
普通であることだって立派な武器〜パルノグラフィティ/板垣巴留
それまで将来のことをよく考えずに生きてきたとしても、人生のあるタイミングでは自分の強み弱み・今後の人生何をやっていくか、どうやって食べていくのかを真剣に考えねばならなくなる。
そのタイミングは、自分にとっては大学院修士課程のとき。
高校生の時には「大学があるから〜」、大学の時には「大学院があるから〜」と延長に延長を重ねたとしても、いずれは就職活動と言う壁にぶち当たる。
今となっては変な話であるが、自分は普通であると言うことにすごくコンプレックスを持っていた。幼い頃に近しい親族をなくして医者を目指したい気持ちであるとか、インドを一人旅して人生観が変わった経験もない。日本1周をしたこともなければ、何か人生をかけて取り組みたいようなことも思い浮かばない。
しかしながら、迫りくる締め切り。
締め切りに迫られるような形で、エントリーシートを書き、それなりの志望理由をこしらえて就職活動を実施する。
それなりに名の知れた国立大学の院生ということもあり、なんとか会社が決まった。
今回ご紹介するパルノグラフィティは、Beastersで有名な板垣巴留さんの自伝漫画。恐らくご本人はこんな紹介のされ方ばかりでうんざりしているかも知れれないが、刃牙シリーズの板垣恵介さんの娘さん。
普通の女の子
漫画家というと、手塚治虫さんのようなイメージが先行してか、ぶっ飛んだ人生を歩み、ぶっ飛んだ仕事をしているような人を想像してしまうかも知れない。
けど、本書には板垣さんのご家族のことや今の生活について描かれているが、そういった「ぶっ飛んだ人種」からするといたって普通。
過去の自分にも言いたいのだが、この普通。
解像度を変えていくと十分に武器になるのだということを本書を読んで改めて思った。
たとえば、本書の中で板垣さんのお母さんが「ものを飾る傾向が強め」として面白おかしく描かれていたり、エロの情報源がお姉さんだったりという話が出てくる。
24時間缶詰になって漫画を描き続けているという状況と比べると、極めて普通だけど、こういった周囲の人々・自分自身の普通だって、よくよく観察するといくらでも「ネタ」は埋まっている。
実際、ものを飾るのが好きな人なんてこの世にたくさんいるわけで、それが世界で何番目に好き、だなんて情報に大きな意味はない。
でも、自分と比べて、自分の周囲と比べてちょっと違う。
そんなことでも「普通」という一言で片付けず、きちんと観察すると差異は必ずあるもの。
100人の人がいれば、100通りの人生があるわけで全く同じ経験をしてきてる人はんていないわけですからね。
普通を武器に社会を生きていく
これ、意外と社会人としての生活をしていく上でも重要な視点な気がします。
結構自分の周りの人と話をしていると、自分にはこれといった強みがないから・・・と半ば自嘲的に話す方が一定数おられます。
でもちょっと待て!
あなた、人の話を聞くのがめちゃくちゃうまいぞ、とか、感情のコントロールに長けてるぞという人。君もエクセル詳しくて、結構周りの人に聞かれてるじゃんという人。
気づいてないだけで、普通の人生を歩んできた人も十分武器があるわけ。
それをアピールして生きていけ!なんてやぼったいことは言いませんが、もし自分に長所なり強みがなくて自己肯定感が低めの人がいたら、一回立ち止まって
・自分が苦なくできることってなんだろう
・自分が無意識にやってしまうこと、癖ってなんだろう
・自分が他人からよく聞かれること、頼られることってなんだろう
ということを考えてみてください。
立派なスキルじゃなくてもいいんです。
一緒にいると安心できる、といった些細なことだって立派な長所。
皆さんの長所、はなんですか?