jun.fujisato
旅先の写真と簡単な詩をつけています。
小説「赤い花」の連載マガジン
足冷えに 痛みを感じる 冬寒さ ひだまりの光が ただ静けさを
夢に視し 君の幻 去り難く 朝日に逆らい 吠ゆる犬声
サトルは、電話越しに母さんに会ってほしい人がいることを伝えた。そして、今度のゴールデンウィークに多分その人と一緒に和歌山へ帰ると言った。同棲をしていることを何となく伝えてはいたが、もともと男三人兄弟の真ん中という気楽なポジションでもあり、「あーそうかい。」といった軽い感じだった。 兄は東京の大学を出たあと、地元に帰り父の仕事を手伝っている。弟は大阪の大学に通っている。できれば、弟にもいて欲しいことも母さんに伝えた。 今頃、ミキがミキの実家で話をしているはずだった。今
明日実家に帰ることを電話で告げると、ミキの母は少し迷惑そうにした。二つ違いの妹は既に地元で結婚をして子どもを産んでいた。可愛い孫の面倒を見ようと思っていたところに東京に行ったきり、盆暮れにも帰ってこない長女からの突然の連絡に違和感を抱いたのだろう。 ミキの父は、妹が生まれた翌年に事故で亡くなった。ミキが物心ついた頃には母と母方の祖父母とミキと妹の5人で暮らしていた。父の墓参りに行った記憶はあるが、父と母の結婚生活が短かったせいもあってか、小学校に上がるころには、父方の親
大自然と豊かな光 階段を下るたびに 滴り落ちる汗 遠く故郷を想っては 鳥の声にハッとする 遠くまで来た 遠く遠く離れた場所で 瞼に映るは 年老いた母と雪の宿
門をくぐる 中は漆黒と暑さがこもる 無数の仏が静かに鎮座す その迫力に心の鼓動強まる 振り返れば外の光
更に登る丘の上 風の音と緑がせせらぐ 頂に構えられし門の奥 漆黒に包まれた仏の座あり 暑さにじわりと汗が滲む
仏の山を背に 振り返れば 眩しい日射し 岩がつつむ 静寂の祈り
登る白壁の段 岩窟の奥に無数の仏 大小新旧贅粗はあれど 変わらぬ信心の思い ただひたすらに平穏を祈る
遡行すること数時間 辿り着いた岩窟に 旅人を迎えいれる白壁の段 船着き場で仰ぎ見ては 奥に鎮座する仏を想う
私は、意を決してこれまでのことをサトルに話し始めた。 最初は少し足の付け根に痛みを感じたことからだった。外科にかかったがよく原因がわからず、血液検査とレントゲンでの診断を経て、最終的に骨肉腫ということが分かるまでに3週間が必要だった。 若い程、進行が早いのだろう。骨肉腫と分かったタイミングでは、外科的な方法での対応は打ちようがなく、抗ガン剤治療に期待を持たせるくらいしか方法がないということだった。 それでも、私はまだ自分のことのように思えなかった。あの日、帰宅後
雲間より 差し込みし光 川面に受けて 見上げてみれば 緑の山と白い鳥
風涼し 車窓に映える 緑の樹 ビルマの雨季よ 明けし歓喜の日