【137.水曜映画れびゅ~】"Maestro”~紡ぎ合った愛の物語~
Maestroは、12月からNetflixで配信され、一部劇場でも公開されている作品。
来月に行われている米アカデミー賞で、作品賞を含む7部門にノミネートされています。
㊗ アカデミー賞 ノミネート!!
作品情報
レナード・バーンスタイン
20世紀を代表する音楽家レナード・バーンスタイン。音楽界でその名を知らない者はいない、といっても過言ではありません。
25歳で無名だったバーンスタインはニューヨーク・フィルの代役に抜擢されて以降、指揮者として数々の功績を残していきました。そして後に、ニューヨーク・フィル史上米国人初の音楽監督に就きました。
また作曲家としても著名であり、グラミー賞を16度受賞。代表作は、ミュージカル「ウェスト・サイド・ストーリー」の作曲です。また映画界への貢献として、1954年公開の名作『波止場』の映画音楽を手掛け、アカデミードラマ・コメディ音楽賞(現在のアカデミー作曲賞)にノミネートされた経歴もあります。
そんなバーンスタインの伝記映画のプロデューサーとして、2021年に『ウエスト・サイド・ストーリー』の監督を務めたスティーブン・スピルバーグや、マーティン・スコセッシが名を連ねています。そして同じくプロデューサーとして名を連ねるとともに、監督・主演、さらに脚本まで手掛けたのがブラッドリー・クーパーです。
愛の物語
そんなブラッドリー・クーパーが手がけた本作。その物語は、バーンスタインの功績を全体像として捉えるというよりは、バーンスタインのもっと個人的な人生を映しているように思えます。
描かれるのは、バーンスタインと、その妻であり女優でもあったフェリシア・モンテアレグレとの愛の物語。出会いからバーンスタインの成功まで、2人の青春の一瞬は白黒で描かれます。そして後年の、フェリシアの闘病、そしてバーンスタインの性的志向による衝突など、暗い影を落とす物語はカラー映像で映し出されます。
そのなかで一貫して描かれるのは「バーンスタインが、どれだけフェリシアを愛していたか?」ということです。様々な葛藤、衝突、そして喪失…それでも、その最中にあろうとも、バーンスタインはフェリシアに笑顔を向けようとするのです。偉大な音楽家の人生を辿るのではなく、ある男女2人が複雑でありながらも紡ぎ合った物語が描かれています。
昔ながらのキャリー・マリガン、
圧巻のブラッドリー・クーパー
冒頭でも触れましたが、本作は今年の米アカデミー賞で7部門にノミネートされています。そのなかでも注目なのが、演技部門である主演女優賞と主演男優賞。
主演女優賞にノミネートされたのは、フェリシア・モンテアレグレを演じたキャリー・マリガン。近年は、すっかり賞レースの常連になっていますね。
本作での印象は、「昔ながら」のキャリー・マリガン。最近のマリガンは『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)や『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』(2022)などで、ジョディ・フォスター顔負けの無骨な演技を魅せつけていました。しかし元々は『17歳の肖像』(2009)『わたしを離さないで』(2010)などで清楚な役をしていました。そして本作は、そんな「昔ながら」の清楚系マリガンが帰ってきた感じがしました。
バーンスタインの人柄と才能に惚れて夫を支えていく姿、特にバーンスタインと初対面の時に目を輝かせている表情は印象的でした。その一方で、映画後半では1人の女性としての気高い信念も垣間見え、そのバランスは「さすが!」としか言いようがありません。
そして、もう1人。バーンスタインを演じきったブラッドリー・クーパーは圧巻でした。私は生前のバーンスタインを知りませんが、指揮者として腕を振るシーンの迫力は凄かった…。また、後年のシーンで性的志向に悩む苦悶の姿も印象的でした。
これまで『世界にひとつのプレイブック』(2012)や『アメリカン・スナイパー』(2014)、『アリー/ スター誕生』(2018)で主演男優賞にノミネートされてきたクーパー。その毎回で受賞級の演技なのですが、まだオスカー像を手にしていないです。「今回こそは!」と期待しています。
ちなみに、メイクアップ&ヘアスタイリング部門に本作でノミネートされているのは、日本出身のカズ・ヒロ。これまで『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2016)と『スキャンダル』(2019)で、2度同部門を受賞しています。そちらも、期待です。
前回記事と、次回記事
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次回の更新では、今年の米アカデミー賞で2部門にノミネート"Nyad"を紹介させていただきます。
お楽しみに!