【42.水曜映画れびゅ~】"MINAMATA"~ジョニー・デップが、水俣病を描く~
"MINAMATA"は、先週木曜日から全国で劇場公開が始まった映画です。
主演・製作のジョニー・デップに加え多数の日本人俳優も出演、さらに映画音楽は坂本龍一が担当しています。
あらすじ
ユージン・スミス
本作でジョニー・デップが演じ、主人公として描かれるユージン・スミス。
実在した写真家で、第二次世界大戦時に戦争写真家として派遣され、戦後にはLIFE誌に所属していました。
後年は水俣病の取材に生涯を捧げ、1975年に発表した写真集『MINAMATA』は世界中で大きな反響を呼んだといわれています。
ジョニー・デップはユージン・スミスについて調べていたなかで水俣病について知り、「この悲劇を多くの人に伝えなければ」という使命感でこの映画の製作に至ったと語っています。
ジョニー・デップ史上最高峰の演技
そのような経緯で本作の製作を進め、主演を務めたジョニー・デップ。
説明不要のハリウッドの大スターです。
代表作である『パイレーツ・カリビアン』シリーズのジャック・スパロウを始めとし、『シザーハンズ』(1990)などティム・バートン監督作品にも多く出演するなどファンタジー作品に多く出演する人気俳優です。
その演技力への評価も高く、これまでに3度アカデミー主演男優賞にノミネート、ゴールデングローブ賞には10度ノミネートされた経歴を持ちます。
本作ではそんなジョニー・デップが完全にユージン・スミスに憑依して、素晴らしい演技を魅せています。
顔と声は完全にジョニー・デップなのですが、ジョニー・デップが演じているとは全く感じさせず、写真家ユージン・スミスそのものをスクリーン上で生き返らせたといっても過言ではないのでしょうか。
そういった演技は批評的にも大絶賛されており、「ジョニー・デップ史上最高の演技」「オスカーに値する」といった評価が広がっています。
ちなみに役作りには、映画にも登場するユージン・スミスの妻アイリーン・美緒子・スミスが手伝ってくれたとデップは語っています。
水俣病は終わっていない…
ー水俣市後援拒否問題
そんなジョニー・デップの演技に加え、美波や真田広之をはじめとする日本人俳優陣の活躍や作曲を担当した坂本龍一の音楽などもあり、素晴らしい感動作となっている本作。
しかし、公開前には残念な報道も…
舞台となった熊本県水俣市の映画への後援拒否問題です。
水俣市は後援拒否の理由について「映画が史実に即しているかや制作者の意図が不明で、被害者への差別・偏見の解消に資するか判断できない」と説明しています。
これに対し本作の監督を務めたアンドリュー・レヴィタスは、以下のように答えています。
水俣市ではチッソの子会社である「JNC」が現在も水俣市で工場の操業を続けており、その関係により圧力が存在していることを監督は指摘しています。
また水俣裁判のなかには現在も続いているものもあります。
そういったことを踏まえると、過去の出来事としてではなく、今なお続く問題としてしっかり向き合うためにも、この映画は多くの人に観てもらう必要があると思います。
前回記事と、次回予告
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来週は、2015年アカデミー作品賞受賞作"Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)"のレビューをしてみようと思っております。お楽しみに!