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(本)歴史思考

再読。
歴史というと、理系に進んだ自分からすると「センター試験のための苦行(暗記)」というあまりよろしくないイメージがあります。覚えなきゃいけない事項が多いし、面白くない・・・
で、社会人になって試験から離れてみると、少し見方が変わりました。

一時期、社会人たるもの一般教養として日本のことも知らねば!という謎の義務感、焦燥感のようなものに駆られ「よくわかる日本史」的な本は買っては見るものの、やっぱりあんまり興味を持てずに挫折・・・というのを繰り返していました。お恥ずかしい限り。
転機となったのはpodcast番組 COTEN RADIOとの出会いでした。
同番組を聴いたからといってテストの成績が上がる、という単純なものではないでしょうが、同じ人物・事象であっても切り口や説明の仕方でここまで面白くなるのか、というまさに目から鱗でした。
我々が見ているドラマも読んでいる小説も、人の物語。歴史に名を残すような偉人たちの物語が面白くないわけがないですよね。
ゆる言語学ラジオもですが、こういう学術的なものに興味を持たせてくれる良番組は日本全体の知識レベルを上げるのに一役買っていて、視聴者からそれらの分野の研究者なり発展させてくれるような人材が出て来れば、すごく素敵だな、と思ったりしてます。

で、閑話休題。
再読しても面白かったです・・小学生みたいな感想ですが 笑
ぱっと見、ビジネス書みたいな「思考術」を解いた本かと思いきやそうではない。むしろ、歴史という素材を使って精神の安寧をもたらしてくれる、そんな安定剤的な一冊です。
我々の悩みのほとんどは、現状と「当たり前」「常識」との差異から生じる、という著者(深井龍之介さん)。
・お金がない
・人間関係がうまくいかない
・成績が悪い
・同性が好き
よくある悩みですが、これらの悩みの多くは、お金はたくさんある方が良い、人間関係は良好であるべき、成績もよくあるべき、異性を好きなのが普通、そういった、当たり前すぎてもはや我々が「常識」とも感じていないことの差分から生まれます。
で、本書では歴史上の偉人を複数挙げて、これらの常識が歴史という長い目で見るといかに刹那的なものなのか、というのを極めて平易な言葉で説明して来れています。
お金持ちの方が良い、お金がたくさんほしい、と考えるのは”普通”かと思ってしまいますが、江戸時代のことを想像してみてください。ああいう生活をしていて、死ぬほど小判を持っていたとして、どれだけ価値があるでしょう。価値がない、とは言いませんが、現在のようにお金で多くのことができない時代では、お金をたくさん持つことの重みも変わってきますよね。実際、財閥や商人の地位というのもそれほど高くなかったそう。

また、本書を通して深井さんが伝えようとしているメッセージの大きなものの一つが「人は存在するだけで、99%成功しているのようなもの」ということ。
こう書くと、何をスピリチュアルなことを言っとるんだ!という声が聞こえてきそうですね。自分もこのフレーズを本書の冒頭で読んだときには理解できませんで下が、読み終わった今、意味がよくわかります。人間の成功、失敗なんて短いスパンじゃわからないし、失敗だらけの自分の存在・行動がもしかしたら将来の世界を変えることに通じているかもしれない。そう思うと、目の前の失敗に対する恐れの気持ちも、少し和らぐ気がします。
そして、聖人と言われる人だって完璧な人間ではなかった(ガンディー然り、イエスキリスト然り)。だから、失敗したっていくら遅咲きだって、むしろ咲かなくたっていい。そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。

YouTubeでたまたま見つけた動画。
脳炎になってしまい、海馬の損傷により7秒前の記憶がどんどん消えていってしまう女性の話。会話している側から忘れていってしまうので、常にメモをとりながら生活しているそう。当然ながら、自宅はメモの山。
そんな状況ながら生きることを諦めず、取材班にも笑顔で接する彼女を見て、胸が熱くなりました。
本人は苦しみながらも一生懸命生きている。当然、辛いことも、もう嫌だと思うことも山ほどあったでしょう。
でも、そんな姿を見て、自分を含めて心を動かされる人間がいる。少し、周りに優しくできそうな自分もいる。
一面でしかありませんが、彼女が生み出した、大事な”価値”だし、本当に彼女が生きていて来れてよかったと思える自分がいる。
本人にも、そして彼女の面倒を見ているお母さんにも、感謝感謝です。

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