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マリッジブルーで結婚相手を嫌いになった話(2)

妻の声が大きい。
いわゆる腹から出す声が、頭に響く。
話の内容がどんなものであっても、その頭に響く声が気になって仕方がない。

最初はやんわりと、僕が不快感を得ていることは伝えずに、もう少し小さい声で話せないか頼んでみた。

だが、仕事柄声が大きいとか学生時代の部活動で肺活量がとかそんな関係ない話が返って来るばかりで、改善はなかった。

僕だって普段の声は小さいが仕事のときなどは切り替えて大きめの声を出しているのだ。
普段がどうであれ、声量を調節してくれと言っているだけなのだ。

僕は幼少期から20代前半くらいまでは声が小さいと言われまくっていたので、素の声が小さい人が大きい声を出すことの大変さはわかる。
だが声の大きい人が小さい声で話すのはそんなに難しいことなのだろうか。

これについて、調べた。
腹から声を出す方法だとか、声が大きいのは良いことだという記事ばかり出てくる。
声が大きい人との特徴や関わり方といった記事もあったが、役に立つものはなかった。
自分の声が大きいことに気付いていないから教えてあげようとか、耳が悪いから補聴器を検討しようとか、そういうのじゃないんだよなあ感が強い。

妻はテレビの音量も僕にとってのちょうどいい音量を超える音で流すが、決して耳が悪いわけではない。
心地良い音量の幅が違うだけで、妻は普段小さい音も聞き取っている。

色々調べていく中で、妻の声が実際どのくらい大きいのかが気になり、スマホに騒音計アプリを入れた。

静かな部屋で40デシベル。
部屋の中での僕の普段の声が50デシベル。
口笛を吹いて60、サビの盛り上がる部分で70デシベル。

ネットで調べた記事の記述とほぼ一致するので、騒音計アプリが正常に動いていると判断した。

妻が帰ってきて早速測ってみると、60〜70デシベルだった。
ネットの記事によると一般的に騒音と言われるレベルである。

明確な数値データ。
この方向でアプローチしてみることにした。

ちょうど都合の良いことに、このアプリは60デシベルを超えると画面全体が緑色に、70デシベルを超えると赤色に変わる。
表示させながら声量をコントロールできるようになってもらおう。

普段家にいるときの声を制限してくれというのは相当なストレスになるだろうが、僕もずっと耐えてきている。
どちらかが我慢しなければならないのだ。

それに四六時中我慢しろと言うわけではない。
夜だけ落ち着いた声で話してほしいという、それだけなのだ。

だがこれも駄目だった。
無理してますと伝えたいのか、あからさまに喉を絞って苦しそうな声を出して、けほけほむせたりというパフォーマンスを披露してくる。

いやいや、落ち着いて喋るときもあるじゃないか。
小学生かよ、と。

暗中模索。
ネットにもろくな情報はないし、友人たちに相談しても妻がおかしいという反応が返ってくる。

相手を変えるより、自分や環境を変える、という基本に立ち返って、僕が耳栓をつけていたこともある。
夜に妻の声を聞くとき、耳栓はちょうどよかった。

だが耳栓をしていることがバレて気を遣わせてしまったりと、なかなか平和な解決策は見つからなかった。

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