カミナシの経営チームが「スピードを上げるために”あえて”時間をかけたこと」
こんにちは。カミナシCFOの吉田純平です。カミナシは工場や店舗など「現場」で働く方々働く方々の才能を解放するために、ソフトウェア(SaaS)を開発・提供している会社です。
私が入社してから半年強が経過しました。この半年間でカミナシは劇的に変化したと感じています。最も大きな変化は、プロダクトを1つから5つに一気に増やしていく過程で、組織の様々な部分を変えていく必要が出てきた点です。が、その前段階でカミナシ社内でもほとんどの人が認識していないような、大きな変化が起きていました。それは「経営チームの意思決定スピード」です。
意外に思われるかもしれませんが、半年前時点では、事業や組織の急速な拡大で複雑性が増したこともあり、経営チームの意思決定スピードが課題でした。具体的には、軽めの案件でも経営会議でなかなか方針が決まらず議論を次回以降に持ち越したり、四半期に一度の全社方針の意思決定の会議で4〜5時間議論しても方針が決まらなかったり、といったことがありしました。
それが現在では、半年前には数週間かかって決めていたような重めの意思決定事項が、週に1〜2件ペースでバシバシ決められるようになりました。これによって、経営チームを起点に、会社全体に流れる時間を早めて行くことができている感覚があります。その裏側には、カミナシ経営チームが「スピードを上げるために”あえて”時間をかけたこと」があったと思っています。今回は、カミナシの経営チーム全体で課題解決に取り組んだ過程で得られた学びを、チームを代表して私から共有したいと思います!
カミナシの経営チームが「スピードを上げるために”あえて”時間をかけたこと」
一言で言えば、「お互いの認識を合わせ続ける仕組みを作った」ということに尽きます。
なんだ簡単じゃないか、と思われてしまうかもしれませんが、これができていないチームは意外と多い印象です。チーム組成当初は全員の認識が揃っていても、事業や組織のステージが変わったり、メンバーが変わったりする過程で、徐々に認識のズレが生じていってしまうものだと思っています。そうなると意見を一致させるのに以前より時間がかかり、チームとしての意思決定のスピードが落ちてしまいます。最悪、「あの人はなんであんな事を言うんだろう」「こんなに説明しているのになんでわかってもらえないんだ」みたいな不審が生じてしまう可能性もあります。
逆に、チームの認識が揃い、お互いの考えていることを理解できるようになると、何が起きるのでしょう?私たちの実感としては、都度議論しなくても各自が自律的に動けるようになり、意思決定のスピードが上がります。また、皆が腹落ちした状態で意思決定された内容は、迷いが生じない分、実行フェーズのスピードも上がります。だからこそ、チームの認識を合わせることに投資することで、少し回り道にはなるけれど、結果として目標地点に早くたどり着けるのです。
では、具体的に私たちが何をやったかを紹介していきます。
1)言語化:チームの「あるべき姿」を定める
まずは、経営陣がチームとして共通して目指すべきゴールや、そのために自分たちに必要なスタンスを言語化しました。
皆が一つの目標に向かっている状態にもかかわらず意見が折り合わない場合、大抵は「お互いのバックグラウンドが違う」ことに原因があります。特に経営チームのように、異なる強み・スキルを有するメンバーで構成されるチームの場合、それぞれが過去に経験してきた組織や業務などが異なることもあり、各自が想定する理想のチーム像は異なってくるものです。それによって、たとえ性格的には気の合う者同士でも、目標達成のための道筋や手段、時間軸などのイメージが違ってきます。
これは思考のクセのようなもので、チーム内で一度揃えても時間経過とともにズレが生じるものです。だからこそ、チーム全員で議論して、自分たちの「あるべき姿」について言語化し、いつでも参照できるようにしておくことが重要です。
カミナシの経営チームでは、私を含め直近でチームに加わったメンバーがいたこともあり、2024年の夏に1.5日の合宿を行い、改めて自分たちの「あるべき姿」を定めました。VP of HR松岡が主導してくれたこの合宿では、前半にいろいろなワークを行って普段とは違う角度でお互いを理解した上で、後半ではその内容を参考にしながら、カミナシ経営陣として共通して目指すべきゴールや、そのために自分たちに必要なスタンスを議論しました。
実は合宿では時間が足りず、その場で最終確定はしなかったのですが、翌週には細かな文言まで含めて確定できました。今では毎週の経営チームのミーティングにて、チームの「あるべき姿」を議題の最初に掲載しておき、毎回全員の目に触れるようにしてあります。内容自体はあくまで現在のカミナシ経営陣のためのものであり、皆さんのチームによって適切な内容は異なると思いますが、参考までに掲載しておきます。
2)仕組化:毎週のコミュニケーションを通じて、自然と「共通言語」を獲得する
次に、この言語化した内容を日々の業務で実行できるように、経営チームの定期的な活動の中に織り込むことで、仕組化していきました。
具体的には、毎週のミーティングでの議論を通じて、自然と経営チームの頭の中が同期されるような仕組みを作りました。以前の経営チームのミーティング※は、時間枠こそ設定されているものの、議題がなければその週は開催しないという運用で、何週間も開催されない時期もあったと聞いています。そこでこの時間枠を活用して、経営チームのミーティングを毎週しっかり開催して、お互いが最近考えていることを頻度高く共有する形に変更しました。
※必要に応じて議論をするためのミーティングであり、モニタリングや必要な意思決定を行う定期開催の経営会議とは別に設けていたもの
