星を見る7人
先日「BTS: Yet To Come in Cinemas」を映画館で見てきた。
昨年秋の釜山でのコンサートを映像化したもので、リアルタイムで配信を見たときも、予想をはるかに上回るすばらしさに感動したのだった。
今日はコンサートの内容そのものではなく、少し違ったポイントで、映画館の大スクリーンで見たゆえに印象深かったことを書こうと思う。
熱気あふれるスタジアムのゆらめきたつような照明を浴びながら、ステージ上に横一列に並んで立つ7人の背中を、カメラが広い画角で捉える。彼らはペンライトで埋め尽くされた、広大な客席を見つめている。
その高揚した背中越しに見える景色が、あまりにも美しくて私は息を呑んだ。
ステージ上から見る客席の光景は、完全に星空だった。
かつて小笠原諸島や沖縄の離島で見た満点の星空は、漆黒の闇と静寂の中、矛盾するようだが、ものすごく賑やかだった。さえぎるものが何もない澄みわたった空間が、大小さまざまな光の粒で一面埋め尽くされていた。根拠のない懐かしさが湧いてきて、ふるさとに帰ったような大きな安心感に包まれ、そのまま空に吸い込まれていきそうだった。
私の知る限り世界でもっとも美しいその景色と、スクリーンの映像が重なった。
アンコールでも、列車のセットに乗った彼らが窓際の座席に座り、空を見上げるように客席を眺めている。窓の向こうに広がる星々、そしてそれをいとおしそうに見つめる表情のなんと美しいことか。心が震えた。
多くのアーティストたちにとって、この景色こそが原動力になっているんだなと実感した。きっとひとたび目にしてしまうと、魂に焼きついて消えないほどの大きな感激を味わい、どんな苦労や困難があっても乗り越えてまたこの景色を見たいと願うのだろう。
ただの光ではない。自分たちを応援してくれるファンの放つ光には、愛がこもっている。ペンライトを持つファン1人1人が、大げさではなく光り輝く「星」そのものなんじゃないか。
自分たちが全身全霊をこめて作った音楽が、今この場所、この空間に大音量で響きわたっている。隣にはこの世の誰よりも深い絆で結ばれたメンバーがいて、後ろには自分たちを支えてくれるスタッフたちがいる。
そんなシチュエーションで、この「星々」の作り出す景色を眺めている。
「彼らの表情がこんなにも輝いていて美しいのは、彼らが見ている景色が美しいからだ」ということを実感したのだった。
彼らがどれほど楽曲やパフォーマンスに情熱を注ぎ、血のにじむような努力を積み重ねてきたかは、世界中の人々の知るところである。これほどの知名度と影響力を誇る大スターゆえの苦悩も、数限りなく存在するに違いない。
そしてそれは、異なる立場の我々がリアリティを持って感じるのは不可能なほど重い宿命なのだろう。わかったような気になってはいけないなと思う。
「みんなのために頑張ってくれて、本当にありがとう」私たちから言えることはこれに尽きる。
彼らがこの景色を見ることで、報われたような気持ちになってくれていたらいいなと思う。
映画館からの帰り道、海と星空が恋しくて恋しくてたまらなくなった。
「星のコンシェルジュ」という星空や天体の解説を生業にしている方が、以前こんな話を聞かせてくれたのを思い出した。
「星を見ている人の顔が本当に輝いていて、僕は星の案内人になりたいと思ったんです」
私の好きな人たちには、これからもそんな輝く表情を見せ続けてほしいし、誰かのそんな表情を見つけて、じんわりにんまり、胸に広がるぬくもりを愛でることができたら幸せだなぁと思う。
「EPILOGUE: Young Forever」をエンドレスリピートで聴きながら、夜の桟橋に泊まる船を、今すぐ飛び乗りたいような焦燥を抱えて眺めるのだった。
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