エヴァンゲリオン。人間の在り方。【後編】
こんにちは。天宮純です。
「天宮純の読みとく世界」、第4回は前回に引き続きエヴァンゲリオンについてです。
前回の投稿では、登場人物にフォーカスしてお送りいたしました。
今回は新劇、旧劇、アニメ全てに共通する「人類補完計画」にフォーカスをしてお送りしたいと思います。
【人類補完計画とは】
人類補完計画とは知恵の実を持ったヒトに生命の実を与え、使徒と同等の単一生命体に進化させることである。
「ヒト」はリリスという存在から知恵の実を持って生まれ、知恵と善悪の区別によって生まれた時から原罪を背負っており、肉体も脆弱で「死の概念」が存在しする。
一方劇中で敵対している「使徒」はアダムという存在から生まれ、生命の実をもっており不老不死の存在です。
そこに目をつけた「ゼーレ」という機関は、知恵の実と生命の実の両方を手に入れる事により、人類を神と等しい究極の存在に進化させようとしていた。
その結果とはサードインパクトを引き起こし、人類に知恵の実と生命の実両方を与え全人類を単一統合させた完全な生命体に進化させることである。
大まかな話としては、人は個人個人では様々な感情や行動をします。
それを辞め、一つの存在にすることで争いや混乱を無くし世界を浄化する、と言うのが大筋の流れです。
つまり個人という概念が無くなるのです。
例えば、天宮純である私も、読者の皆様も、みんな。一つの生命体になるという事です。
冷静に考えるとかなり恐ろしいですよね。それが人類の幸せの最高潮と、この作品では提示されているのです。
人間は個の存在でありながら、同調する圧力がかかります。一つの考えを人との間でまとめることは、目標になったり、大きな力になります。小さな物だと親と子供の間、恋人や友達同士なもの。大きな物だと会社や政治など、こういう風にして見ると、恐らく誰もが自分ではない別の人間と何かしらの考えをまとめて共存しています。ただそれが本当に正しいか、間違った考えかは個人の裁量になります。つまりエヴァの世界で、人類補完計画を望む者がいてそれを遂行しようとも、ゼーレやゲンドウにとっては「正しい考え」であって、間違っているとは思わないのです。「間違っている」といった、他人の主張こそが彼らにとっていらない存在なので、それを無くすのが「人類補完計画」だからです。
旧劇版、新劇版、漫画版、全てで人類補完計画は遂行されようと物語は進んでいきます。
しかし息子である碇シンジは、全てにおいてヒトが等しく単一な存在であるということを望まず、個として生きていくことを望みます。
「シン・エヴァンゲリオン」で、ゲンドウはシンジに「お前が望まなかったもう一つの世界を望む」というセリフがある様に、この親子の対立は物語の主として取り上げられています。
ただ過去作ではゲンドウとシンジがこの件で直接対峙することは無く、今回の新劇場版のラストでまさかのゲンドウがエヴァに乗るという形で対立を始めます。
ちなみに13号機の登場するシーンはYOUTUBEのトレーラーでも公開されていましたが、私はあの片膝を立てて座るスタイルから視聴前は乗っているのはカヲルくんだと思っていました(笑)
エヴァシリーズのキーワードになっている「円環」「始まりと終わりは同じところにある」という言葉の通り、この親子が真っ向から勝負を始める事は今までの人類補完計画をどうしたいの問題に決着をつけるという表れだったのかな、と推測しています。
結局ゲンドウはユイに会いたいがために、人類補完計画を遂行していた。それは自分のわがままだったと気づきます。またこの計画にシンジは必要なピースなのか最後まで悩んでいたと話していますが、結局シンジを息子として受け入れ、ユイの遺した自分への愛だった事に最後の最後で気づくのです。
今までシンジを否定していたゲンドウが、シリーズ最後の最後で肯定したシーンは今までは母親との親子愛をテーマにしてきたエヴァンゲリオンの新しい価値観として、父親との愛をここで持ってくることによって物語の舵取りが今までのシリーズとは違うと感じられてよかったです。
最後のマリと一緒に宇部新川駅から出ていくシーン。通称「マリエンド」は私も衝撃でした…。最後は絶対アスカエンドだと思ってた…。1度目の劇場で見た時は、その事実を消化できず呆然としてしまいましたが、2度目の劇場版を見た時は納得いくラストだったなと思えました。
まずアスカエンドにならなかったのでは、レイ、アスカ、マリにこの様な役割が与えられているからではないかと推測しました。
レイ→肉親への愛情(親子や兄妹関係)
アスカ→子供の頃の愛情(幼馴染や初恋)
マリ→対等な関係を築くことのできる大人になってからの愛情(結婚相手)
後ろにつけた関係はイメージなので、実際にマリと結婚したとか、レイを母親だと思っていたとかそういうのは別の話です。
レイへは家族への面影を感じ、親子、兄妹愛の様に無償の愛が湧いていたのではないかなと思います。恋愛の好きではない。序や破でレイを助けた事はそういう気持ちが強かったのではないでしょうか。自分に近い存在のレイを愛すことは、シンジくんにとって自分を愛することを意味しているのかもしれません。
