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成功する組織・失敗する組織を分けるものは何か〜アムンセンとスコット/本多勝一

旅行記、冒険記には、何か人を惹きつける魔力のようなものがある気がします。

振り返ると、大学時代に「深夜特急」という沢木耕太郎さんの旅行記を読み、世界の広さを痛感、初の海外旅行でアメリカに一人で旅立つという無茶?もやりました。

純粋に冒険というものに対する漠とした憧れもあるような気もしますし、世界中の未到の地をそれこそ塗り絵のように塗りつぶし、ついには宇宙にまで飛び出してしまった人類ですので、新しい土地に行くということに魅力を感じるのは我々のDNAにも刻まれているのかもしれません。

今回手に取ってみたのは、本多勝一さんの書いたノンフィクション「アムンセンとスコット」(再読)です。
最初に言っておきますと、まだ未読の人が羨ましいくらい最高の一冊です。
単に冒険ものとして読んでも非常にスリリングですし、山口周さんがおすすめするように、組織論としてアムンセンとスコットとを対比しても非常に得るところの多い一冊です。

あらすじ

イギリス出身のスコット、ノルウェー出身のアムンセンにより南極点到達競争を描いた内容になっています。
ネタバレになりますが、アムンセンが先にゴールし栄冠を手に入れます。一方、スコットは南極点にはアムンセンに遅れて到達しますが、帰りに吹雪にあい、全滅するという悲劇的な結末を迎えます。

2人の結果を分けたものは何か?

本多勝一さんの筆力のなせる技、随所にわかりやすい対比で示されています。

・本人の熱意で南極に向かったアムンセン。任命されたスコット。

・徹底的な準備・改善をしたアムンセン。偉大すぎる先達に縛られたスコット。

・結果を追い求め冷徹な判断を下すアムンセン。ある種の人間臭さ、優柔不断さを持ち合わせ直前でギリギリでメンバーの追加をしてしまうスコット。

単純化して数点挙げると、こんな感じになります。
しかし、これは単純化しすぎな部分があり本人の内面からの情熱に動かされ、徹底的に準備をしたアムンセンが良いリーダーで、ある点ではその逆だったスコットがダメなリーダーであった、というわけではありません。
自分なんかの甘々人間が見ていると、南極という世界一と言っても過言ではないような厳しい環境下で、あの時代のあの装備で南極点に辿り着いた。それだけでも両方の組織ともに超がつく程素晴らしい実力だったのではないかと思います。

人間の尊厳

確かに、冷徹とも言える計画を練り上げ、実行することにより偉業を成し遂げたアムンセンは素晴らしいリーダーであったことは否定しようもありません。
でも、自分にはスコットの人間としての気高さ・崇高さを感じずにはいられません。彼は最終的には帰りのテントの中で、2人と仲間と共に息を引き取ります。
時には氷点下50度近くまで気温が下がり、かつ燃料がきれかけているテントの中、手も十分に動かなかったでしょうに先に死んだ2人の仲間の婦人宛に手紙をしたためています。同時に、自分の妻宛にも・・。
絶望の中、こんなに他人を思いやれるのか、という内容ですので是非本書をお読みいただきたく。
ちなみに、妻宛の手紙の終わりに方にはこんなことが書かれています。

「家にいて安楽すぎる暮らしを送るより、はるかにましだった。」

最後まで、人間としての尊厳をうしわなわず、気高く逝ったスコットですので、妻の心中を察した一文なのか、はたまた、本心から出た一言なのか。
それは永久に謎のままです。

久しぶりに引き込まれ、時間を忘れる読書体験となりました。
これがあるから、読書はやめられません!

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