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(映画)BLUE GIANT

とんでもない映画を見てしまった。
鑑賞後の率直な感想です。

ご存知の方も多いかもしれない、映画化もされた「岳」というマンガの作者、石塚真一さんが世に放ったジャズ漫画。
人気により、主人公の日本での成長を追った第一部、ヨーロッパに渡った第二部(supreme)、ジャズの本場アメリカでの奮闘を描いた第三部(explorer)。
今回の映画は、第一部の日本での出来事を映像化したもの。

〜以下、少しネタバレあり〜
主人公の宮本大は幼い頃にジャズを見、雷に撃たれてからというもの病的なレベルでサックスの練習を続ける高校3年生。高校卒業と同時に上京し、ジャズの仲間と活躍の場を探します。
途中で天才的とも言える才能を持つピアニスト雪祈と出会い、組むことに。しかし、必須のドラマーがいません。そこで、大の友人 玉田を初心者ながら仮メンバーに迎え入れ、3人の活動はスタートします。
最初はジャズバーに頼み込んで演奏させてもらい、観客も少なすぎてギャラも出ないという酷い有様。でも徐々にその実力が認知されるにつれ、観客が増えたり、ジャズフェスに招待されたり。
三人は、10代で日本一のジャズバー「SO BLUE」で演奏することを夢見見ますが、その支配人から激しいダメ出しをくらい、挫折。しかし、それを転機に自分達のジャズにとどまらず、一流の人間が持つべき人間性にまで思いを馳せ、成長していきます。
そしてついに、SO BLUEへの出演を取り付けますが、出演の2日前に雪祈が交通事故により命とも言える右手を複雑骨折。出演は認められるのか、大と玉田はどんな選択をするのか・・・。というのが一連のストーリー。

ジャズの映画ではありますが、原作は漫画という音楽の再現が不可能な媒体です。そんな制約の中でも、作者の石塚さんはあの手この手で音が感じられる作品を世に出してきてくれています。視点、演者の汗と表情、観客(モブ)。そして、聞いた人間へのインタビュー。見たことがない方はぜひ一読をしてもらいたいレベルで「音」が感じられる作品になっています。

そんな風に絵というアプローチで音の再現に極限まで迫った上で、本当に一流のジャズ演奏家(上原ひろみさんとか)が演奏しちゃってるもんだから、そりゃ鬼に金棒とはまさにこのことですね。内臓から揺さぶられるような、そんな鑑賞になりました。

のめり込み要素としては、主人公の大、雪祈、そして玉田の3人のポジションや経験がバラバラで、誰もが少なからず感情移入できる点も関係していると思います。
・ジャズに誰よりまっすぐで、練習を欠かさない大
・親がピアノの先生で4歳から楽器に触れているエリート的立場の雪祈
・三人の中で一番下手で才能もないが、練習量によって食らいつく玉田
キャラクター設定の多様さも、多くの人の共感を生んでいるのかと。

自分が結構不器用なのもあり、玉田の頑張りと、ほぼ初心者の時から玉田を観察し、成長を見届けてくれていたお爺さんの「成長しているよ」という一言、胸が打たれました。スラムダンクの桜木にも投影される部分があるような気もしますが、努力より結果だと言われるこのご時世、ある程度のレベルまでシンプルに努力が成果として見えやすいスポーツなり音楽にある種の爽快感を覚えます。


マンガのラジオというpodcast番組の初期に、石塚先生のインタビューがありました。どんな気持ちで漫画を描いているのかという問いに対し、「(ジャズの)入口に立って、人々にこんな面白いものがあるんだよというのを知ってもらいたい」という趣旨の発言をしていました。
キャプテン翼に憧れた読者がプロサッカー選手になり、スラムダンクに影響を受けた読者がプロバスケットボール選手になる。
もしかしたら、本作を見た人がジャズプレーヤーになったり、Dr.STONEを見て育った子が科学者になって、もしかしたらノーベル賞を取ったり。
そんな未来とマンガの力に期待してしいます。

もう一回見たい・・・

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