【78.水曜映画れびゅ~】『PLAN 75』~人は何かのために生きるべきなのか?~
『PLAN 75』は、今年6月に公開された映画。
本年度のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、本作で初の長編映画作品の監督を務めた早川千絵氏にカメラ・ドール(新人監督賞)特別賞が贈られました。
あらすじ
75歳以上が自らの生死を選択できる
SFチックではありながら、センセーショナルな内容。
早川監督は「自己責任」という言葉が蔓延し、社会的弱者に対して不寛容になっていく日本社会に危機感を覚えたことが、この作品の制作につながったと語っています。
特に2016年に起きたのが相模原市の障害者施設での殺傷事件は、大きなきっかけとなったようです。
それゆえに本作のオープニングも同事件を彷彿とさせるシーンから始まり、そこから自然とこの<プラン75>という極端な世界観へと引き込まれてしまいます。
その一方で早川監督は、本作でそういった社会的背景を真っ向から批判するというより、あえて物語に空白を残し、この作品をきっかけに多くの人に現代社会のあり方を考えてもらおうという想いを込めています。
人は何かのために生きなければならないのか?
そんな本作を観終わって私は「人は何のために生きるのか?」という問いかけとともに、「人は何かのために生きなければならないのか?」という疑問を頭の中で巡らせました。
高齢者に限らず、人は様々なことをきっかけに社会的弱者になり得ます。
年齢、障害、人種や性差などによって生きづらさを感じる人は少なくないと思います。
それでも…
「生きる」ことを拒絶されるべきではありません。
そして…
「生きる」こと自体に疑問を持つべきではないです。
”何かのために生きる”のではなく、”生きていること自体”が尊ばれることではないでしょうか?
それなのに「社会の役に立っていない」や「生産性がない」などと後ろ指を指す人々が大勢いるならば、それは社会としてなんとも貧しいことでしょうか…
そんな貧しい社会の成れの果てを予見している『PLAN 75』の世界が、今一度私に、社会について、「生きる」ことについて、向き合うきっかけを与えてくれました。
本年度のアカデミー賞にも…?
本年度のカンヌ国際映画祭にて、カメラドール特別賞を受賞した本作。
その効果もあって日本公開した際も注目度は高く、全国90館で封切られ各地で満席をが続出したとのことでした。
ただ個人的に思うことですが、世界的に評価された作品ですし、口コミも良かっただけに、もっと公開範囲が広がってのいいような気がしました。
確かにカンヌを獲ったことでメディアにも取り上げられていましたが、それでも全国90館で、しかもミニシアター中心だと、やはり一定の人にしか作品が届けられていないようで残念に思えました…
ただ、今後再び注目を浴びる可能性もあります!
先日、日本映画製作者連盟が「『PLAN 75』を本年度の米アカデミー賞の国際長編映画賞部門の日本代表に決定した」と発表しました。
今年のアカデミー賞にて『ドライブ・マイ・カー』がアカデミー賞を同賞を受賞し、また作品賞・監督賞・脚色賞にもノミネートされたことが記憶に新しいですが、この『PLAN 75』もノミネートの可能性は十二分にあると思います!
さらなる今後の評価にも、期待したいです。
前回記事と、次回記事
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来週は、めちゃくちゃ今更になってはしまいますが"Top Gun: Maverick"について語りたいと思います。
お楽しみに!