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父の毒舌

私は父とは正反対の性格だ。
父は、若い頃は大酒飲みで、争いばかりでヤクザ気質。
親族を自分の思いどおりに支配しようとしてきた。

そんな父から距離を置くことで、私は何とか生き抜いてこれた。

父は先月90歳となった。さすがに肉体はぼろぼろだが、眼光は鋭く、
記憶力は抜群(小学時代の友人や仕事仲間もすべてフルネームで覚えている)で私など足元にも及ばない。
口は達者で、病気には強く、子に頼らないで生き抜いていくという強い独立心と激しい気性を持ち合わせている。

母が圧迫骨折したこともあり、そんな父と久しぶりにいつもより長く一緒に過ごした。

ご飯の炊き方、麺の茹で方、生ごみの処理、食器の置き方等、実に口やかましい。母は本当によく60年も一緒にやってきたなとしみじみ感じさせられる。

そんな父の日常のふるまいや好みを見ている中で、意外にも私が好んでいることと重なるものが多々あった。


父と私との共通した好み
・麺に極めてうるさい(麺の茹で方は他人には任せられない)
・自宅での独り酒を好む
・筍や蒲鉾のような歯応えのあるものを好む
・小食(夜は炭水化物を摂らない)
・神棚と仏壇には毎日手を合わしている
・自分の身体を医者任せにしていない
 (自分の状態を見ながら薬の種類や量を変更する)
・寝起きのストレッチ、足指体操等の習慣化
・食後の食器はすぐに洗って所定の場所に置く
・空瓶や空き缶もすぐに処分する
・スーパーでの買い物が好き


しょうもない日常の中の話であるが、私の中にも父の好みがこうして脈々と伝わっていることを意識すると、今更ではあるが親子としての親しみが生まれる感覚は新鮮だった。


熱燗に父の毒舌走りけり



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