海峡、春雷、岬へ
伊集院静氏の25年から30年前にかけて出版された長編三部作「海峡」、「春雷」、「岬へ」を一気に読んだ。
伊集院静氏の生まれ故郷が舞台で、主人公の英雄を取り囲む労働者や在日の人に囲まれた環境や、弟を海難事故で亡くすということなどは、まさに伊集院氏の実体験がもとになった内容であったと思う。
主人公英雄が上京して東京で働き、恋をしていく中で自分の生き方を模索していくストーリーは、五木寛之の名作、青春の門とも重なる。私も10代に自分自身と重ねて青春の門を愛読していた記憶も蘇ってきた。
伊集院氏の情緒あふれる表現や舞台設定に惹かれ、伊集院氏のホロスコープ(誕生時間はわからないので惑星の配置とアスペクトのみの読み取り)を調べてみた。
太陽水瓶座21度、木星と合で、蠍座冥王星と蟹座火星との間で調停という激しいアスペクトを形成。さらに蠍座月を頂点として太陽と冥王星のT-クロスというアスペクトも重なり、太陽と木星に対しての冥王星、火星、月の激しい制限と葛藤のエネルギーが働いているが、その制限と葛藤を潜り抜けていくことで水瓶座太陽のまっすぐな正義感がより強まっていくイメージを感じた。
水瓶座21度のサビアンシンボルは「絶望し幻滅した女」と個人的なことを否定してそのことを通して普遍的なものに向かうエネルギーは、まさにこの三部作でも自分の生まれ故郷での具体的な出来事のその悲しみや切なさを描通して普遍性なものにつながっていくことと重なる。
太陽と冥王星、火星とのアスペクトは、身近な親族の死を通しての深い悲しみ、苦しみが激しい渦のように蠢いていくが。その渦を潜り抜けていく強い正義感がバネになっているのではと感じた。
伊集院氏の太陽水瓶座の反骨心、正義感、正直さという要素や蟹座火星である点は、私もアセンダント水瓶座で、蟹座火星であり、身近な家族の暮らしを正直に描かれる中、身内を大切にする情の深さを感じが伝わった。
きしくも秋のお彼岸で実家に墓参りに戻り、父ともいつもの如く既に何度も繰り返し聞いた苦労話を聞いた。父から聞く戦後の激動の時代の生活の様子がまさに伊集院氏が描かれている時代背景ととても共通するものがある。父も私とは正反対の激しいタイプである反面、とても情が深い。
父も父親を10歳で亡くし、盲目の母と妹の面倒を見るために学校には行かず点々と職場を渡り歩いた。親戚からは白い目で見られ、職場でもいじめに合い、今でもその強い劣等感が拭い切れないのだと語っていた。
また、幼少の頃に出稼ぎ先に行った妹が病気で帰ってきて、家の前で泡をふいて亡くなった話は何度も聞かされ、その妹の死というものをバネにして父は貧しくてはいけないと激しく働き続けてきた。
大半の友人は亡くなり、父自身の葛藤を聞いてあげるのはもう私しかいないが、父は典型的なエナジーバンパイヤで、他人の悪口を繰り返し、人を支配することで相手からエネルギーを奪い、元気になるタイプだ。
そういう親ではあるが、私自身のエネルギーが枯渇しないよう距離感を持って向き合うように意識している。
沈黙に耐へて高きに登りけり