居るだけ。
コーヒーを淹れている。
週二回だけ。
他にもいろいろやってるんだけど、これが中心。
居酒屋が休みの日の空いたスペースを借りている。
といっても店という感じもあまりなくて、僕が暇つぶしをしているところにお客さんが来るのでコーヒーを淹れたり、作ったお菓子をふるまったりするというような感じだ。
友達の家に来るような感覚で来るお客さんもいる。
僕の淹れたコーヒーをおいしいと言ってくれる人や、オーダーを事細かに伝えてくれる人、僕と一緒にボードゲームをするために来る人、ほんとに様々
僕はもともとコーヒーが苦手だったのだけど、高校の頃、おいしいコーヒーを淹れる店と出会ったもんだから、そこからハマってしまったりした。
もともとカフェは好きだった。コーヒーは飲めなかったけど。ジュースを飲みながら他人の話に耳をそばだてたり、ごくごく少ない友達と話したり、個人のお店ではマスターと話したり。
カフェが居場所だったんだなと20歳を超えてから気づいた。
父が過干渉で家の居心地がとても悪くて、かといって不登校気味だった僕には学校にも居場所がなかった。
そっとしておいてくれたり、話を聞いてくれるような空気を持ったカフェが居場所だった。
23になって、不登校だったり、生き辛さを抱えている人たちの支援が、いや、支援というにはおこがましい。
居場所になるような場所を作りたいと思った。
ただ居るだけでいい場所をただ居ることを肯定してくれる場所を作りたいと思った。
最初はNPOなり、少し信用してもらえるような、硬い組織がいいんじゃないかと思って活動を始めた。フリースクールに話を聞きに行って、ボランティアをしてみたり、学習支援をしてみたり。
なかなかうまくはいかなくて、少し挫けた。
原点に戻ろうと思った。僕の居場所はカフェだった。カフェはいつでも僕を肯定してくれたし、ただ居ることを肯定してくれる場所だった。
それなら同じようにカフェをしてみようと思った。出入り自由だし、少しお茶を飲みながらボーっとしたり、話したり。
そういうのが大切だと思った。
立ち止まることは難しい。
嫌でも前に進まなきゃいけない気がしてくるから。
でも、立ち止まっていたっていいって言ってくれるような場所が欲しかったし、作りたいと思った。
僕はコーヒーが好きだし、カフェが好きだからそれでいいと思った。
そこから始める。
明日もコーヒーを淹れる。
コーヒーを淹れながら待つ。もしかしたら本を読みながら待ってるし、一人でボードゲームをしながら待ってるかもしれない。
誰かに出会えたらいいと思う。