
飛行機にエコノミークラスとファーストクラスがあるのはなんでだろうか、と考えてみる〜夢と金/西野亮廣
もう紹介するまでもないであろう著者。
お笑いグループのキングコングの西野さん。
今やお笑いの枠を通り越して、「煙突まちのプペル」を含め、従来の枠にとらわれないさまざまな活動をなされてます。
その斬新さと先進性から、その言動に眉を顰めたり、批判をする人は少なくありません。それは西野さんご自身も十二分に感じているところだそう。
しかし、彼の著書を読んでいくと世の中と顧客に対する深い理解があってのアクションなんだということがよくわかります。
本書で書かれている内容も、もしかしたら古い考え方にしがみつく人には理解できない内容かと思います。しかし、クラウドファンディングに興味がある方、実施を考えている方は一読をお勧めします。
また、NFTにも触れられており、将来を想像する材料も提供してくれています。
知床遊覧船事故の原因に関する考察
労働災害が発生しうるような仕事をしている人だと、ヒューマンファクター分析とか要因分析といった言葉は馴染みがあるかと。
何かしらの事故が起こった場合、その根本原因を突き止め対策を取るための作業の一環です。
例として、KAZU1の沈没事故を考えてみましょう。
自分も昨今の記者会見で、あれほどまでの低レベルなものは久しく見たことがないというくらい、ひどいものでした。
具体的なやり取りは忘れましたが、事業を自分ごととして捉えていない代表の姿勢が浮き彫りになった会見でした。
でこういう事象が起きた時には、悲劇を繰り返さないためにも再発防止対策が必須です。
物事を表層でしか捉えられないと
・代表の考え方がひどい → もっとマシな人に代えれば良いのでは?
・管理体制が悪い → 管理体制を是正すれば良いのでは?
という、課題の裏返し的な解決策しか出てきません。
でも、これではダメなんですね。
例えば、代表を変えたからと言って、マシな代表になるとは限らない。
マシ、の定義も曖昧。
1回目の交代で仮にうまくいったとしても、その次の交代でうまくいくという保証は?
こういう表層的でインスタントなかいに飛びつきそうになったら要注意。
鍵は、原因の階層を自分で考えうる限界まで深め続けること。
なぜ、おかしな考え方の人間が代表になってしまったのか
→なぜ?
(例)どんな人間を代表にすべきかの基準が曖昧だから、選定のプロセスも確立されてないから
→なぜ?
(例)企業が設立されたばかりで、人事評価制度が確立されてなくても問題なかったから
という風に深掘りし、これ以上深く掘れないとなってから、その根本原因に対して打ち手を考えていくというプロセスがあるべき再発防止対策、とされています。
こういった網羅的な分析手法とは別ですが、西野さんは「資金繰りの悪さ」を原因の一つと考えているそうです。
というのも、自分は知らなかったのですがこの会社、実はクラウドファンディングで資金集めまでしていたそう。
と言っても、一般企業が通常のプロジェクト(遊覧船の運行)のために一般の方々からお金を集めねばならないという状況自体がすでに歪な気もしますが、そこは置いておきましょう。
知床遊覧船《KAZU1》、一昨年クラウドファンディングまでしてお金を集めたのに、これではお金を出した人達を裏切ったことにならないのか。。
— まこ (@makomako12) April 24, 2022
なぜ、悪天候の中出港したのか。。#知床遊覧船 #KAZU1 pic.twitter.com/V2SwUOozHr
今はすでにサイトが閉鎖されているそうですが、西野さんが残しておいた記録によると、数社合同でクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げたそうで、しかも返礼品が一番やってはいけないとされるTシャツ。
予想通り、あまり支援額は芳しくなかったそうで、そういった追い詰められた状態が今回の事故につながったのではないか、という見立てです。
上述の通り、これだけが原因だとするのは尚早ですが、1つの原因になったであろうことは想像に難くありません。
クラウドファンディング1つ取ってみても、素人がよく考えずに安易に手を出すと「本当はもっと集まっていただろう支援金が集まらない」という事態になろうことが容易に想像できました。
確かに、プロジェクトを立ち上げた側は良かれと思って返礼品に設定したTシャツ。応援する側からすると、対価にTシャツもらってもなぁ、という感じがします。
ファーストクラスがあることによってエコノミークラスの人が得をしている
これも、本書を読む前の自分にはなかった視点でした。
皆さんは、飛行機のファースト・ビジネスクラスを利用したことがあるでしょうか?なんとなく高くてセレブしか座れないといったようなイメージを持っている方も多いかと。
飛行機のエコノミークラスとそれらの席の値段の差は、新幹線の普通席とグリーン車の席との比ではないくらいがあります。
時と場合によりけり、ですが以前自分がドイツに単身で旅行に行った時の飛行機代(もちろんエコノミー)の往復費用は15万円程度でファーストクラスが100万円を超えていました。
実際に乗ったことはありませんが、ファーストクラスで手に入れられるのは
・スムースな搭乗手続き
・シートや食事など、快適な移動
の大きく2点。
庶民的な感覚からすると、いくら美味しい食べ物・飲み物が出てこようが、そこに10倍を超える費用を投下するか?という感覚が強いかと思います。
でも、値段という「切り口」からではなく、世の中の富裕層はその快適な移動を得るために購入する方がいるわけです。
実はこのファーストクラス・ビジネスクラスの存在はエコノミーを利用する我々の費用負担減にもつながっているそう。
ファーストクラスのシート面積を丸々エコノミーに置き換え、運賃と掛け算すると
ファーストクラス > エコノミークラス
になります。
ということは、航空会社が一回のフライトでいくら稼げるかという視点で物事を考えた時、ファーストが埋まるのが前提で、ファーストクラスを設けた方がより儲かるということになります。
で、フライトでの儲けを一定額とした時には、ファーストが埋まった分、エコノミークラスの値段を割り引くことができるわけです。
実はこういう値段設定は飛行機に限らず、コンサートや舞台なども同じ。
良い席イコールお金もちの人のためのもの、とするとなんだかイラッとしてしまいまが、良い席〜普通席で値段差の大きい価格設定をすることは、実は一般の人たちが利用できる機会を増やす(コストを下げる)ことにもつながっっているという捉え方もできるわけです。
これは、本書を読むまで自分にはなかった視点でした。
このほかにも。今話題のNFTなどについても触れられています。
購入することで自分という人間を表現することに使えそうだ、という視点など普通のお金の使い方をしてるだけではもちえない、未来予測と西野さんの考え方を知ることができる一冊です。