【97.水曜映画れびゅ~】"Im Westen nichts Neues"~戦場こそ、最上のホラー~
"Im Westen nichts Neues"は、昨年からNetflixにて配信されているドイツ映画。
今年のアカデミー賞にて、4冠を達成した作品です。
簡単なあらすじ
死と隣り合わせの戦場へ
第一次世界大戦中のドイツ。
若者たちは、愛国心を持って戦地へと出兵していた。
17歳のパウルも、その一人であった。
両親には反対されていたが、祖国のために命を捧げることを誇りに思い、仲間とともに胸を張って、戦地に赴くことを志願した。
しかし…
フランスと一進一退の戦況を繰り広げる西部戦線でパウロが体験したのは、常に死と隣り合わせの凄惨な戦場であった。
90年の時を超えた再映画化
この作品の原作は、ドイツ作家エリッヒ・マリア・レマルクの同名小説。
1930年にはハリウッドで"All Quiet on the Western Front"として映画化され、第3回アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞したことでも知られる作品です。
それを本国ドイツ製作で、約90年振りに再映画した本作。
Netflixオリジナル映画として莫大なスケールで描かれるのは、壮絶な戦場。
当時の塹壕戦の景色を完璧に再現し、四方から聞こえてくる爆発音と手持ちカメラで映し出すシーンの臨場感が相まって、まるで戦場を目の前で体感しているかのようです。
また、連続して映し出される無残なシーンの一方で、どこか美しい映像に息を呑みます。
米アカデミー賞4冠に加え、英国アカデミー賞作品賞・監督賞と賞レースを席巻した評価にも納得の作品。むしろ、米アカデミー賞で監督のエドワード・ベルガーが、受賞はおろかノミネートさえされなかったことに首を傾げたくなるほどに、リアリスティックで芸術的な作品でした。
戦場は、最上のホラーである。
この作品は、もともと反戦小説。
そんな本作で一貫して描かれるのは、戦争の非業さ。
同じ人間なのに、当人たちは憎み合っていないのに、銃で胸を撃ち抜かなければならない、戦車で押しつぶさなければならない場に身を置く恐ろしさが犇々と伝わっていきます。
そして人を殺め、仲間を失っていくことで、人間の尊厳がバグっていく主人公。次第に目の奥の光が失われていく描写にゾッと背筋が凍りました。
にもかかわらず、国の上層部はただのエゴのために若者の命をいとも簡単に見捨てていく。そんな戦争の不条理さ、そしてそんな反省も空しく今も続く戦争に腹が立ちました。
人間をおかしくする戦場こそ最も恐ろしいものではないかと、この映画を通じて考えさせられました…
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次回の更新では、爽やかな青春の瞬間を描く映画『リンダ リンダ リンダ』(2005)を紹介させていただきます。
お楽しみに!