テンポ・リズム・グルーヴ
どうしてもボイトレというと音程(ピッチ)を良くすることばかり考えがちですが、テンポ・リズム・グルーヴを理解していくことが必要不可欠です。特にリズムが理解できていないとアンサンブル(合奏)は難しいのかなと感じます。
それぞれの定義を話すととんでもなく長い難しい面倒くさい話になってしまいますので、ここでは例え話を。
私たち人間の居るこの世界には、時間という概念があります。一年、一ヶ月、一日、一時間、一分、一秒・・・という感じで細かくなりますが、この時間の流れが変化したり止まったりすることは無いと考えた上で、これを「テンポ」とします。
またその世界に居る人間の持つ性格や性質は多様性に富みます。石橋を叩いて渡るような人もいれば、考える前に動いてしまうような人もいて。リーダーとして周りをグイグイ引っ張る人や、フォロワーとしての調整力に優れる人もいて。頑固な人から気弱な人まで、落ち着いた人からせっかちな人まで、いろんな「リズム」の持ち主がいます。そんな人間が集まって社会という組織が出来上がります。
会社や学校、大きくは国や地域、小さいところでは家庭など、様々な組織がありますが、その組織の中で人々が支え合い、補い合い、有機的に機能し、「うねり」や「ノリ」のようなものを伴うある種の高揚感のみたいなものが生まれてきたとすれば、それがいわゆる「グルーヴ」であり、「グルーヴ感」のある状態であると私は考えます。
もっと簡単に言えば、人間関係においての「気が合う」「ノリが合う」「ウマが合う」という感じに近いかもしれません。すぐに打ち解けるような時もあり、時間をかけて良い関係を構築する時もあり、逆にいつまでたっても相性が悪いままの時もあったりします。人間という生き物はそもそも完全無欠なんてことは絶対にないわけで、そんな不完全な人間同士が集まって、どうにかこうにかお互いを分かり合おうとして生まれてくる一体感のようなものこそが「グルーヴ」なのです。
テンポをあらかじめ決めておきつつ、リズムのイメージを共有し、お互いを理解し合いながら生まれてくるグルーヴ。ミュージシャンがリハーサルやセッションなどで確認しているのは、このグルーヴのまとまりやバランスだったりするんですね。メンバーのキャラクターや、そのバンドやユニットにおける役割分担を明確にして、それぞれの良いところを出し合いながら、その瞬間にかける。ビジネスの組織論やスポーツのチームワークにも応用できそうな話ですね。
テンポの上に乗っかったリズムをいかに理解し合うかによってグルーヴは変わります。自分のことでいっぱいいっぱいになっていてはリズムを理解し合うことはできません。慣れないうちはフォローしてもらうことも大事です。個人でできる練習を突き詰めながら、余裕や遊びのようなものが生まれるまで、自分に馴染んでくるまでやり切ることが求められます。
歌い手としては、長時間の練習や本番に耐えうる声帯の使い方が大事ですし、自分の良さを出し切れるような状態に持っていくことも大事ですね。これこそがボイストレーニングの意味や意義だったりします。自分が上手くなることも大事。人の演奏を聴けるようになることも大事。そしてそこに集まった人の良いところがきちんと発揮できて、その人たちにしか生み出せないグルーヴが出るようにすることが最も大事なことです。
テンポ→リズム→グルーヴ。音楽家の永遠のテーマです。難しいですが、そこのところを意識して、日々の練習頑張っていきましょう。
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