諏訪大社と犬神家と喫茶店、ざわわな旅
「旅の日」生まれのじゅんぷうです、こんにちは。
一泊して早々に松本を発ったそのつづきです。
松本の行きか帰りにいつか寄ろうと思いながら早10年。ようやくそのときが来ました。諏訪大社参拝のときが!
巨木が山の斜面を滑り降りる御柱(おんばしら)祭で有名な長野県の諏訪大社。上社と下社の2社4宮からなる神社で、諏訪湖の北側に下社、南側に上社が位置しています。中央道とJRが湖の両岸を通っていて、いつか途中下車しようと温めつつ通過していたのです。
今回は下諏訪駅から徒歩で行ける範疇の下社春宮と下社秋宮だけ。上社は最寄りの茅野駅からのアプローチも少々かかり、4宮すべてをめぐるとなるともう一日必要なので断念、それでも松本を朝8時に出るという詰め込み具合。
初めての下諏訪。購入済みだった松本から東京都区内の乗車券では途中下車できず松本➨下諏訪の運賃を余分に精算するというハプニングもありつつ、とにかく降り立ちました! 下社春宮を目指して歩き始めて15分もかからず到着。
今は御霊代が秋宮に遷られている時期だからなのか、お参りしている人はいるもののとても静かで落ち着いた雰囲気です。1年前に善光寺と戸隠を訪れたとき、出発前に予習として高田崇史『カンナ 戸隠の殺皆』を再読したので今回もあわてて高田崇史『QED 諏訪の神霊』リピートしました。読めば読むほど、上社も先住のミシャグチ神関連も訪れねばという気持ち。御柱について思うことはいろいろありますが、まずは旅のつづき。
前日に松本の美容院で諏訪の話をしたら、ぜひにとおすすめされた万治の石仏も寄ってみることに。あまりの暑さに、うっかり忘れるところでした。春宮のすぐ脇だと聞いたので、案内に沿って進んでみます。
諏訪大社下社の七不思議のひとつ、どんなに川が氾濫しても流されないという浮島。いや逆になんでそんな氾濫警戒ポイントにお宮があるんですか。それが諏訪の意味するところなのだと歴史考察中。
そして、
ジャジャーン!←韓国人YouTuberさんたちの言い方
これが岡本太郎が愛した万治の石仏です!
万治(江戸時代前期)に彫られたという石仏、そのお顔もバランスも何とも言えない。太郎が入れ込むのもわかる。ユーモラスなんだけどミステリアスな力を感じて、目に入った瞬間、頭に鳥肌立ちました。お参りにはお作法があって、わたしも石仏の周りをぐるぐる回ってお参りしました。
春宮から秋宮へは中山道を歩くつもりだったんだけど、どうやらわたし曲がるべき道を見逃して進んじゃってる。このままだと下諏訪駅にもどっちゃうから、どこかで曲がろう!きっとこれで駅前を経由するよりはショートカットできるはず。そう思って入った道沿いに、ずいぶんクラシックな趣きの洋菓子店がありました。ウィンドーに「万治の石仏クッキー」のディスプレイ。これから開店みたいで、ご主人が外に出てきたところ。
素通りできず、ご主人に「クッキー買えますか?」と声をかけると「いっぱいあるよー!」ということで入店。
ばら売りもしてたけど、箱売りの10枚入りにしました。諏訪のお話をして、クッキーを手に出ようとしたとき。ケーキのショーケースの前にテーブルセットあるじゃないですか。
「喫茶もできるんですか?」
岡本太郎、永六輔、田辺聖子など錚々たるご来店歴を眺めながらアイスコーヒーで休憩。何組か地元の人たちがケーキやシュークリームを買いに訪れていました。昭和49年創業だそうで、ほぼわたしと同じミドルエイジのお店だったのですね。どうりで外観もグッとくるはず。また来たいお店ができてしまった。
さて、また日傘を差して歩き出します。秋宮周辺は温泉街でもあり、春宮とずいぶん雰囲気が違います。
秋宮の鳥居をくぐったとき、またも頭に鳥肌が立ちました。
鳥肌の正体は御霊代がこちらにいるからでしょうか。ほかの季節に上社も下社もじっくり訪れたい。
立ち寄り湯にも立ち寄りたいけど、暑すぎるので下諏訪駅に向かいます。境内の涼しさが嘘みたいに、あっという間に汗だくになってしまいました。わたしは今日、なんでグレーのTシャツにしてしまったのだろう。どこかで「おんばしらTシャツ」とか売ってたら買って着替えたいと切実に思いながら、駅まで来てしまって避難するように観光案内所へ。お土産コーナーにしもすわ開運手ぬぐいがあったので買うやいなやTシャツの首元につっこみます。
さあお昼どきですが。お隣の上諏訪駅周辺も観光して、帰りは上諏訪から特急「あずさ」に乗る予定。ここ下諏訪からは1駅の区間なので電車で移動してもよいけど、諏訪湖畔も少し楽しみたい。上諏訪方面に向かって湖畔を走るタウンバスを利用することにしました。
北澤美術館の前でスワンバスを降ります。ガレの作品など見ながら涼むのもいいね、でもそのお隣りも美術館なのねとさらに通りを進むと、その先にタケヤ味噌の本社工場がありました!
