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ゲーミング・コンプレックス

去年の今頃、ゲーミングPCを買った。

僕はいわゆるゲーマーではない。
ゲームは人並みに好きだが詳しいわけでもないし、
何時間も続けてゲームをするほど熱中もできない。

でも今、足元にはゲーミングPCがあり
ブオーっと音を立てている。
VCをつないで一緒にゲームをする友達もいないのに
なぜかデスクにはRazarのマイクもある。

なぜ僕は30代になって(届くまで奥さんに黙ってまで)
突然ゲーミングPCを買ったのか。
考えてみるとそれは子供の頃のコンプレックスからきているように思う。

子供の頃は周りの友達と同じく狂ったようにゲームをしていた。
何時間でも飽きなかったし、友達の家で一緒にゲームもした。
ただ、周りと違ったことが2つある。

一つは、常に一世代遅れだったこと。
みんなが64で遊んでいたとき、僕はスーファミで遊んでいたし、
みんながPS2で遊んでいたとき、僕はPS1で遊んでいた。
家が裕福じゃなかったこともあるが、
それ以上に父親の教育方針だったのだろうと、今では思う。
最新のゲームがやりたいときは友達の家に遊びに行った。
(ゲーム目的で遊びに行き過ぎて先方の親に怒られたこともある)

もう一つは、変なゲームしか買ってもらえなかったこと。
我が家はお小遣い制ではなく、欲しいものがあれば親にプレゼンして稟議を通す必要があった。
しかしゲームに関しては決裁の壁がかなり高かった。
「みんながやってるからドラクエがやりたい」
「新しく発売されるFFがやりたい」
そんなやましい気持ちでは決裁は下りないのだ。

親が最初に買い与えてくれたのは「せがれいじり」だった。

小学生時代を共にした思い出のソフト

世代が近い人は知っているソフトかもしれない。
ちなみに「せがれいじりが欲しい」と頼んだ覚えはない。

またあるとき、父親の機嫌がいいところを攻めて買ってもらえたソフトがある。
「筋肉番付 Vol.1」である。

中学時代を共にした思い出のソフト

これは頼んだ覚えがある。
当時この番組の人気は(少なくとも仲間内では)凄まじかった。
ケイン・コスギや池谷直樹は僕の中学時代のヒーローだった。
だが他に有名タイトルが続々出ていたのに、
わざわざ「筋肉番付Vol.1」を選ぶ友達はいなかった。

こうした理由からなんとなくコンプレックスを抱えつつも、
中学校の後半からは音楽やギターにのめり込んで
ゲームのことは徐々に忘れていった。

久しぶりにゲームがやりたくなったのは、上司の何気ない一言がきっかけだった。
直属の上司は女性で、仕事一筋で厳しくまじめな人だった。
そんな上司がある朝、出勤するなりこんなことを言った。
「昨日APEXやり過ぎて寝不足なんだよね~」
はて、APEXとは?
調べてみるとどうやら流行っているゲームらしい。
あの上司が寝不足になるほどやるゲームってなんだろう?

そんなこんなでさらに調べているうちにゲーミングPCやプロゲーマー、
ストリーマーの存在を知った。

「こんなことになっていたのか」と衝撃を受けたことを覚えている。

僕が子供の頃はこうだった。
・ゲームは1日1時間まで!
・PCでゲームをやってるやつはオタク!
・ゲームで食っていくなんてバカが考えること!
それが今はどうか。
・釈迦が30時間配信!
・Vaultroomのアイテムは常に即完!
・ゲーム配信で芸能人より稼いでいる人がいっぱい!

僕は思った。

分かります、ニキ。

「そうだ PC、買おう。」
SwitchでもPS5でもない。ゲーミングPCを買おう。

かくして僕は子供の頃の鬱屈したコンプレックスを一気に解消すべく、
大人の財力を惜しみなく発揮して(ギリ離婚せずに済む金額の)ゲーミングPCを買った。

結局今でも週に4、5時間くらいしかゲームはできていないが、
買って良かったと思っている。
30代になって、昔のゲームとはまた違う新しいカルチャーに出会えて人生が楽しくなった。

最後は1年前の自分だったら知らなかったあの人の言葉で締めようと思う。

「感謝します」

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