きらきらぼしが降りてくる 「安西水丸展 村上春樹との仕事から」
突然寒くなったり暖かくなったりしながら、
今年もあと1ヶ月と少しとなりました。
忙しい日々に慣れすぎて、なんだか自分の気分がつかめていない。
行きたかった美術展は開催が翌週からとは、なんとなくツイてない感じ。
今は自分が素直に観たいと心から感じたものを観たいぞ。
あれこれと探して、「安西水丸展」を見つけました。
早稲田大学の村上春樹ライブラリー!
いつか行きたいと思っていたので、見つけてラッキーでした。
晴天の暖かい日差しのなか、早稲田大学を目指しました。
永青文庫に行った(過去に感想をnoteに載せてます
)ことがあるので、早稲田大学のアクセスに不安はありません。
日本有数の著名な大学キャンパスにドキドキしながら、
国際文学館を訪れました。
入口は地下と1階にありました。
この建物にはカフェやオーディオルームもあります。
1階入口から大きな波を模したようなオブジェが建物を
半分包むように囲んでいる印象的な意匠です。
1階の階段横から安西水丸さんの作品が置かれ、
自然に上へと上がりたくなります。
安西さんらしい線のタッチが、軽妙で
柔らかさに溢れた作品に導かれて2階へ。
村上春樹さんのとのエピソードをまとめられたボードに、
お二人が手掛けた本とイラスト、関係性がわかるような
エピソードが簡潔にまとめられています。
何より安西さんのイラストが心地良い。
ユーモアと不思議な理不尽さと清潔感が
観る人に温度を伝えてくるようなイラストです。
脱いだばかりの洋服に体温が残っていたような、
程よいぬくさを感じます。
安西さんが小学生の時に描かれたポスター
(複製品を展示中)でさえそう感じるのだから、
きっと子供のころから自分が現わしたいことを
解っていた方なのだと思います。
一緒に飾ってある安西さんコレクションのこけしや
スノードームも、観る人がニコッとさせる
独特のセンスがあって老若男女問わず
足を止めて見入っていました。
安西さんの作品はいつの時代のものであっても
古臭さや説教臭さが皆無で
床から3センチくらい浮いているような
浮遊感がある。
だけど大真面目に現実を
伝えてきている。
ある小説家の方が
「エッセイは事実を素にしているんでしょうと
言われるが、実は小説のほうがノンフィクションに近い」と
おっしゃっていたことを思い出しました。
リアルを表現するほど現実から離れる場合もあるし、
一見空想のようでも
事実を述べている場合もある。
安西水丸さんのイラストは
現実と嘘が表裏一体でつながっているから、
観ている私たちは
不思議だったり、温もりを
感じたりできるのだと思いました。
夢と現実の間を
自由に行き来するような
安西水丸さんの作品だったなと浸りながら
国際文学館を出てきた時、
小さいお子さんを連れたお母さんが
きらきらぼしを歌いながら、
大学構内を散歩されていました。
可愛いきらきらぼしを聴きながら、
安西水丸さんの描く世界は童謡のように
誰もが通る子供のなかの大人性、
大人のなかの子供性を
枠にとらわれない感性で
作品に表していたなと感じました。
国際文学館は外側と内側の印象が違って見えます。
地下から1,2階を見上げてみると…
木の肋骨を持ち、内臓は本だったの魚の腹から
外を眺めているように感じました。
木の魚の内臓になって世界を眺めてみると、
世界は今日もきらきらしていました。
今回訪れた「安西水丸展 村上春樹との仕事から」は
無料で入館できます。
海外からの村上ファンと思われる大学生の方も
羊男と記念写真を撮っていました。
村上ファンの方にも、安西ファンの方にも
おススメです。
木の魚の内臓とは?と思われた方も
ぜひ足を運んでみてください。
最後まで長い文章にお付き合いくださり、
ありがとうございました。