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中判フィルム PLAUBEL Makina67 作例
僕が写真を撮り始めたきっかけは登山だった。
それまで写真を撮ることも撮られることもあまり好きではなかった僕はカメラとは無縁の人生を送っていた。昔、祖父が持っていたNikonのフィルム一眼レフ数台を父から譲り受けた時も全く興味を示さず、父がカビが生えていると言っていたのでそのまま捨ててしまったくらいだ。いま思えば本当にもったいないことをしてしまった。カビが生えていてもどうにか使えたかもしれないのに価値がわからない当時の僕にとっては昔のフィルム一眼レフなどただの重い固形物だった。
山に登り始めた頃はiPhoneで写真を撮ってはアプリで編集して、その頃に流行り始めていたインスタに気ままに投稿していた。写真に興味がなかった僕でも目の前の綺麗な景色を眺めていると自然と良いカメラで撮ってみたいという気持ちが湧いてくる。そこから家電量販店のワゴンセール品に置いてあった安価なAPS-Cの一眼レフを買ったのが僕とカメラの始まりだ。
その頃、写真の雑誌を何気なく見ているとある1枚の写真が目に飛び込んできた。その写真は本当に色鮮やかで自然な優しさを帯びた写真だった。いつも自分が撮っている写真とは全く違う写真描写に僕はすぐに心奪われ、その写真をずっと眺めていたのを今でも覚えている。写真の横に目をやると石川直樹さんの名前とプラウベルマキナ670があった。その当時、登山が好きだったとはいえ、登山誌を見ることも登山家や写真家を知ることもあまりなかった僕は石川さんのような著名な人でも全く知らず、ましてや中判フィルムのことも知らず、写るんですのような35mmフィルムのざらざらとした粒子感のある写真が僕の中でのフィルム写真だった。多分、未だにカメラに触れない多くの人が僕と同じような感覚を持っていると思う。石川さんの写真で初めてフィルム写真の美しさを感じた。
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しかしその当時、すぐにプラウベルマキナを買おうにもカメラ初心者がパッと手を出すほどの金額ではなく、いつか買えたらとその時は断念した。
それから数年が経ち、写真で仕事をするようになり、その中でずっと頭の片隅にあるプラウベルマキナの存在。石川さんの個展に足繁く通い、石川さんの写真にいつも心奪われ、プラウベルマキナに憧れる。だんだんと自分の機材も揃い始め、カメラの知識や技術がついてきたことでやっとプラウベルマキナを買うか、というときに意外にも僕の中には別の感情が芽生えてきた。
ずっと憧れていたプラウベルマキナを買ってしまったらそこで何かが終わってしまいそうな気がする。
別にプラウベルマキナを手にすることが僕のゴールだったわけでもなく、手にしてそこで満足して写真を辞めてしまうわけではなかったが、ただなんとなくその時は漠然と買わないほうがいい気がした。明確な理由はなく、今じゃない。もう少し待とう。そんな感覚だった。
それでも中判フィルムに惹かれ、様々な理由からPENTAX645を買い、僕は中判フィルムにのめり込んでいく。それまでデジタル一筋で気が向いた時だけ撮影の合間に35mmフィルムを撮るぐらいだったのが、いつしか仕事以外ではデジタルを使うことが少なくなり、僕の写真は中判フィルムで埋め尽くされていった。
それからまた時が経ち、フィルムの価格はどんどんと高騰化していく。フィルムカメラ自体の希少性や一部のファンや若い世代のフィルムの流行りによって良い品物は売れていくかプレミアがつくほどの高値になっていった。フィルム機というのはもうどこのメーカーも新しいものは作っておらず(ここ最近Pentax17が新しく発売されたが)、現在市場にある中古品が全てであとは個人が売却し、それらを手放す以外は世に出回ることもない。今まで2回も買うことを断念していたあのカメラもこのままいくと状態の良いものは出てこなくなってしまうかもしれない。特にマキナ67シリーズは世界に25000台しかない上にマキナが好きで持っている人はそう手放すことはないだろう。そう考えたらどんな理由があろうと今ある状態の良いものを早めに買っておくべきなのかもしれない。
そんなことを考えていた矢先、たまたまふらっと入った銀座のカメラ店に今まで見たことのない新品のようなプラウベルマキナ67が売っていた。前の持ち主がオーバーホールしてから売却したものらしい。もうこれは買えと言わんばかりのタイミングだった。いや、そう自分に言い聞かした部分もあるかもしれない。それでも本当に状態の良いものが目の前にあった。即決だった。値段は市場価格よりも高かったが、勢いもあって僕は遂に念願のプラウベルマキナ67を手に入れることとなった。(もともと初めて見た石川直樹さんの写真は67の後継機であるプラウベルマキナ670で220フィルムが使えるものだが、今は220フィルムが生産終了しているため、670ではなく67を買うことにした。)
