国体の功と罪 〜スポーツ専門員の行く末〜
4月1日、入社式の便りが届く日。
国体を控えている、三重、栃木、鹿児島、滋賀などに採用されたアスリートは
認定式、辞令交付式なんてものが行われたのではないでしょうか。
これが、いわゆる国体傭兵です。。。
栃木県にもノルディック種目の選手がいきました。
栗田力樹と木村吉大、ともに長野県と秋田県の選手。
長野も秋田も地元国体を控えている中で、彼らは地元で競技を続けることができませんでした。
また、かつて茨城県のスポーツ専門員だった体操の内山由綺選手が
大学卒業を期に、今度は栃木へ、驚きました
直接面識はありませんが、かつての同僚であり
この記事の特集の前週が彼女でした。
スポーツ専門員の実情
私は2017年度と2018年度の2年間
茨城県のスポーツ専門員に認定されていました。
茨城県の場合はスポーツ専門員の基本給は25万円。
そこから諸々差し引かれて、手取り20万円を毎月貰えます。ボーナスはありません。
しかし、体育協会やスキー連盟から活動費をいくらか貰える場合があります。
あとは県内の公共スポーツ施設の利用に関して優遇される、という事もあるでしょう。
基本的には県内にいなければいけないルールですが、県内に良い練習環境がない選手は、実家周りか練習拠点の近くに住んでいますね。
スキー選手の場合最初の数ヶ月いるだけで、多くは県内に家を借りつつも、実家周りにいて練習しています。
そうしなければ、遠征費等が莫大になり競技を続けることができません。
私の場合は、実家が東京であり、給与と県からの活動費では活動できなかったので茨城県で働いていました。
活動費があまりかからない競技の選手や、他にスポンサーを獲得しキャッシュポイントがある選手は
生活が保障され、プロに近い形で活動することができます。
また、これでも活動費が足りない競技だとしても年間300万円のスポンサーがついたと考えれば大きいはずです。
これで、場所的な制限があるにしても、国体で成績を出すことが「仕事」となるので
ある程度、競技に集中することができます。。。
一方で単年契約であり、毎年更新、国体が終われば離職票を渡されて終わりです。
栃木国体に関していうと、冬季選手は今年度いっぱい。本大会選手は来年度いっぱいで離職票を渡されることになります。
個人的に知っている冬季選手の唯一の例外が、愛媛の郷亜里沙選手。
未だに愛媛の所属です。
スポーツ専門員の行く末
私自身は茨城県の企業に就職したあと、活躍が認められ、2年後にスポーツ専門員に認定され
契約満了後も、最初に就職した企業にいましたが、そこを10月にコロナ解雇となり
現在失業保険を受給中という運びです。
良い言い方をすれば
一定期間選手としての居場所を与えてもらえる
しかし悪い言い方をすれば
使い捨てにされて終わり
新卒というカードを失うのは人生を左右すると思います。
競技を続ける、というのは個人的には大賛成ですが
それ相応の覚悟が必要です。
「新卒」というのは現代社会において、重要なカードの一つ
一方で茨城県は別の道もありました。
国体終了後に教員として採用する道です。
茨城国体のための選手ということで採用試験を免除され、茨城国体までは選手
国体終了後は県内の教員になるという仕組みです。
国体選手を教員として採用するというのは良いシステムだと思います。
しかし、教員になる選手というのは、有力選手ではないかオリンピック種目ではない選手達でした。
そのため、国体で活躍はできてもその先がない選手
すなわち、国体で競技生活を終える選手です。
一方で茨城県はオリンピック競技の有力選手も多く採用していました。
#国体傭兵
茨城出身でない有力選手で、現在県内にいるのは私含めて3人しか把握できていません。
#200人近くスポーツ専門員として採用していたはず
地元で活動していたり、別の開催地に移る、実業団に入るなどという形で
ほとんどの選手が茨城を離れました。
これが国体傭兵と呼ばれる所以と共に実情です。
国体の温度差
「使い捨てにはしない、生涯雇用していく」
スキー連盟会長でありMTDの社長に言われ、その言葉を信じて茨城にきた私は
今回の件で煮湯を飲まされた気持ちになりました。
ただ、身銭を削って強化に尽力し、私をトップに引き上げてくださったので感謝の気持ちでいっぱいです。
とはいえ、国体がらみでこういった悲しいことも起きています
国体に関する熱量は関係者と一般人には大きな温度差があります
関係者は50年に1度の地元開催に沸き上がり、多額の税金を使い
見栄を張るために天皇杯を獲りに行きますが
一般人には「国体って何?」状態です。
そういったギャップによって「税金の無駄使い」と非難されることもあります。
#2年間県職員として給与をもらってた
私自身、そういった事を理解した上で茨城にきました。
だからこそ、意地で国体優勝をもぎ取りました
おそらく、雪なし県で実際に働きながら競技力を高め
国体の年に優勝するスキー選手は、私以外現れないと思います。
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