虹の橋を渡った子と生きる<3>。QRコードを恨めしく思った日。
鬱状態の悪化のため、休職して2カ月。心と身体の休養の期間だからこそ、やろうと思っていたことのひとつがアパートを快適に整えることなのだけれど、予定どおりには終わらないまま、間もなく復職しようとしている。
ひとつしか持っていない、本棚代わりのカラーボックスのなかがあふれてきていたのを整理しようと思って、雑誌やら、ファイルやらを床に全部出してきて、2週間以上経つ。雑誌については、1冊ぶんずつ手元に残したい記事をスクラップしたりしてきたのだけれど(1冊あたり1時間近くかかっていた)、このペースでは終わりそうになくて、嫌気がさしてきたので、今日は、スクラップを終わらせるのではなく、気になる記事のページだけびりびり破る作業を、まず終わらせることにした。それだけでも、結局、6、7時間かけてしまった。
こういうとき、中は見ないで潔く捨てるという方法もよく紹介されているけれど、そうすると、なんだかんだで、また同じような雑誌を買ってしまいそうな気がしたので、この方法で良かったと思う。とっておいたページの山は、少しずつ読み返して、保存するものと捨てるものを取捨していくつもりだ。
ファイルの中身は、主にレシートだった。今年の5月末から、何度も挫折してきた家計簿がやっと続くようになってきたのだが、それ以前のレシートだった。コロナのワクチン接種の案内もそのファイルから出てくるあたりが、整理下手を物語っている。そして、それらにまじって、市からの、狂犬病予防接種の案内も入っていた。
飼い犬が亡くなったら、市に連絡しなくてはいけないんだったよな、と、愛犬のまーが亡くなって間もなく5カ月になろうという最近になって思うようになっていたので、そして、それなのに、いつも後回しにしていたので、こうして市からの郵便物を見つけられたのは、いいきっかけだったと思うべきなのかもしれない。
でも、今日は、朝から外の曇り空と同じくらい気持ちがどんよりしていた。11月から習慣化しようと思って張り切っていたいくつかのことに、早くも手をつけることができず、落ち込んだりしていた。
こういうときこそ、そうだ、編み物だ!と思って、まーのお骨のための敷物のモチーフ編みの続きを編んだりもしたのだけれど、編み物セットを久しぶりに引っ張り出そうと押し入れを開けたら、そこに、まーの最後の数カ月で使っていた、そしてちゃんと洗ってしまっておいたブランケットやらペット用のベッドやらがどーんと目に入って、ぽんぽんとブランケットを叩きながら、泣いた日でもあった。
だから、せめて部屋をすっきりさせて気分を上げようとカラーボックスの整理に着手したというのに。
どうも、今日は、やっぱり悲しい気持ちになっちゃうようになっているみたいだ。死亡届、出さなきゃいけない日みたいだ。
だから出した。
「上記飼犬が、死亡、譲渡、飼い主の変更、行方不明の場合は下記へご連絡ください。また、死亡した場合のみQRコードで登録できます」
担当部署の電話番号とともに、葉書にはQRコードが掲載されていた。
葉書を見つけた今日は土曜日だけれど。QRコードがあるなら、いつでも届けられるものね。電話で、職員さんのお手間をかけなくてもいいものね。
QRコードを読み込むと、市の電子申請サービスに飛び、必要な情報を入力して、あっけなく死亡届の受付は完了した(受付完了メールがすぐに届いた)。
もし、このサービスを使わなくて、市役所にお電話していたら、「飼い犬が亡くなったんです」と言ったら、お悔やみの言葉ひとつもかけてもらえたのだろうか。わからない。でも、たぶん、「ご連絡ありがとうございます」くらいのことは最低でも言ってもらえただろうと思う。
実は、このnoteは、とっておくことにした雑誌「公募ガイド」のエッセイ指南の特集ページを読んでから書いている。「ユーモア、飛躍、キラーフレーズ」が大切なテクニックだと書かれていた。
どれも無理だったな。だって悲しいのだもの。
まーが、とうとうオフィシャルに亡くなってしまった。
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