
【ストレスが顎をダメにする①】顎関節症について〜どんな病気?〜
40歳を機に10年ぶりに歯科医院を受診しました。気になる口のトラブルもないため、歯垢を取りにいく軽い気持ちで診察を受け、重症の顎関節症と診断を受けました。口も開くし、食べ物も噛みにくいこともなかったので驚きました。
レントゲンでは「関節円板」がなく、骨と骨が当たっている状態。膝で言えば軟骨がない状態と言われました。最近、肩こりがひどくなったことと稀に顎がガクガクすることはありました。原因は歯の食いしばりです。「食いしばりは歯と歯が当たっている状態ですよ。」とその場で指摘を受けました。
上下の歯は食べ物を食べる以外は離れているのが正常な状態です。歯と歯が軽く当たっているだけでも、それが続くと顎の筋肉が疲れ、下顎関節へ影響が出るそうです。食いしばりはストレスなど緊張している状態で起きやすいです。パソコンを使っているときなども無意識に食いしばりになりやすいです。
この記事は顎関節症について症状、分類、原因がわかる記事です。
口にトラブルがなくても、定期的に歯科受診をしましょう。
1 顎関節症とは?主な原因はTCH
顎関節症とは、あごを動かす筋肉(咀嚼筋)とあごの関節(顎関節)のいずれかかまたは両方が痛むことです。
一言で表すと「あごを動かすと痛い」病気です。
原因の根源は咀嚼筋のトラブルです。無意識の食いしばり、就寝中の歯ぎしりなど、上下の歯が接触させる癖のことをTCH(Tooth Contacting Habit)いいます。上下の歯が接触した状態(TCH)は咀嚼筋の緊張を強いることになり、時間の経過とともに筋肉の疲労をまねき、筋痛が起きます。さらにこの状態は咀嚼筋と下顎の構造の関係から顎関節の内部を圧迫することなります。この圧迫する力が顎関節の中の軟骨(関節円板)に影響を与えて、軟骨の位置がずれたり、滑液が劣化が生じます。悪化すると骨の変形します。その結果、あごがスムーズに動きにくくなり、痛みが出ます。
顎関節症はセルフケアや生活習慣を気をつければ、痛みを治すことができます。
歯と歯と接触は瞬間的です。接触している時間の合計は1日20分程度であることが普通です。
治療法は、上下の歯が接触した状態(TCH)をやめることです。他は咀嚼筋のマッサージ、痛い時は負荷を減らすため、硬いものを食べるのは避けるなどです。まれに外科手術することもあります。
2 どんな症状なのか
口が開かない開口障害
・口を大きく開けられない
・ひっかかったような感じして口が大きく開かない
・歯科の治療で口を開けたままの状態が辛い
症状の原因は関節のクッションである関節円板がずれて、動きを邪魔しているからです。
どれくらい開ければいいの?
指3本くらいは開くのが一般的です。人差し指、中指、薬指を揃えて、指の第2関節付近まで口に入れらるくらい開口できると正常です。
あご周りが痛い
・口を開けるとあご周りが痛い
・噛むと顎周りが痛い
・あごを動かしてしないときは押さえると痛い(圧痛)
原因は、関節の動きが悪くなり、血流が悪化して老廃物が溜まることにあります。あごを動かす筋肉の緊張状態が続き、疲労し、刺激に敏感になっています。
じっとしていても痛む自発痛が出ることもあります。自発痛は数日で消失、続くようなら他の病気の可能性があります。顎関節症では腫れたり、熱を持ったりすることはありません。腫れたり、熱を持ったりする場合は他の病気の可能があります。

顎を動かした時の異常音(関節雑音)

関節は膝や手にもあります。これらがポッキと鳴っても、そこまで気にならないことがほとんど。口を開くたびに音が気になるのはあごが耳の近くにあるため、関節音が聞こえやすいからです。音だけで、痛みや開口障害の症状がなければ、心配ありません。
急に音がなり、痛みや開口障害があれば、2週間以内であればずれた関節円板が元の位置に戻る可能性があります。あごの関節に負担を極力かけないようにしましょう。
偏頭痛や肩こりの症状も出る
顎の筋肉の関連して、肩こりや偏頭痛も起きる人もいます。顎関節症のセルフケアをし、顎関節症の症状が改善すると、肩こりや偏頭痛も一緒に改善する人もいます。
3 顎関節症には4つのタイプがある
咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)
筋肉の痛みによるもの
顎関節痛障害(Ⅱ型)
硬いものを噛んだり、顔面を打ちつけたりして、顎関節を取り巻く組織が傷ついたことによるもの
顎関節円板障害(Ⅲ型)
関節円板の位置がずれたいることで症状が現れるもの。関節音がするだけのタイプ(Ⅲa型)とずれた関節円板が下顎の動きを妨げて、口が開かなくなるタイプ(Ⅲb型)がある。
