臨床知見の偏りを解消する医師の「研鑽」を取り巻く業界課題を考える
こんにちは。株式会社クオトミー代表の大谷隼一です。
今回は医師免許も持つ私が、病院の勤務医として働いた経験などで感じていた課題をまとめてみようと思います。
臨床知見の偏りを解消する医師の「研鑽」
医療技術の進歩に伴い、医師の専門性や病院の役割は高度化・細分化され、医師や病院の持っている臨床知見には偏りが生じています。例えば、「ある症例」がたくさん集まる病院では多くの臨床知見が集約されますが、外部の医師がその知見を学ぶことは難しいのが現状です。この偏りを補っているのが、医師の職業倫理的な活動である「研鑽」で、論文執筆や学会発表をきっかけに医師同士が交流することで、日々進歩する医療や手技をキャッチアップしています。
研鑽に必要な自己負担
しかし、研鑽には医師個人が負担するコストがつきものです。
自分が正直辛いと感じていることは、学会参加に結構な経済的コストがかかることです。ざっと思いつくだけで以下が該当する費用です。
・学会年会費
・年次学術総会参加費
・単位申請費
・交通費
・宿泊費
医師の学会参加費用に関しての調査(2010年、メドピア社)では、「上限があり、一部病院から出る」が45%で、次いで「全額、個人負担」が23%といった結果が出ています。病院からの補助には、回数や金額には、年1回~数回、5万円~30万円と幅があったようです。このアンケートは、「学会や研究会が細分化され、参加する学会・研究会が多くなるほど、経済的負担が増大している」という背景のもとに実施されました。それから、10年以上経って、医師の研鑽を取り巻く環境はどう変化していくのでしょうか。
医師の働き方改革もあり、所属施設で経験を積む時間数が限られてくることで、医師の研鑽活動の重要性はより鮮明になっていきます。これまでのようなリアルな学会参加での研鑽はもちろん有効なアプローチですが、地理的・時間的な制約があり、すべての医療者に優しい慣習ではなかったように思います。そして、今回取り上げた経済的コストは、これまで大きな問題とはなっていませんでしたが、気軽なオンライン勉強会と比較されることで顕在化する課題となるでしょう。研鑽を積む医師の倫理観に頼っているままでは、サステナブルな医療とは言えないかもしれません。
臨床知見の偏在に改善のアプローチを
新型コロナウィルス感染症によるパンデミックを経て、医師の学術活動もオンライン化が急速に進み、移動しなくても研鑽の場にアプローチできるようになりました。しかし、点在するイベント情報をキャッチアップするには工数がかかるほか、講義形式のイベントには双方向性がなく、医療現場で得た生々しい臨床知見を共有する場としては張り合いがありません。これでは情報のアップデートはできても、実際の臨床現場で活かせる知見や手技向上には繋がりにくく、特に外科系医師の満足度を高めるには課題が残っています。
私が代表を務めるクオトミーでは、こうした課題を解決するべく「Eventomy(イベントミー)」を運営しています。点在しているイベント開催情報を集約し、専門性にピッタリのイベントや仲間との出会いを創出するサービスです。医師は本サービスの利用により、専門領域の知見を深めるだけでなく、専門性の近い医師と研鑽の場を共有することもできます。今後も研鑽活動を起点にしたオンラインコミュニケーションを活性化することで、医師・病院間の臨床知見の偏在が改善されるようサポートしていく予定です。
興味のある方はぜひ登録してみてください。
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