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DJ体験 その2 世紀の変わり目辺り

これまでの回

数年前(2019~20)、たまたまFBで見つけた記事からDJ関連のサイト(英語)に飛び、そこから昔からやりたかったDJ体験が自分が思っていた以上に身近になっていたことに気づいた。数年後(2022~23)の今、ひょんなことからだと思っていた(クラブ等でDJとして立つ)ことが少しずつ現実味を帯びてきていて、今日から少しずつそこら辺の経緯から今に至り、そしてこれから向かいたい場所について、書き綴っていこうかな、の二回目。今回は、20世紀から21世紀にかけて辺りの、DJしたくてもしなかった(できなかった)話。

広がる交流

前回の話の中で、楽器屋店員さんを通じて知り合った人とユニットを組み、曲作りなんかしながら、ちょっと本気で上目指してた時期があって(そこには到達しなかったけど)その交流の中で現在でもDJ /サウンドクリエーターとして活躍する人と出逢う。ご近所さんで、よく彼の部屋に訪問したり彼が飼ってたペットをたまに面倒みたり、一緒に曲作ってみたりと色々行き来してた。奥さんがピアノ講師をしていることもあり、その彼から何人か生徒さんとして紹介されたりもして、なかなか面白い時期だった。

あこがれの部屋

そのDJ /サウンドクリエーターさんの部屋には、当時のDJ部屋なら当然であろう壁全面に所狭しと並ぶアナログレコードと、部屋のほぼ中央にでんと構えるターンテーブルとミキサー。その昔ふんわりと憧れていたDJという世界がすぐ間近で展開してる。彼の部屋を訪れるたびにその機材類に触ってみたい気持ちがどんどん膨れ上がっていった。差し込む西陽をバックにちょっとしたDJプレイをする彼の姿は、神々しささえ漂っていた。こんなことできたら、きっとかっこいいな、と妄想がとめどなく広がっていくのだった。

夢と現実

何度か部屋に通ううちに、徐々に彼とも打ち解けいよいよその気ならDJを教えてもいいよ、ということになった。ここでいうDJとは、その名を聞くと多くの人が想像するであろう、スクラッチDJも少々被ってくる。スクラッチDJやバトルスタイルDJとは、極々簡単に説明するとレコードをチュクチュクしながら曲を繋いでいき独創的なミックスができる人みたいなことも含まれる。その当時の僕もDJに対するそのイメージがかなり強く(アメリカで行われる、バトルDJの世界大会で日本人のDJが多く活躍していたのもの影響がある)、当たり前のように、ターンテーブルに置かれたアナログレコードを目の前にして、訳もわからずチュクチュクしていたのである。彼は当然、そんなのは織り込み済みと言わんばかりに、色々アドバイスをしてくれようとしていたのだが、いかんせんあまり人の話を聞ける余裕のある人間ではなかったので、やり取りはすれ違うばかり。実技的な面で言うと、この時点では正直あまり向いてないのではないかと、勝手に思い込んでしまった。DJになりたいという夢に対して、現実(自分自身の許容範囲の狭さ)が足踏みさせてしまったのだ。

挫折

問題はこれだけではなかった。もしレッスンを続けるとしても、今度は練習用の機材が必要になる。が、タンテにミキサー、更にレコード針をまず手に入れるとなるとそこそこの散財になる。この当時、DTM機材に相当額注ぎ込んでいた僕としては、これ以上の投資も見込めず、仮に意を決して手に入れたとしても、ここからの障壁は更に高いのだ。音源である。曲を繋ぐには、一定数の曲を保有していることが大前提である。しかも、そこには物理的なアナログレコードが必要になる。DJを始めるのに一枚の単価が数千円するレコードが何枚かは確実に必要になる。これは由々しき問題だ。今から始めて、一体いつそれなりのコレクションを持ち人前に立てることができるのか。そこまでに投資する額は一体どのくらいになるのだろう。そんな想いが頭の中でぐるぐるを巡り、至った結論は、今はできない、だった。敢えなくDJになりたいという夢は挫折したのだ。

道程は長く

チャンスは意外にも、近くに転がってたりする。20年ほど前にも、DJをやってみる機会はあった。ただ、タイミングではなかったのかもしれない。DJと知り合いになり、触る機会をもらっていながら、自ら一歩引いてしまった。しかし、それから20年近く経って、その経験は無駄になっていなかったことに気づく。スティーブ・ジョブズの英語の教科書にも載っている、有名なスピーチの一説にConnect the dots(点と点を結べ)というのがある。まさに今の僕にぴったりだ。次回は時代が大きく飛んで、DJへの夢が再燃するあたりを書いていこうと思う。

時代背景&補足

実はここまでかなりの伏線を貼っている。が、補足込みの文章になると読みづらくなるので、敢えて省いている。現在当たり前のようにあるオンラインサービスはほとんど存在していなかったので、ここからは予備知識程度の時代背景と補足を入れておく。
2000年前後は、まだガラケーの時代。スマホはもちろんない(iPhone登場は2007年)スティーブ・ジョブズがAppleにCEOとして復活、iMacを引っ提げて世の中を席巻しまくってた頃。それまでの音楽産業の新たな波が生まれてた。mp3の登場である。ありとあらゆる音源がリッピングされ、ネット上に海賊版まがいのサイトが溢れていた。当時は、デジタルコンテンツの著作権問題がまだ法整備されておらず、これをビジネスチャンスと捉えてAppleがiTunesサービスを開始する。時代がここで大きく動いたのである。そして、DJの世界にも、このデジタル音源の波が静かにでも確実に押し寄せ始めていたのだ。Serato。それまで、あくまでもフィジカルコンテンツが当たり前だった、悪く言えば旧態依然としたDJの世界に変革が訪れようとしてた。パソコンを使いDJをする。これは、クレートと言われる、レコードを詰め込んだ箱を抱え、クラブからクラブへと渡り歩くDJたちにとって、明らかに次世代へのDJ参入の敷居を低くする、革命とも言える出来事だったのだ。


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