WhyとWhoから始まる昭和スターは海を越えて|プロマイド店は毎日が恋する季節#02
日本で唯一の昭和スターのプロマイド店店員のおぼえがき。プロマイドを通してスターに思ったこと、お客さんとの思い出など、したためていきます。
プロマイド店のお客様には外国人も多い。かさばらなくて日本のカルチャーを伝えられるいいお土産、プロマイド。買っていってくれるのは、
1 浅草観光中にたまたま「超ウケる」「日本ヤバい」プロマイドと出会ってしまった外国人
2 ここを目指して訪れた、スターのファンや映画オタク外国人
外国人に限ったことではないけれど、大体がこの2パターン。どちらにしろ、Youのセンス最高だよ!と心からいいねしまくりで接客いたします。
日本らしさとWhyなプロマイド
外国人観光客に喜んでいただけるといえば「ゲイシャ」。あるんです。市丸さん、豆千代さん、小唄勝太郎さん、神楽坂はん子さん、神楽坂浮子さんなど昭和初期~戦後に活躍した芸者歌手さんのモノクロプロマイドはどれも美しく、これぞジャポニズム。全観光客のパスポートに1枚ずつ挟んでおきたいぐらい。
ゲイシャときたらニンジャですが、残念ながら「ニンジャ」プロマイドは1964年のドラマ「忍者部隊月光」の面々のしかなく。しかも舞台設定は60年代当時の現代で、ヘルメットに皮ジャンで背中に日本刀を背負うというスタイル。買っていくのは日本人のドラマファンに限定されるわけです。
外国人ウケの点ではプロレスラーも。肉体は雄弁ですので。女子プロの悪役レスラーもカブキメイクに見えるのか人気。あとは70~80年代の男性アイドル。ヘアスタイルと衣装、プロマイド特有の決めポーズは「…Why?」に尽きる様子。
Who!? ジャケ買いの神々
そして何と言ってもビジュアルのインパクトが「なんか違う」オーラの“ジュリー”沢田研二さん。とくに昭和好きでもない日本の若者、それも男子に「かっけ~!」と言わせるほどの神がかり度であります。あのメイク、スタイリング、表情とポーズで作りあげる完璧な世界観。ゲイシャ、プロレスラー、アイドルと違うのは、ジュリーを買う外国人はレジで説明を求めること。彼は何者なのだと。彼はジュリー(フランス語圏では女性名)…そう伝えるとそこで「Why!?」を頂戴します。ミステリアス倍増。
こうしたジャケ買い的な外国人客のニーズに新しい波が起きたのは2018年。西城秀樹さんが亡くなり、店頭にディスプレイを常設。そこにヒデキファンだけでなく外国人も足を止めるようになりました。ジュリーと同様、買う人はみんな彼の名前を聞きます。彼はヒデキサイジョー、彼は死んだ…何回答えたでしょう。フェイスもスタイルも最高!と世界の女子を熱くさせるヒデキの魅力は国境も時間も超えるのです。
ある日、赤木圭一郎さんを「ジャパニーズジェームスディーン?」、聖子ちゃんや明菜ちゃんを「ファラフォーセット?」とナイスな指摘が止まらないスパニッシュ系美女二人組も初見のヒデキを購入。名前を教えたらヒデキサイジョー、ヒデキサイジョーと唱えながら出ていった彼女たちを胸アツで見送りました。ほんとにYouたちセンス最高だよ!
シネフィル(映画オタク)たちの小さな聖地
さて「2」の映画オタク外国人。その筋の人々に世界のミフネ、高倉の健さんはやはり人気が高いです。あるとき健さんのプロマイドを手に取ったドイツ人男性に、これは何かと質問されました。着流しの健さんと写っている「関東神津組」の看板のこと。拙い英語で『昭和残侠伝』の説明を試み、伝わったかどうかは疑問ですが彼は「組」を理解し、健さんをケルンへ連れ帰っていきました。
志穂美悦子さんを探しにきた人にはもれなく「ドゥユノウ“サニチバ”?」と千葉真一さんをすすめることも忘れません。すかさず千葉治郎さんや佐藤允さんもスタンバイ。いつだったか、ベストルッキンな“シオミ”のプロマイドを一緒に選んでくれと言われ、最後の2択をイニミニマミモで決定し、「アイライクシオミ!」「いーや、アイライクシオミ!」と主張しあい、小さな店の地下でオタクは国境を超え共鳴。フランス人男性の「シュゥゥラ~ユ~~キ~?」でお目当てが梶芽衣子さんだとわかったときは自分で自分を抱きしめました。
早く以前のように海外渡航ができるようになり、また外国のお客さんが訪れますように。早く来て!タランティーノ!!