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明日から頑張ろう、と思わせてくれる映画〜ルックバック/藤本タツキ

SNSでも話題になっているルックバック。
早速映画館に見に行ってきました。
50分程度の短いアニメーションですが、なんというか、密度が濃くあっという間に時間が過ぎ去ってしまったような鑑賞体験でした。

Amazon紹介文は以下

自分の才能に絶対の自信を持つ藤野と、引きこもりの京本。田舎町に住む2人の少女を引き合わせ、結びつけたのは漫画を描くことへのひたむきな思いだった。月日は流れても、背中を支えてくれたのはいつだって――。唯一無二の筆致で放つ青春長編読切。

あらすじ(ネタバレあり)

主人公は、なんでも器用にこなし自分にも自信がある藤野。もう一人の主人公は藤野と正反対の性格をしている引きこもりの京本。

多才である藤野は、学年新聞に4コマ漫画を掲載していました。
ある時、担任から「京本が漫画を描きたがっているから1枠空けてくれ」と言われ、自分の方が良い作品を作っているに違いないと自信を持っている藤野はOKを出します。
しかし、京本の作品を見た藤野は、自分と京本の間に埋めることのできない画力の差があることに気づきます。

漫画を一つのアイデンティティと考えていた藤野は、京本の漫画を見たのを契機に本気になって画力の向上に努めます。
雨の日も風の日も、スケッチブックにデッサンを続ける。
描いて描いて描きまくる。
努力を積み重ねた藤野ですが、自分より猛スピードで画力が向上している京本の作品を見て、絵の道を断念します。

絵から離れ、通常の小学生女子の生活を楽しんでいた藤野。
彼女を漫画の道に連れ戻したのは、まさかの京本でした。

卒業証書を私に京本家を訪れ、自分に絵を諦めさせた京本がまさか自分の作品に多大なるリスペクトと憧れを持っていたことを本人の口から聞き、藤本は漫画の道に戻ります。

いつしか2人は協力して漫画を描くようになります。
ストーリーの創作と絵を描く速さの能力が長けている藤野、時間はかかるけど素晴らしい絵を描ける京本。二人で欠点を補い合い生まれた作品は、一般にも高評価を受け、二人で漫画家の道へと歩み始めます。


しかし、ついに転機は訪れます。
2人は高校卒業を機に連載漫画家になることを打診されていたのですが、京本が選んだのは美術大学への進学、でした。

喧嘩別れをするような形で、藤野は漫画家、京本は美大生という道に進んでいきます。
京本と別れた藤野は努力を続け、漫画家として成功への道を歩き始めるのですが、ある時、京本が通り魔に襲われて死亡したニュースを耳にします。

藤野は、自分が京本を部屋から連れ出さなければ死ぬこともなかった、と自分を責める・・・と、ハッピーエンドではなくこんな終わり方です。

考察的なもの

もしかしたら、作者の藤野さん自身の経験や漫画に対する思いのようなものも盛り込まれている漫画なのかな、と思いました。
時々テレビなどで漫画家が取り上げられることがあり、自分も好き好んで良く見るのですが、本当に「人生を漫画に捧げている」と感心してしまう方ばかり。

電子化が進み、もしかしたら昔に比べると多少楽になった部分はあるかもしれませんが、それでも、あんなに命を削るようにして描かれた漫画が数百円で買える。こんなありがたいことってないですよね。

本作品は、切り口によっていろんな読み取り方ができるなという印象です。

一つは漫画というものが結びつけた2人の友情という物語。
スポーツのように、努力で勝利(成功)を掴み取るという物語。
大切なひとを失くす物語。

上述のように、ハッピーエンドの作品ではありません。
でも、作品を見終わり映画館を出る時には「よし、頑張ろう」という前向きな気持ちにさせてくれる不思議な魔力があります。


ちなみに、上の画力の話に関していうと、藤本は画力向上のため、数年かけて何十冊というスケッチブックを使い切ります。しかしながら、藤本を漫画の道から遠ざけた京本は、その10倍じゃ効かない量のスケッチブックを使い切っているのでした。
単純な努力量の比較には意味はないと思いますが、上には上がいること、そしてその道で一流と言われるすごい人は、表に出なくても半端ない量の努力を積み重ねていることは忘れちゃいけないですね。

なんか、ブルージャイアントの宮本はじめ、こういう主人公努力する系の漫画にはめっぽう弱い自分でした・・w

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