見出し画像

朦朧


存在が溶解していく 

己にたったひと匙分の価値も在りはしないという苦しみも 

幾多の甘やかな想い出も 

どちらも虚ろで 

まるで海の中で浮遊しながら他人の夢を見ているかのよう 


ここは何処だ? 


思考が散り散りに霧散して 

何ひとつ形を成さないのに 

縋り付くようにペンを取る 

すべてが小さな羽虫の見ている夢ではないと 

証明してくれる何かを 

黄ばんだ紙の上で探す 


探すんだ 


与えられる慈悲に頼らずとも 

己を支えられる術を 

混濁した意識の中で模索する 

じきに冷笑がやってきて 

何処を探してもそんなものあるわけがない と 

僕を苛むだろう 


素直に言ったらどうなんだ 

助けてくれと 

誰か この至極無価値な羽虫を 

それでも愛していると言ってくれと 

なぜ叫ぶことが出来ないのか 

と 

そう言って僕を責めるだろう 


眠りだけが僕を 

曖昧にその詰問から逃がすのだ 

目覚めた時の虚無感と引き換えに 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?