ロンドンで片腹痛い⑦
前回までのお話はこちら。→⑥
ロンドン研修中、学生から解放されてフリーの時間がちょこちょこあった。
そういう時間に1人になって街歩きをするのがとても楽しい。
前出だが、スーツの街"savirurou"に行ってショウウィンドウを眺めたり、
街角で売られているカップケーキを買って教会の入り口の階段に座って食べたり、
ナショナルギャラリーで名画を堪能したり、
流行りのオーガニックレストランに行ってみたり、
あ、もちろんビールやワインを飲んだり。
そんな中、折角ロンドンに来たのだから高級デパートのHarrods(ハロッズ)に行こうと思い立った。
地下鉄に乗り、最寄り駅へ。
ハロッズへの道のりは高級住宅が並び、みんな絵に描いたように上品でおしゃれな老若男女が歩いていて、内心ビビりながら向かった。
ハロッズは建物自体もさることながら、中身も上品で上質で素晴らしかった。
そして非常に非常に高級であった。
いやいや…庶民には手も足も出ねぇぜ。
でも、折角来たのだから何か買いたい。
思いついたのが、おもちゃ売り場と食品売り場だ。
fortnum & masonの紅茶とハロッズのテディベアを購入した。
どちらもそこそこ高いのだけど買えない値段ではないし、いかにも「イギリスに来ました!」的な商品だ。
うん、良い買い物ができたぞ。
ホクホクでハロッズの紙袋下げた私は、いかにもおのぼりさんの観光客と言った見た目だったはずだ。
カフェにでも入って一休みしようと思い、信号待ちをしていたその時。
物凄くイケてる感じのカップルに声を掛けられた。
物凄い美男美女だ。
2人ともスラリと背が高く、私は2人を見上げた。
「この近くにあるレストランを探しているけど、迷ってしまったので教えて欲しい」とのこと。
「ごめんなさい、地元の人間じゃないから分からないんです・・」と答えると、「え?そうなの??」という凄く意外な顔をされた。
え?どう見てもそうでしょう?
どう見たって、私の顔は平たい顔族でしょうよ。
ハロッズの紙袋を嬉しそうに両手に持って、いかにもアジアの観光客でしょうよ。
もっと、地元っぽい人は周りに一杯いるやないかーい。
なぜに私に声をかけたのさ?
思えば、海外にい行くたびに、この謎な現象が起こる。
バルセロナでは地元のおばあさんに地下鉄の入り口がどこにあるかを聞かれた。
おばあさんは英語が分からないため、私は覚えたてのスペイン語の単語のみで入り口の場所を教えた。
パリでは南米から来たという旅行者に公衆トイレの場所を片言の英語で聞かれて、近くの公園のそれを片言の英語で教えた。
プラハではカナダ人におすすめのレストランを聞かれ、前の晩に行ったレストランが美味しかったのでスマホを見せて紹介した。
ミラノではどこの出身か分からない(たぶん欧米)男性に超片言のイタリア語でトラム乗り場を聞かれて、超片言のイタリア語で教えた(イタリア人じゃないなら、せめて英語で聞いてくれ)
なんで私が?と思いつつ、出来る限り調べたりして分かる範囲で応えるようにはしているが・・
正直言って、全部「知らんがな!」である。
どいつもこいつも(失礼!)自分で調べれば済むはずだし、もっと詳しそうな地元民はそこら辺にいくらでも転がってるのだ。
なぜに私に聞く?
知ってそうな顔なのか?
そういえば、日頃からそういうことが多い。
私は決して人が近寄りやすいタイプではないと自覚しているが、何かを聞かれる頻度はずば抜けて高いと思う。
でもね、私が何でも知ってると思うなよ。
粗忽者なので、間違ったことを教えてしまうかもしらんからな。
責任は取らねーぞ。
でも、聞かれたのに答えられないと、そんな自分にがっかりしてしまうのは何の習性だろう(笑)
役に立ちたい欲がすごいのかもしれない。
先ほどハロッズの前でレストランの場所を聞いてきたイケてるカップルの後ろ姿を眺めながら、自分の不甲斐なさを少なからず感じる。
そしてそのカップルのキュッと上がったお尻と長い股下を自分のそれと比べて、一段と不甲斐なさを募らせるのだった。
尻の高さではどうやっても負ける。
せめて背筋を伸ばして、気分だけでもアゲて歩こうか。
ショウウインドウ映る自分がモデルに見える……かもしれない。(やっぱり見えない…)
【続く】
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