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日々是妄想: 全ては自分の内に
内なる宇宙に果たして答えはあるのだろうか?
蔡國強 宇宙遊〈原初火球〉から始まる
@国立新美術館 8月21日まで
世界の根源を探る行為はどう生きるかを模索することに繋がるように思う。同時に死を想う、メメントモリでもある。爆発によって出来た軌跡を観ながら、確かにこれはビックバンで宇宙だなと思った。
以下、蔡國強によるステートメント引用。長いけど良い文章なので。
『原初火球』時代の私は、心を熱くして、物質主義、人心の劣化、生態環境の破壊、宇宙の未来など、20世紀の人類と地球の諸問題について考えていた──自分が外星人になったかのようなスタンスで。現実は窮屈だったが、空には星が輝いて、私の「宇宙遊」を照らしてくれた。人類は疫病との共存を強いられ、経済の衰退、グローバル化の後退、異文化対立などの地球社会のジレンマに直面している。かつて人類の創造力の前衛的な精神を率いた現代美術もまた、衰退の一途を辿っている。いま30年前の『原初火球』の精神を振り返ることは、かつての私自身と再会することであり、若き芸術家にとって永遠の故郷である宇宙へと戻ることである。宇宙的ビジョンの追求と実践について議論することは、文化と芸術が衰退してる『今』に特別な意味を与えられるはずだ。
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自分自身を外星人と表現したアーティストは地球を俯瞰する様に内省していたのではないだろうか。
永遠の広がりを見せる宇宙は実は自分の内にあって発見され考察されることを待っているとしたら?
展示を観ながら、杉本博司のLightning の作品群を思い出していた。アプローチは違うけどどちらも人類の起源まで遡り、何が起きたか探ろうとしている。電極のスパークと爆発によって起こる火花の違いはあっても、そこには確かに光が発生している。
命の誕生以前に地球に起こっていた現象の再現。
そして火によって人類は文明を手に入れた…。
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火薬を扱い火をコントロールすること。
焼けた痕跡のドローイングの水墨画にも似た風情。
これは祈りでもあるかもしれない。
神は自然。太古から変わっていないけれど、受け入れ方が西洋とは明らかに違う。その違いは今も無くならず、時として大きな悲劇を生み出すこともある。
蔡國強といわきの展示がとても良い。アーティストの素顔が垣間見え、芸術は確かに人と人を繋げる役割があることがよくわかる。何故、あの「白天花火」がいわきの海岸だったのかが理解出来た。
それにしても白天花火の美しいこと🤩
いわきの海岸に音と光がスパークし、美しい色が晴天にたなびき、白日夢の様に幻想的な世界がそこに出現した。実は何度も映像を見てしまった。
そこには小さな子供たちが大勢集まって見学している様子も映し出されていた。
映像から子供達の歓声が聞こえた。現地で見ていた子供たちは、この花火を一生忘れない気がした。それがとても大切なことで、意味があることじゃないかと思う。
でかいホワイトキューブにLEDによる幾つものキャラクターの擬似花火が点灯し、火薬によるドローイングの屏風!が立ち並ぶ。壁面いっぱいに描かれたドローイング。そもそも、花火とか火薬使った作品をどうやって見せるのか?と思ったらこういうことか…これはこれで、ありだと思う。
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ところどころに建物や風景も描かれていた。
とても不思議な表現だが、見入ってしまう力があった。
こういうスペクタクルな展示が出来るのはこの美術館しかないし、企画した逢坂館長の胆力はさすがという気もした。
既にインバウンドも増えて、中国語もチラホラ聞こえていた。乃木坂駅からであれば35℃超えていてもそう歩かずに済むのでまあ良いと思う。
本音は当分、駅から外を歩く美術館には行きたくない…。無理…。
次はステーションギャラリーくらいしか思いつかない😆
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