見出し画像

イライラと焦燥感の根本原因は時間の有限性かも〜限りある時間の使い方/オリバー・バークマン

「時間がない」
「一日24時間じゃ足りない」
こんな思いを抱きながら日々過ごしている社会人は少なくないかと思います。自分も然り。社会人に限定せず、もしかしたらほとんどの人がそう思っているのかも知れません。

そういった課題認識を反映してか、書店に行くとタイムマネジメントや効率的な時間の使い方といった類の本が溢れています。

・25分集中5分休憩のサイクルを繰り返そう
・メールの確認は1日3回まで
・午前中に頭を使うタスクは片付けよう

などなど。
もちろん、それぞれに大小の効果があり、自分も取り入れているものも多くあります。
関連する書籍も何冊か読んできました。


でも、それで漠とした焦燥感や時間が足りないという感覚が消えたか、といわれると答えは否でした。
考えてみると当たり前の話。
元々100分かかっていた仕事を50分でこなせるようになったとして、その差分の50分が余暇なり気持ちの余裕につながるのであれば、皆効率化を求め続ければ幸せになるのでしょうが、そうはなってない。
社会人でも学生でも誰もが経験あるかと思いますが、人間、スキマの時間が生まれれてそこに何か入れたがるし、雇われてれば仕事はいくらでも降ってきます。

僕、効率よくこなしたので50分休憩しときます、とはならないわけですw

で、巨視的に捉えてみると、効率化は自分をより忙しくさせてるとも言えなくもない。誠に皮肉な話。(社会人には、「仕事は忙しい人に任せると間違いない」という暗黙のルールのようなものがあったりします)

そんな術中にハマってしまっていた私をぶん殴ってくれた1冊がこちら。

お恥ずかしい話ですが、自分はこれまで「自分の時間を確保したい」という思いが強くありました。本も読みたい、映画も見たい、音楽も聴きたい。
そういう思いが根底にあると、たとえば子育てしてても早く、効率的に物事を終わらせることに囚われてしまう。
寝かしつけをすれば、1秒でも早く寝てもらいたいし、うまく寝てくれないとイライラする。保育園に連れて行くときなども、すんなり着替えてくれず、イライラする。で、無理やり着替えさせようとして子供が暴れ、結局普通にやるより時間がかかり、さらにイライラ、なんてこともありました。(あります、か)


本書は、まず現代人の「効率化」を求めることの危険性というか意味のなさに言及した上で、時間を有効に使うべきもの、から、時間そのもが人生そのもの、というふうなパラダイムシフトを引き起こしてくれます。

自分に刺さる言葉も多々。何個か紹介してみます。

厳しい競争社会を生き抜くためには、一刻も無駄にできないと感じるのも無理はない『さらに、ほとんどの人のは子供の頃からそうしつけられている。あとで楽しむために、今は我慢しなさい、と。』
ところが、今を犠牲にし続けると、僕たちは大事なものを失ってしまう。
今を生きることができなくなり、未来のことしか考えられなくなるのだ。

時間を無駄にするな、というのは自分も含めて多くの人が子供の頃から何度も言われてきたのではないでしょうか。
ゲームや趣味に熱中している子供に、ちゃんと勉強しなさい!と叱る親もその一つかも知れません。
もちろん、この考え方や指導がだめとか間違っているということではありません。
でも、このご時世、何が無駄になって何が無駄じゃないかを予見することなんてほぼ無理でしょうし、将来の準備で一生終わっちゃうよ、となるわけですね。


で、効率を求めた先には「密度の高い人生」が待っています。
あれも体験した、ここも行った、と経験値マウントと言いますか、より多くの人生体験があった方が勝ちというような風潮もある昨今。
著者のオリバーはこのような状況にも警鐘を鳴らしています。

人は世界中のありったけの体験を味わい、人生を「生ききった」と感じたいと願う。ところが世界が提供してくれる体験の数は実質的に無限なので、どんなに頑張っても、人生の可能性を味わい尽くしたという感覚を得ることはd系ない、むしろ、効率化の罠にどんどんハマってしまうのがオチだ。素晴らしい体験をすればするほど、「もっとすごい体験をしなければ」と思うようになり、結果的に無力感が増していく。

ここでも見事に幻想を打ち砕いてくれます。
海外や国内で行って見たいところをリスト化しておく、人生のやってみたいことリスト100を作る、というのは自分もやっています。
それを、上から消して行くような人生も悪くないですし、それも人生の充実感を得る1つの手段かと思います。
でも、そのリスト消し終わった後に何があるのか?
そこを考えることから逃げてはいけない、ということですね。

目から鱗の読書体験でした。
情報化社会で自らコンテンツを選択しないとその浪費だけで時間が無限に吸い取られていく昨今、自分の時間の使い方を考えるのに参考となる一冊です。

いいなと思ったら応援しよう!