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私を選んでくれてありがとう…
10年前のあの日、私は母になった。
いや、母になれた、と言った方が正確かもしれない。
出産は帝王切開で、本当の予定日は翌日。
お昼寝してたら、
ドン!とお腹を蹴って私に合図をした。
自分で産まれる日を決めたのだ、
と瞬間的に察知した。すぐに緊急手術。
体重は2000g少々、
肋骨が浮き出て見えるほっそりとした身体。NICUに2泊。でも、足の動きが激しくてとっても元気そうだから!と母子同室に、一緒に退院できた。
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あの頃の私はとても欲張りで、、、
「前置胎盤」というリスクを抱えながらも、
出産までにやりたいことは全部やり切るつもりでいた。転勤で念願の職務についていたし、プライベートも心が通う濃密なあたたかい時を過ごしていた。とにかく人間関係に恵まれたとても充実の日々で、ペースダウンできないぐらい…
だけど限界を感じて、妊娠30週で産休入り。
出産まで少しのんびりしようと実家に帰省。
母と一緒に、産着や寝具を揃えてウキウキ気分。
ある日突然の大量出血。
近隣では前置胎盤の妊婦受け入れは難しく、
通っていた病院まで救急車を走らせてもらう…高速道路をサイレン鳴らして1時間、、、
同乗の実父は顔面蒼白。。。
私はお腹に心音を感じていた、祈るのみ。それから6週間のベッドで点滴生活。夏から秋へ変わりゆく窓の景色を眺めること、お気に入りのブックカバーを纏った文庫本が少しずつ増えていく、それらが支えだった。
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生命力と意思の強さを兼ね備えた子。4歳で突然語った胎内記憶。
「お空の上で順番を待っていた。
優しそうで、でも寂しそうな女の人が見えた。『ボク先に行くね。あとでね。』って、〇〇(弟)に手を振って、滑り台をダーッと降りたんだ。そしたら、お母さんのお腹に入れた。」
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「10歳はもう1桁じゃないからね。
毎日が何かプラスになって積み重なるように過ごしていくよ。」
ハグ&ぎゅーして、
「私のところに産まれてきてくれてありがとう!」と伝えた。
彼は照れながら、
「だって、お母さんを選んできたからね」と。