みそ好きじゅんぷう、敷地内のタケヤ味噌会館に入ってみます。タケヤTシャツとかあったら買って着替えたいけど売店の横に飲食コーナーがあったので、迷わず豚汁セットをオーダー。
お腹も満たされ、光子に見送られてふたたび外に。諏訪湖の水辺も行きたいけどいったん駅方面に移動します。
国の重要文化財に指定されている日帰り温泉施設、片倉館。昭和初期の建築で、ここはぜひ立ち寄りたかったポイント。というのも、製糸業で財を成したシルクエンペラー、片倉財閥の二代目が女工たちのために建てた温浴施設で、この片倉家こそが、二度目のジャジャーン!犬神家のモデルなのです!
じつはここ上諏訪は、横溝正史が肺結核の療養をした地。昭和9年から14年までですから、片倉家の栄華を目の当たりにしていたことでしょう。そんな信州財界の大物一族がいて、目の前には湖。これはもう『犬神家の一族』が始まってます。横溝聖地巡礼はわたしの旅の一大テーマ。岡山ばかりじゃないんです。療養のときに途中下車した山梨市に移築された書斎も、スケキヨの足ニョキニョキのロケ地、青木湖も数年前に訪れました。
片倉館を後にして上諏訪駅へ。下諏訪よりリゾート感があり駅前もにぎわっています。駅前のその名も「すわっチャオ」という施設でトイレに入ったり少し涼んで落ち着きます。暑いので少しでも身軽になりたくて、ショルダーバッグを駅のコインロッカーに入れ、また歩き出します。
また横溝ゆかりの地に立ち寄りつつ、10分ほどで着いたのは諏訪高島城。
諏訪湖が干拓されるまでは湖に突き出した水城だったので別名「浮城」。周辺は高島公園として整備されています。そういえば数時間前は「浮島」にいたんだった。
浮城Tシャツとかあったら速攻で買って着替えたいほどの危険な暑さの中、やっぱり水辺に行こう!などと思ってしまい諏訪湖に向かいます。湖周辺、とにかく風が強くて日傘が逆さまになること10回ほど。
はあ、もうこの日差し限界。Googleマップを頼りに駅方面にもどる途中で見つけた喫茶店「トミー」。
初めての場所なのに「わたし高校生のころよくこの店で学校サボってたんだよね」という感覚に。いちにちで3軒目の喫茶ですがどこも素敵。どこもえもい。
ここでこの旅を終わりにしよう。わたしは満たされた。本当は上諏訪もまだ行きたい候補はあるんです。日本酒の蔵元が何軒も集中しているゾーンもあって。いまのわたし、真澄Tシャツとかあったらすかさず買って着替えたい。
トミーで満たされた時を過ごし、駅へと向かいます。
17:46上諏訪発「あずさ」満席。同じ線路の上を横溝正史も揺られたのですね。
「万治の石仏」クッキーは職場に持っていきました。
ああ石仏Tシャツとかあったら…!
ちょっとおかしなボリュームのひとり旅日記後半、お読みいただきありがとうございました。
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