二宮敦人さんの「最後の医者シリーズ」を読んで 自分がどう死んでいくのかを考えていく大切さを知る
Kindle本を耳読しています。
生死について、真正面から切り込んだ
二宮敦人さんの作品「最後の医者は…」シリーズについての感想を書きました。
「最後の医者は雨上がりの空に君を願う(上)」
読み終えるまでの平均的な時間(3時間13分)
福原と桐子、それぞれの環境は変わっていましたが、考え方の根本は同じ。
それは、HIV感染症の患者に対しても同じ。
その患者の考え方の違いから、結末も大きく変わっていく。
一般的には、福原医師へのニーズが多いかと思われるが、桐子医師を必要とする患者がいないわけでないところが、生死について考えると難しい。
桐子医師は、少年期の経験がその土台となっており、患者の気持ちを知る桐子の考え方を垣間見られた。
桐子少年の言葉の中に、病院は治るための場所じゃない、嘘と気休めなんだ、という言葉があった。
そして、その後には
…わかった上でいなくちゃいけないんだ。医者の言葉を真に受けて信じたりしたら、裏切りが待っているだけだよ」
桐子少年は、それまでにたくさんの裏切りを受けたのだろうと感じ、心が痛みました。
「最後の医者は雨上がりの空に君を思う(下)」
読み終えるまでの平均的な時間(2時間55分)
桐子の少年期続きから、隣のベッドの母親くらいの女性と生死について深く語り合う。小学生であるがその冷めた考えの少年に対し、前向きな彼女が最後に残した言葉は、意外にも「諦めてもいいんだよ」だった。
その言葉は、桐子医師の原点になったのかも知れないと感じた。
生と死をどう扱うかは患者の希望が全てだから、桐子の中にある患者への基準はいつも変わらない。
桐子医師か福原医師か、あるいは音山医師かという選択があるようだけれども、患者を思う気持ちは、それぞれに素晴らしい。
医師を評価するというよりも、患者自身が主体となって、考えるだけのツールを持ち、力をつけていくことが求められるのではないかと感じました。
「最後の医者は桜を見上げて君を想う」
このシリーズの中で、初めて読んだ時の感想です。
読み終えるまでの平均的な時間(5時間16分)
福原、桐子、音山、同期3人の医師それぞれが考える患者の生死についてをめぐる物語。
先進医療をもって患者の余命を伸ばすことと、患者にとって良い最期とは同じなのか、とても心に響いた。
いずれ死んでしまう白血病や難病などの患者に対してどのような選択肢を提示するのか、人間の生死について真正面から見つめられ久々にドキッとした。
自分や周りの人の生死についても考えた。
さいごに
3冊を思い起こしてみても、心を揺さぶられながらも真剣に人間の最期について考えさせられる作品でした。
どの医者がいいかということよりも、患者としてならどう生きたいのか、どう死んでいきたいのかということをしっかりと考えておくことが大切だと教えられたような気持ちです。
とても良い作品でした。