「腰を入れる」とは
こんにちは。少しずつ暖かい日が増えてきましたね。トレーニングは順調ですか?
今回から、ちょっと細かい話を入れていこうと思います。今回のテーマは「腰を入れる」です。よく、走っている時には腰を入れなさい、と言われています。実際指導場面でもよく指導者が発している言葉です。腰を入れるとはどういうことか、自分で腰が入っているかチェックする方法、そして腰を入れるメリットなどを紹介したいと思います。
早速ですが、みなさんは、腰が入っている走りを意識していますか?また、どんな状態を「腰が入っている」と感じていますか?
これを体感する手っ取り早い方法は、壁を思い切り押してみることです。
ここに3パターンの壁を押している状態を絵に描いてみました。相変わらず下手ですみませんが、様子はわかりますか?基本矢印は加わっている力と考えてください。
①は腰が曲がって押している状態です。腰は入っていません。背筋にも力が入っていない状態です。①は赤い矢印、地面から得られるはずの力が外に逃げてしまっています。なので壁に加わる力も小さいです。いくら踏ん張っても力が逃げるので①は力が入りません。
②を飛ばして③は、腰があまりにも反っている場合です。こちらも腰は入っていません。そもそも地面に力を加えることができず、おへそから力が逃げてしまいます。これで力を加えようとするのならば、きっと腕を曲げて重心を前へ持っていき、全体重をかけて押す動作になるはずです。なのでこちらも力は入りません。
ということで②が1番力が出るのですが、この姿勢は③と似ています。しかし大きな違いがあります。それは腹筋に力が入っているかどうかです。腹筋に力が入っていないと脚にも力を入れることはできません。身体を、頭の先から尾てい骨まで一直線にする意識、あるいはつむじから吊るされている感じ、などなどコツはいろいろな言葉で解釈されていますが、要は身体が一本の軸になっている状態が「腰が入っている」です。壁に限らず、何か重たいものを押す時に1番力が入る姿勢が基本的に腰が入っている姿勢です。
壁を押してもよくわからないという人は、自転車(できればママチャリ)を漕いでみてください。サドルの位置が自分に合っている(漕いでいる時に膝がサドルよりも高くならない)ことを前提に、腰を思い切り猫背に曲げて漕ぐのと、真っ直ぐ、お腹と背中が1番薄くなる姿勢で漕ぐのとでは、力の伝わり方が全然違うはずです。そして自転車を、思い切りおへそを出して反って漕いでみようとしてください。きっとできないか、すごくぎこちなくなると思います。
ここまでをまとめると、腰が入っているということは、脚の力が1番力強く使える姿勢で、壁を押したり自転車を漕いだりすることで自分1人でも確かめられます。
しかし、これが走りの中、となると、意外と無頓着になってしまいがちです。何度も言っていますが、全力で走っている時には姿勢を含め、技術的なことは気付きにくく、直すのが難しいんです。おすすめは、背伸びをして、その姿勢のまま腕だけ下す方法です。自然と腰が入る姿勢になります。そのまま走ってみましょう。
ここまで書いてきて、「なぜ腰を入れるといいのか」も、見えてきたのではないでしょうか?そう、力を地面に伝え、その反力を得て推進力に変えるのに腰を入れた姿勢が1番力が強いからです。スタートからゴールまで、スタートからジャンプまで、投擲の初めから終わりまで、身体に1本の棒が入っているかのように軸を安定させ、脚の力を効率よく使ってパフォーマンスしてください。
背中を曲げて走ることもできますが、タイムは頭打ちだと思います。それでも速いタイムを出している人は、ただ肩甲骨が硬いだけで、実は腰が入っている場合もあります。
また、反って走っている人は、短距離ではたいてい記録は伸びないと思います。腰を反ると膝が前に出にくくなるので脚が後ろ回転になり、推進力はなくなります。長距離選手で腰が反っている場合は、姿勢を前傾させて重心位置を前にして、倒れ込む力を推進力に変えている場合もありますが、裏を返せば脚を後ろから前に持ってくる筋肉(大腰筋)が弱いことで起こる現象だと思っていただいて構いません。これは経験上の話です。
腰を入れる話は陸上競技だけではないです。相撲でもたまに解説で「上体で突っ込んでいるから足が出ず、力が加わっていない」というような内容の話を聞くことがあります。そういう力士は足元を払われるとあっけなく転んで負けてしまいます。腰を入れることは、様々な競技で大切な内容です。相撲、ラグビーのモール、バスケットボールのスクリーンアウト、などなど。
ということで、ぜひ「腰を入れる」ことを意識しましょう。陸上競技の、スポーツの基本といっても過言ではありません。先ほどもチラッと言いましたが、反り腰との違いは腹筋に力が入っているかどうか、です。背中が丸くなると背筋に力が入っていません。腰が入っているときは、体幹が薄くなり、腹筋にも背筋にも力が入っています。もっとコツを言うならば、背中を反った状態から、お腹を凹ませると腰が入ります。背伸びと合わせて試してみてください。
それでは。