素人のワイン造り (10)
(しばらく休止していましたが、実はアイスランドに行ってきましたが、そのことは『アイスランド旅日誌』に書きましたので、興味があれば読んでみてくださいね。大変に面白い旅行でした。)
さて、ワイン醸造の話を再開します。
バケツの中ではマスト(ぶどう粒を潰したグチャグチャの液)の発酵が進んでいます。発酵が始まって1週間もすると、ほとんど安定します。今ここで改めて、発酵のことを考えてみましょう。
発酵というのは「糖分が酵母によってアルコールと二酸化炭素に分解される化学反応」です。ここで必要になる酵母には2種類があります。wild yeastと cultivated yeast。これを日本では天然酵母とイーストと言います。あれ?ヘンですね。どちらもイーストでしょ?そう、どちらもイーストなのですよ。こういう言い方が混乱のもとですね。混乱しないようにしてくださいね。
現代人は「天然」だとか「自然」「オーガニック」というのが大好きですから、2種類のイーストを並べると、まず「天然酵母の方が良さそう」と感じますね。では天然酵母ってどういう酵母?
これは自然の中に存在する酵母そのままです。例えばぶどうの実は表面の皮に白い粉のようなものが付着してくすんだようになっていますが、それが酵母です。これがあるので、ぶどうの房が大地に落ちて自然に発酵してワインができた、ということがあるわけですね。それをお猿さんが飲んで、顔が赤くなったなんて話、聞いたりしませんか?
酵母をはじめとする微生物によってワインの香りや味覚が違ってきます。花の香りだったり果物の香りだったりしますが、その微生物の種類は地域によってさまざまで、それはぶどう畑によってすら違うこともあります。問題は生息する微生物のコントロールがむずかしいということで、土壌や気候条件の変化によってワインの香りや味覚が違う、その理由の一つが微生物なのです。
そしてまた天然酵母による発酵はコントロールがむずかしい。発酵が均一に進むとは限らないし、途中で活動が終わってしまうこともある。もちろん毎年同じだとは限らないですし、ワインメーカーさんはたいへんです。これでは量産されるワインには不向きな酵母であると言えましょう。逆に、単一畑のぶどうで作られるワインにはそこの天然酵母を使って発酵させる、これは良心的な方法であると思います。
一方のイースト(正しくは「培養酵母」)、これはまた次回に。(つづく)