変形性顎関節症(Ⅳ型)
骨の変形によってあごの動きが悪くなったり、痛みが出たりするもの
診察について
問診(いつからか、症状、生活状況、就寝時の様子)
視診 口の中チェック(噛み癖がある場合は頬の内側に噛み跡の白い筋のようなものが見られる、舌の側面がギザギザになっている)
触診(痛みがあるか)
画像検査(X線、関節円板の位置はMRI検査が必要)
4 顎関節症はITの進展やストレスが関係している
顎関節症の症状を少なくとも1つを持つ割合が成人で40~75%でおおざっぱに見ても2人に1人は一生のうちで1回は顎関節症の症状を経験するといってもよいです。それほど患者が多いのにこれまではあまり社会的に話題にのぼることが少なかったです。これは、顎関節症の多くは自然に回復する、あるいはあまり気にならないまで症状が改善するので、患者数が増加しても大きな社会問題になりませんでした。しかし、現在では毎年新患者数は増加傾向です。
「この20年で起きたIT化の急速な進展が顎関節症に影響している!?」
昔は書く作業であったものが、ほとんどコンピューターへのキーボード入力になっています。書く作業であれば、肉体的な疲労もあり、作業を一定時間続けた後、休憩時間が必要だったはずです。キーボード入力は書く作業よりは疲労がたまらず、集中して仕事しているとパソコンの前にずっと座って入力している人は多いのではないでしょうか。このコンピューターの作業中に上下のはを接触させたままにする癖(TCH)が始まり、これの状態が続く人が増えています。
「怒りが顎をダメにする」
顎関節症を発症する根幹には無意識の食いしばりや就寝中の歯ぎしりなどによる咀嚼筋の使いすぎです。この無意識の食いしばりや歯ぎしりはなぜ起こるのか??
日々の身体的あるいは精神的ストレスによるものです。
日本の顎関節症患者を対象とした心理学的研究においても、ほとんどの患者さんは、日々の「怒り」の感情を抱きながら生活していることが明らかになっています。
仕事の時は食いしばりや症状が気になるが、休みの日は気にならないという人もいます。
私の友人も夫婦関係でイライラが長年積もり、歯ぎしりは日中でも始まったと聞きました。私もパソコンに向かっている時や、緊張感のある現場では無意識に食いしばりをしていました。自分にも人にも厳しい性格なので、イライラも人より感じやすかった思います。
「現代は誰でもあごにストレスをためる時代」
かつては女性に多く顎関節症は多かったです(男性の2倍)
年齢別には20代を中心とした若者に多いとされてきました。
これは家庭環境ならびに社会環境によって生じるさまざまな負のストレスが女性にかかりやすく、社会人デビュー前後の若者が、いわゆる大人よりも社会的に大きなストレスを感じ緊張しながら生きてきたのではないと考えらます。現在では年齢層も小学生から老年世代まで幅広く分布するようになりました。
これはどの世代も家庭環境や社会環境において、「怒り」の感情も抱くことが増えた結果でしょうか。
深呼吸や休憩はきちんととる、リラックスできる環境づくりを心がけることが大事です。
5 顎関節症予備軍チェックリスト
以下に該当する項目があると顎関節症の予備軍候補です。※
◻︎簡単には解決できない悩み、心配ごと、ムカつくことがある
◻︎多忙で気忙しく、気分的にゆったりくつろげない
◻︎身体的・精神的な疲労が蓄積している
◻︎就寝中、歯ぎしりしている
◻︎犬歯や前歯の先端がすり減っている
◻︎気がつくと食いしばりや上下の歯を噛み合わせている
以下に該当項目があると顎関節症予備軍もしくは軽症の疑いあり。※
◻︎痛くはないが、顎がだるく重く感じる
◻︎痛くはないが、口を大きく開けにく。
◻︎痛くはないが、口の開閉など、アゴを動かすと音がする
◻︎歯ごたえのあるものを食べると(肉、タコ、など)アゴが痛くなる。痛くならないが疲れて嫌になる。
◻︎歯の治療で、長時間にわたって口を開けているとアゴが痛くなる。痛くはならないが疲れて嫌になる。
当てはまっていたり、症状が気になったら、歯科医院、口腔外科を受診しましょう。
今は大丈夫という方も定期的に歯医者さんは行きましょう。
顎関節症の治し方や生活で気をつけることはこちらを参考に↓
参考文献
「アゴがダルい、アゴが痛い、口が開かない これって顎関節症?」
著・濱田吉樹 ※チュックリストはこの書籍より 引用
「完全図解 顎関節症と噛み合わせの悩みが解決する本」 著・木野 孔司
「自分で治せる!顎関節症 ひと目でわかるイラスト図解」 著・木野 孔司