夫は本気で「ゲームで世界平和」と言っている。
私の夫はゲーム(eスポーツ)が大好きだ。
口を開けばゲームの話。彼は賢くできており、知らないことなどないのかもしれないと思うくらいの知識量である。
「じゅんこ3は、自分を解放してあげなよ……」
夫はいつものように私を少し刺激するようなことを言うので「は? なんのこと?」と質問ばかりしてしまう。
「幸せになっていいんだよ……。自分を許してあげなよ」こんな感じでいつも彼は抽象的である。
「? だからなんのこと?」
その日は仙台から、地元の気仙沼に帰っている車内であった。
彼は仕事の帰りで、私もカフェで作業をした後、二人とも少し疲れていた。
夫の目線で言ったら、きっと私は何か我慢しているように見える?
自分自身を大切にしてないように感じるのか?
私だって、以前より「自分」というものを大切にできていると感じているのに……。
彼の口がまた開いた。
「実はね、平和って困るんだよ……」今回はいつもより増して抽象的である。
「?? 平和っていいものじゃないの?」彼の言葉は私の疲労感を二倍にさせた。
「平和になっては困るの。それって暇だから。暇は飽きるでしょ? 暇は退屈なの。だからみんなネガティブになろうとするの。その方がエキサイティングだから、生きている感じがするから。でも平和にならないといけない、幸せってやっぱりいいねって。戦争はダメなの。戦争の代わりにゲームしたらいいじゃん。誰も傷つかないよ? だから僕はゲームで世界平和を言ってるの! 国の大統領もゲームで戦えばいいじゃん」
こんな感じのことを彼は言っていて、私は気がつくと必死にこの言葉たちをメモしていた。
人間が何故ネガティブになるのかを彼は良く知っていて、どうしたらこの世が幸せになるのかも知っていた。
「だから、幸せになっていいんだよ。もう、自分を傷つけるのは辞めようよ」
夫は、何でも知っている。
私は今この言葉を受け取って泣いている。