
22/23スキージャンプW杯 Wisla プレビュー
まだ11月1週目。世界中、氷河でもない限り雪景色とは程遠い季節。
スキージャンプワールドカップがポーランドWislaで開幕します。
夏模様での開幕
助走路
歴史に名を残す一戦となるこの試合。
ついに雪景色ではなくても、ワールドカップを行うことを決定した国際スキー連盟。
助走路は氷を敷き詰められているものの、着地する斜面はプラスチックのバーン。

故に景色は、多くの人々に馴染みのないサマージャンプという状態です。
ぶっちゃけ、ガチガチの氷やグサグサのバーンよりも安全であり
水を撒くだけで良いという、真っ直ぐ滑る分には非常に優れているため
個人的には結構好きだったりします。
プラスチックマット
このプラスチックマット、ジャンプ台以外に使われているのが
東京ドイツ村などにある「芝そりゲレンデ」です。
水で濡らすと、滑走性が飛躍的に上がり危険なため、雨天時等の時にそり遊びはできませんが
我々の場合はあえて水を撒き、滑走性を高めることによって安全に滑走することができます。
日本のジャンプ台のプラスチックマットは基本的にエメラルドグリーンで結構綺麗なので個人的に好きです。
ルール改正
北京五輪で大事件を引き起こしたスキージャンプ競技
今年も「より公平に安全に」と大幅なルール改正が行われました。
1番影響が大きいのが事前に行う身長、股下の登録測定方法。
そして、毎年のように行われるジャンプスーツの大きさや形の指定など
ルールが変更されました。
さらにスキーや靴なども細々と変更され
トータルすると大きくルールが変わり、選手の競技力に大きく影響を及ぼしています。
身長、股下の数値が変わった選手が多く、スキーの長さや、技術を調整する必要が出てきました。
また、近年よりもスーツを大きく作れるようになったため
多くの工夫を凝らすスーツ技師たちの腕が問われます。
日本チーム
Aチームの座席争い
今季の開幕陣容は、小林陵侑、佐藤幸椰、中村直幹、小林潤志郎さん、佐藤慧一、二階堂蓮の6人。
大きいところは、昨年シーズン引退した伊東大貴さんのところに誰が入るか?というところでした。
昨季の成績が基準を満たせず、強化指定選手に選ばれなかった二階堂蓮。
#拠点強化選手
故に、国内スタートと出遅れましたが圧倒的な力を示して海外遠征を勝ち取り
その海外遠征でも大車輪の活躍を見せ、チームの2番手として代表入りを果たしました。
2〜4年前のルールであれば強化指定外選手は、海外遠征に派遣することができず、国内で行われるワールドカップを待つしかありませんでした。
現在も、種目によっては指定外選手の海外遠征を認めていないので
実力と共に「運も味方につけたな」という印象です。
日本チームの状態
状態としては悪そうな小林陵侑。
メダル獲得の影響もあり、忙しいサマーシーズンを過ごしていました。
一方で次元が違うところは見せつけており、新ルールには既に対応したジャンプをしており
良いジャンプが出れば、とんでもない飛躍を見せてきます。
こういうのを「次元が違う」というのでしょう。
昨年のような傑出した姿ではなさそうですが、総合優勝争いはしてきそうです。
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今夏、国内、国外問わず勝利を掴み表彰台に乗り続けたのが二階堂蓮。
「次元の違う小林陵侑」に2度勝利しました。
氷の助走路に対応さえできれば、トップ10はおろか表彰台。
はたまた、とんでもないサプライズを引き起こせるかもしれません。
個人的にシーズン序盤、Rukaの向かい風を捉えた時に注目していきたいです。
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マテリアルチェンジの上に、堅実なルール対応を見せた中村直幹。
1日だけ一緒に練習しましたが、小林陵侑や二階堂蓮、山本涼太のよう
「凄い、絶対に勝てない」という印象を持つことはありませんでした。
#個人の感想
Aチーム入りして4年目。経験値にトップ10を窺う力はありそうなので
シーズン通じてどうやってマネジメントしていくのか注目です。
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小林潤志郎さんも、練習では時折鋭いジャンプを見せていましたが
悪条件などによって飛距離を落としてしまう場面が見られました。
安定して上位に入るのは、少し難しいと思いますが
そうした中でもトップ10に迫るのを何度も見ているので
良いときの爆発力に注目していきたいです。
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この夏、スーツに苦戦し良いジャンプをほとんど出せなかったのが佐藤慧一。
五輪を逃し、新たな4年のスタートダッシュは失敗に終わっています。
今は良いジャンプのイメージがあまりなさそうなので、かなり心配です。
転戦、中断期間などでどのように修正してくるのか注目です。
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スーツもさることながらスキーのルールに抵触し今まで使っていたスキーを
履くことができなくなった佐藤幸椰。
さらには、スーツの測定方法の変更によって今までの使っていた長さのスキーが履けなくなり
さらにはスーツの規格が変わるという、3重苦に陥りました。
ここまで行くと、今までと同じように飛んでも同じ競技力を発揮するのは至難の業です。
現在も試行錯誤の真っ只中でありながら、時間が足りず開幕戦に突入してしまい
成績を出すのは難しい状況と言えます。
今季は4月まであるので、問題解決の糸口を見つけてスーパージャンプを繰り出す姿を見たいところです。
海外選手たち
各国のナショナルチャンピオンシップやサマーグランプリの結果では
彼らの力を推し量ることは困難です。
サマーグランプリではKubacki(POL)が圧倒しましたが
2017年からサマージャンプで安定して、時折圧倒的な強さを見せているので参考になりません。
ただ、昨季の各国エースはそれなりのジャンプに仕上げて戦ってくると思うので
あとはそこにどんな新星が現れるのか注目ですね。
あとはスーツが大きくなる時は、個人的にまずはノルウェーに注目していくと面白いと思っています。
見方としては2年前と同じような形です
また、今季はこの地での試合を終えると3週間のブレイクがあるので
今週の結果を踏まえて、各国がどのように梃入れしてくるのかも注目ですね。