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青を味方に。ブルーピリオド。

こんにちは。天宮純です。
『天宮純の読みとく世界』、第二回は漫画「ブルーピリオド」です。

普段小説という媒体を使い、創作活動を行なっている私ですが実は漫画が大好きです。
ジャンル問わず少年漫画、青年漫画、少女漫画と幅広く読んでいます。
その中でも最近読んで心を動かされたのが、この「ブルーピリオド」です。​

​【あらすじ】
絵を描くことの楽しさに目覚めた主人公、矢口八虎。​
彼を中心に美術大学受験予備校や、入学試験での苦悩が描かれる青春群像劇。
「絵を描く」人たちが、何のために「絵を描く」のか
各々苦悩し、足掻きながら、好きなものを貫き通していく。​

【解説(ここから先はネタバレを含みます。)】
私がこの作品に興味を持ったのは、音楽からでした。
YouTubeにアップされていますが、クリープハイプさんの「栞」、YOASOBIさんの「群青」がコラボ動画として映像化しています。
どちらも好きなアーティストで良く聴いているのですが、特に「群青」はこの作品のために書かれた曲なだけあり、すごく世界観を体現しています。
今回はそんな「群青」の歌詞と共に、読みといていきたいと思います。

歌い出しはやる気のない、でも毎日がつまらない。
騒がしい渋谷の街でオールをした後、朝がきた渋谷は青く見えた。
そんな歌詞です。
これは八虎自身が初めて、心の動く絵を自分で描いたときの描写ですね。
勉強も友達関係も、うまくやり過ごしてしまう彼だからこそ
「わからない。でも心が動く。」
そんな体験をしたのでしょう。 
これは創作をする人間はみんなそうだと思いますが、心が何かにフォーカスした時に活動の原動力になると私は思っています。
八虎にとって、そのスイッチが入ったのは何気ない渋谷の朝だったのでしょう。

一番のサビは、一番初めの八虎が青い渋谷を描いたシーンだと思います。
「青」という色を、彼は渋谷のカラーに決めました。
歌詞の中で好きなものとして「好きなものを好きだと言う 怖くて仕方ないけど
という歌詞があります。
これは本当にそうなんです。日常生活でも。
好きなものや自分の感性を、評価され、選別され、時に否定される。
自信を無くすし、とても怖いことです。
けれど彼は初めてここで絵を描く楽しさを見つけ出したんですね。

二番の歌詞とサビは、藝大受験を決めた八虎の心情がよく現れています。
実は私自身が藝大を目指していた時期がありました。専攻は絵ではなく、音楽でしたが…。
私は自分の感性を学問に落とし込んで、それを武器に「受験」に立ち向かうということは正解のある学問よりよっぽど難しいと思っています。
何故なら10人いたら、10人が正解とは言わない可能性が高いからです。
もちろん10人いたら全員正解という学問も素晴らしいし、難しいものです。
でも八虎は後者の世界に居たのに、その世界よりも楽しいと感じて前者の世界を選んだ。
高校生でそれに気付き、これでうまく行く人は本当に稀です。だって経験値も、努力値も他のライバルよりマイナスなのですから。
早い人は幼少期から経験を積んでいます。
フィクションだから、ということももちろんあるかもしれませんが、それを凌駕する程の努力をする描写がとてもリアルで心がヒリヒリとしました。

ラストのサビ前の「大丈夫 行こう 後は楽しむだけだ」「楽しんで描こう
この歌詞がこの曲、そして「ブルーピリオド」の作品の中で一番好きなフレーズです。
創作はどこまで行っても、自分の出した答えがすべて正解です。
そしてそれを『どこまで外部出力して他者に伝えられるか』と言うのが、創作の世界の評価だと思っています。
なので結局は自分の作品を自分で愛せないのであれば、それはもう創作を続ける意味はない。と考えていたので、このフレーズが最後に来ることはすごく背中を押された気分になります。
私自身生まれてきてから、ほぼずっと形は違えど創作の世界にいます。
自分の感性が否定されることも、酷評される経験もあります。
そこで当時の私は自分の創作を愛してあげられませんでした。
だからこそ、逆境と捉え食らい付いていく八虎の格好良さは、すごく惹き付けられました。

【結論】
「ブルーピリオド」と「群青」のコラボ動画は、ブルボンさんのアルフォートのCMにもなっています。
「青を味方に。」と言うフレーズはアルフォートのCMキャッチコピーです。
一番最初に身につけた武器は、必ずその先の人生で役に立つ。
そんな意味が込められている気がしました。
私自身、執筆中に悩む事はたくさんあります。本当にこれでいいのか。これは本当に面白いのか。など…。
でも自分自身がその作品を愛せないのであれば、きっとその作品は世の中には受け入れてもらえないだろう。と感じます。
その経験則は、幼少期からの創作活動で身についたものです。
そんな初心に返らせてくれる、素敵な作品でした。
まだお話は続いていくので、引き続き読み続けていきたいです。

有り難うございました。

天宮 純

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