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マキナ67を買って約1年が経った今、正直あまり使っていない。というのもあれだけ憧れていた念願のカメラをそう簡単に気軽に使えない気持ちとフィルム1ロール10枚撮りというのが最大のネックだった。僕が使っているペンタックス645nは1ロール16枚撮りでフィルムが高いこの時代に6枚の差はかなり大きい。特に僕は海外で写真を撮る際にフィルムを大量に消費するためその6枚の差がかなり効いてくるのだ。人によってフィルムは1枚1枚丁寧にシャッターを切るという人もいるが、僕は気にせず思うがままにシャッターを切る。120フィルムを30本使ったらペンタックスで480枚撮れるところをマキナでは300枚しか撮れない。その差180枚。自ずと海外にはペンタックスを持っていってしまう。あとはマキナを海外に持っていってもし盗まれたり、移動の際に壊したくないというのも理由だった。
ただ、ここ最近は改めてマキナのレンズ、その描写に魅力を感じていて、なるべく外に持ち出すようにしている。次回どこか海外に旅に行く際にはマキナを持っていこうとも思っている。個人的に操作性の問題から瞬間的な操作が必要なストリートスナップにマキナは向いておらず、人物や風景写真の場面で落ち着いて撮るのに向いていると思うのでスナップはフルオートのできるペンタックス、ポートレートや風景はマキナとここ最近は自分の中で使い分けをするようになってきた。この1年さほど使ってこなかったことからまだまだマキナを使い切れておらず、自分の手にも全く馴染んでいない。これだという写真もやっと1枚撮れたくらいだ。(その1枚は年末に発売される写真集に掲載予定。)それでもこの1年、様々な場所で撮り、noteにまとめられるくらいの写真が溜まってきたのでここで共有したいと思う。この作例によって少しでも中判フィルムやプラウベルマキナ67の魅力が伝わり、使う人が増えていけば良いなと思う。
プラウベルマキナのスペックなどこちらの記事に詳しく書かれているので参考にしてみてほしい。
また石川直樹さんの写真もぜひ見てほしい。できるなら携帯の画面ではなくPCなどの大きな画面で。
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石橋純
東京を拠点に様々な国や地域の自然に触れながら登山や旅をする写真家。 東京・南青山にあるジャズクラブ BLUE NOTE TOKYO では国内外のトップアーティストを撮影し、ファッション雑誌やアルバムジャケットの撮影やコラム執筆など幅広い仕事を行っている。
またユネスコの無形文化遺産であるブラジルの伝統芸能「カポエイラ」を26年間学び、LAを本部に置くCapoeira Batuque カポエイラバトゥーキ日本支部代表、Contra Mestre(副師範) の位を持つ。20年近く子供から大人までを教えながらTVやCM、アーティストのMVや広告などでカポエイラの監修や指導をしながら自身もパフォーマー兼モデルとして活動する。2022年に写真集「Life is Fleeting」を刊行。2024年12/7-12/22まで東京・学芸大学にあるBook and Sonsにて個展を開催予定。
Jun Ishibashi is a Tokyo-based photographer. He travels around the globe, engaging in mountaineering and other nature-related activities. His wide range of work includes writing columns and photographing mountains, fashion, album covers, and top artists worldwide̶including ones in Japan’s BLUE NOTE TOKYO, a famous jazz club in Tokyo. He also studied Capoeira for 26 years, a traditional Brazilian art form that is listed in UNESCO’s Intangible Cultural Heritage. As a certified Contra Mestre in the LA- based group Capoeira Batuque, he has been teaching people of all ages for over 20 years. Furthermore, he is a performer and model, supervising and teaching Capoeira on TV, such as in commercials, music videos, and advertisements for artists.