんですけど、どうですか?」

ん?

・・・・どうですか?…とは?




「ほい?」
ちくわに齧り付きながら、思わず間抜けな声が出てしまった。(ほい?ってなんだよ…)

そこに50代男性は畳み掛けてくる。
「こいつ、仕事も真面目だし見ての通り爽やかだし、実家は昔から名のある大地主で金持ちなんですよ。ただ全然出会いがないみたいで」

「いや、やめてくださいよ〜」と30代半ば男性が照れている。


えーと…つまり、
「私がですか?」と聞きかえす。

「ええ、どうですか?」と笑顔の50代,。

「念のために聞きますけど、あなたでなく?こちらの彼にですよね?」
「もちろんです、私は妻と子供がいますから、ハハハ」


ほぅ、なるほど。
面白い。


どう返そうか?


お猪口をしっかり握りしめながら考える。
私は49歳の既婚女性(休職中)なのである。

続く

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