皆さんも家族は好きですが、恋愛的な意味ではないですよね。そういうイメージです。
アスカへの愛は初恋や幼馴染への愛ということです。初めて他者を好きだと思ったり、恋愛を自覚したのは彼女が最初だったのではないかと思います。
そうして大人になった今、過去の気持ちを抱えて別々の道を歩むという結末により同じ気持ちを抱いた相手を胸の奥にしまっておく、という形で他人を理解できる様になったという一つの物語の結末です。
マリに関しては「縁が君を導くだろう」というカヲル君の言葉通り、大人になって価値観が変わったシンジ君がそばに居てほしい人の描写だったのかな、という推測です。
初めはよく分からない人であったが、自分がしてしまった罪の清算をする上で一番近くにいたのはマリでした。また、マリは初恋の相手アスカに対しても何らかの好意を抱いていた。自分の人生を構成するピースであるアスカを、助けるときに一緒にいてアスカとの物語を完結するには欠かせない物だった。
同じものを好きになるという事は、相手との共通点として好意を抱きやすくなるものです。」
「君がどこにいても必ず迎えにいく」という言葉通り、シンジが大人になってもマリは彼の今後の人生を何らかの形で支えていくという示唆がなされています。
そういう彼女と共に一緒に生きていくというシンジの決意が最後の「行こう!」とマリに手を差し伸べたシーンに表れているのだと解釈しました。
大好きな作品だけに、今回の読みとく世界の更新をするまでに相当作品を見返しましたし(アマプラで10回は見た。気に入ったシーンだけを繰り返し何度も見ることも含めて)考察記事などもたくさん参考にさせて頂きました。
そのため、全てのブームが落ち着いてからの更新になってしまいました。
総括として「エヴァンゲリオン」という作品は、人間の在り方、人生の指標の見つけ方、人として生きるために成長する意味、このような所を提示した作品だったのかなと思います。
旧劇、新劇、コミカライズ、全ての作品を楽しんでやっと理解できる作品になっている所が、改めて庵野監督を始めとする日本のクリエイターの叡智が集結された、間違いなく日本を代表する作品になっているのだと思う点です。
逆に裏を返せば、こういった考察であったり、自分で興味を持って作品を楽しむ姿勢がないと面白さが理解できない、難解な作品ではあるとは思います。
番外編として「エヴァシリーズをまだ見た事ないよ、何処から手をつければいいのか分からない…」
そんなあなたに天宮的にオススメの楽しみ方をご紹介します。
①新劇場版「序」「破」「Q」の三部作を鑑賞する
→比較的コンパクトに話がまとめられた「序」「破」から見始めることをお勧めします。この2作品を見ればエヴァの作品の雰囲気やキャラクター相関図などが理解できると思います。またこの2作品を観て、感触があまり良くないな…って方は、正直エヴァンゲリオンというコンテンツをあまり好きになれない可能性が高いです。(個人的見解ですので、もちろん全ての方に当てはまるとは言えないです)
その後「Q」を鑑賞します。多分初見は意味不明だと思うので、とりあえず謎に思った所を自分の中でリストアップしてみて下さい。
②TV版を鑑賞するか、「シン・エヴァンゲリオン」を鑑賞する
手っ取り早く、結末を知りたいのであれば新劇場版だけを鑑賞するという選択肢もありだと思います。一応この4部作を観ておけば、最終的なコンテンツのアンサーには辿り着けるからです。新劇場版で新しく出てきた伏線は、「シン」でよく回収されています。
ただ、物語全体の全ての伏線を網羅するのであればTV版からの伏線も新劇版で回収されているので、一度最終結末を見る前に1度目の結論を知るためにTVを全て鑑賞するという事は結構重要なんじゃないかなと思います。
③旧劇版、コミカライズを鑑賞する
ここに関してはかなりマニアックな路線になってくるので、エヴァの全貌を知りたい方のみで良いのかな、という位置付けです。
もちろんここで出てきた謎なども、「シン」で回収していたり、オマージュしているシーンがたくさんあるので、鑑賞しておくとより理解は深まると思います。
特に新劇版を見てマリが推しになった方は、コミカライズ版最終巻の「夏色のエデン」を読んでおくと、彼女のキャラクターがよく表現されているのでオススメです。
エヴァンゲリオン自体ループして色んな結末に着地している物語なので、どこの着地点が知りたいのかで、鑑賞するコンテンツは変わってくると思います。
以上がエヴァ歴、十五年の私の感想です。
思ったより長くなってしまいましたが、間違いなく天宮純を構成する作品なので話にも熱が入ってしまいました(笑)
もしおうち時間が退屈だ、という方がいらっしゃいましたら、こういう作品について自分の知見を広げてみるという楽しみ方もアリだと思います。
最後にエヴァンゲリオン、ずっとずっと大好きです。
今後も人生の中で、色褪せることのない作品です。
この記事を読んで、一人でも多くの方にこの作品に触れていただけたら嬉しいです。
ありがとうございました。
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