「ナパ」と「ナパ バレー」
ナパ バレーというのは、実はナパとは違うのですよ。ナパと言えば City of Napa、つまりナパ市のことです。でも普通ナパと言えばワインの産地、と思いますよね。ところが、それはナパ バレーのことで、この2つは区別して知っておくのがいいですよ。混乱を避けるためにもね。それは地図を見ればすぐにわかります。
ナパはワインの産地ではありません。ワインの産地はナパから少し北に行って、地図上に Yountvilleと書いてある地点の少し南側から北西に延びている色の薄い部分とその周辺で Calistogaまで、そこがナパ バレーです。ナパはナパ バレーではありませんね。
バレーですから、ここは谷。そして、谷というと峡谷を想像しがちですが、それも違います。谷というのは、両側を山に囲まれているという地域のこと、それがある方向に長く延びているという地域を想像するのがむしろ正しくて、その山もこの地域ではせいぜい500メートルくらいですから、実際に立ってみたときにその場が谷であると自覚するのはむずかしいのではないでしょうか。写真で見るとこんな感じです。遠くに山々が見えますが、これが地図で緑に塗られている山の連なりです。
この地域には広い範囲にわたって原住民が定住していたことが遺跡によってわかっていますが、それは1万2千年ほども前にさかのぼることができるのだそうです。その一部が現在ナパ バレーと呼ばれている土地で、この写真に見られるような平地です。しかしこの原住民はやがてこの肥沃な土地からいなくなってしまいます。研究によると南アメリカ方面に移住していったという説がありますが、これは不明。そしてその後、今から 6,500年ほど前に定住したのがカリフォルニア各地に広がっていた原住民、そのなかでも現在のソノマを中心に活動していた種族がワッポ族、ナパ バレーに定住していたのもワッポ族です。
写真では右左の両側に山の連なりが見えますが、左側の山向こうがソノマ郡です。両側を山に挟まれたナパ バレーというこの土地におよそ 1,650人ほどのワッポ族が生活をしていた、ということは 1830年代にやってきたスペインの宣教師たちや軍隊の記録に書かれています。スペイン人が最初に戦わなければならなかったのは、熊などの野獣でした。そういう土地に穀物や果樹などを栽培しながら開墾を進めて、今日の姿になってきたのでした。ナパ バレーを舞台にした話などを中心に、これから眺めていきます。