議論すべき内容がなければ開催しない、という運用が正しいことも多いですが、上記の経営チームの議論ミーティングについては、週次での開催に個人的にとてもこだわりました。不定期開催や隔週開催に比べてリズムを作りやすいことに加え、日々の議論の過程で「共通言語」ができていくことで、チーム内で認識が擦り合っていく点を重視しました(メルカリさんのセミナーで聞いた内容はとても参考になりました)。
実際に毎週開催してみると、「議論したい内容がたくさんあって、むしろ時間が足りない」ということが頻発していますし、何より「共通言語」ができて、スピードだけでなく議論の質も上がったように感じており、変えてよかったなと思っています。
一般的に「情報共有のための会議は無駄」と言われがちですが、真の目的は共通認識を揃えることだと思っています。最終的には、「あの人はこれを気にしそうだから、事前に用意しておこう」みたいな形で、話さなくてもチームの頭の中が同期している状態が理想です(他の皆には、私が「投資対効果」とか「運用の強度」とか言っている姿が想像できることでしょう笑)。
さらに、毎週のミーティングを通じて前述の「あるべき姿」が実現できるように、下記の工夫を行っています。私たちもまだ完璧にできているわけではないですが、この仕組みを運用するようになってから、確実に前進している感触があります。
全員が会社全体への説明責任を果たす:ミーティング終了後に、自分の管掌部門のメンバーに対して、ミーティングの内容を自分の言葉で話す(自身の管掌領域以外の議題も理解する必要)
強い「連帯感」と健全な「緊張感」:資料を事前に展開して各自がコメントを入れ合う(コメント無しは責務を果たしていないという圧/発言力のある人に引っ張られすぎない効果も)
「緊急ではないが重要な課題」から逃げない:経営チームで「週報」を始め、各自の頭の中を占めている内容を毎週共有し、その中から重要な話題を選んでして経営チームのミーティングの議題にする
3)定着化:仕組化した運用を継続できるように、高い強度を保つ
最後にとても地味ですが、上記の仕組みをしっかり定着化させるために時間を割くことも重要です。
これには特別な手段はなく、チーム内の誰かがオーナーシップをもって、強度高く運用する必要があります。カミナシの経営チームでは主に私がその役割を担っており、毎週の議題設定や議論の流れの設計、アクションが必要な内容は週に2〜3回くらいの頻度でリマインドする、等を行うことで、なんとか運用強度を保っています。
雑用と思われがちですが、こうした日々の業務運用の質(オペレーショナル・エクセレンス)を高める行動は、個人的に非常に重要だと考えており、使命感を持って取り組んでいます。株式アナリストとして数々の上場スタートアップの興亡を見てきた私の一つの結論として、素晴らしい理念・組織文化・製品を持つ企業に、オペレーショナル・エクセレンスが組み合わさることで、初めて偉大な会社を作れることができると信じているためです。
まとめと注意事項
ここまでの内容をまとめると、
あえて「チームの認識を合わせること」に時間を投下することで、不要な議論や疑念が減り、結果として意思決定や実行のスピードが上がる
チーム内の認識のズレは、放っておくと拡大していくものなので、継続的に認識を合わせる仕組みが必要
その仕組みを作るには、1)「あるべき姿」を言語化し、2)毎週のミーティングで意識できるよう仕組化し、3)高い強度で運用することで定着化を図る、ことが必要
の3つがポイントです。
ただし、これらはあくまでカミナシの現経営チームで上手くいったやり方であって、どんなチームにも適しているわけではありません。例えば、社長のトップダウンで経営の意思決定が行われる会社であれば、「認識を合わせること」にこれほど時間を投下する必要はないと思います。カミナシの経営チームは、協議で意思決定していく傾向があります。各自の意見を大事にする一方、ズレが生じた時の調整に時間がかかる面があり、であれば普段からズレを最小化していくのが合理的だった、ということだと思います。皆さんが各自のチーム特性に合わせて仕組みづくりされる際、一部でも参考なるところがあれば幸いです。
One more thing…
ここまで説明してきた取り組みによって、経営チームの意思決定スピードがかなり上がった感覚があります。そこに来て、最近、CEOの諸岡が様々な案件で「それもっと早くできない?」と問いかけることが増えており、意思決定やその後の実行が更に加速している印象です。「これぞスタートアップ」という感じで、毎日ヒリヒリしながらも楽しく仕事をしています!
カミナシは、これまで単一プロダクトだったところから、この半年で一気にプロダクトが増えました。それによって、ブランディングからマーケティング・営業、オンボーディングのやり方、それに合わせた組織設計、事業指標・目標管理の手法など、色々と変えていかなければいいけないことが同時並行でたくさん出てきています。古株のCOO河内曰く「カミナシ史上で今が最もカオス」だそうです。この史上最大のカオスの前に、なんとか経営の意思決定スピードを上げられて良かったな、と思いつつ、物凄い勢いで増える業務に対して、今度は実行側のスピードを上げなければいけないことが課題になってきました。
助けてください!
ということで、カミナシでは絶賛採用中です!
経営の意思決定フェーズでは良い感じの仕組みが回り始めたものの、これを顧客価値につなげるためには、各組織での実行フェーズが重要になります。事業や組織が急速に拡大・変化していく中で、実行フェーズで粗い粒度の課題がたくさん出てきていますが、現状はその解決に経営陣があたることも多い状況です。そうした実行フェーズのカオスを治める(粗い粒度の課題を解決する)人を、社内の各部署でもっともっと必要としています!(切実)
裏を返せば、今のカミナシには、こうした粗い粒度の課題を自分自身の判断でどんどん解いていく機会がたくさんあるということです。そうした環境にワクワクする方や、こんな感じの会社・経営チームにピンときた/一緒に働きたい!と思った方は是非、お気軽にカジュアル面談等でカミナシメンバーとお会いいただけると嬉しいです!!