社会福祉士・精神保健福祉士国家試験 権利擁護と成年後見制度(社会福祉士第32回 問題77)「四親等内の親族」とは
問題
問題 77 次のうち,成年後見開始審判の申立てにおいて,申立権者に含まれない者として,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 本人の孫の配偶者
2 本人の叔母
3 本人の甥
4 本人の子
5 本人のいとこの配偶者
試験センターのサイトは下記。
http://www.sssc.or.jp/shakai/past_exam/index.html
分析
成年後見開始審判の申立権者と親等の理解を試す問題。
成年後見開始審判の申立権者は「本人、配偶者、四親等内の親族~」である(民法7条)。本問は、選択肢のうち、どの人が四親等内の親族ではないか?ということを見抜く問題である。
前提となる言葉の定義を先に。
「親族」とは、配偶者、及び6親等内の血族と3親等内の姻族をいう(民法725条)。血族は本人と血が繋がっている者(養親子もこちら。法的に血縁があるとみなすため。民法727条)、姻族は配偶者と血の繋がっている者である。
次に、「親等」であるが、親等の数え方は「親子を伝うごとに1親等増える」と考える(民法726条参照)。本人から見て父母と子は1親等。祖父母は上に2世代伝うので2親等、孫は下に2世代伝うので2親等。
注意すべきは兄弟姉妹で、「本人の親の子」と考える。一回上に世代を遡り(父母)その下の世代の子(兄弟姉妹)と考える。つまり、2回親子関係を伝うので2親等の血族となる。
この考えに従って見ていくと、叔父叔母は、「親の親の子」なので3親等、甥姪は、「親の子の子」なので3親等、いとこは、「親の親の子の子」なので4親等である。
「配偶者」は、その相手と同一親等と考えることになっている。本人から見るとその配偶者には親等が与えられない(理屈の上では0親等と考えられるなくもない)。これは上記の後見審判開始の申立権者において、配偶者を別に明定していることからもわかる。
上記とパラレルに考えて、血族の配偶者はその血族と同じ親等と考える。つまり孫の配偶者は孫が2親等であるから2親等の姻族となる(なぜ、自分の配偶者ではないのに姻族となるかは後述)
「姻族」の親等も配偶者から見て数えていく。すなわち、配偶者の兄弟姉妹は2親等の姻族ということになる。
「姻族」は、配偶者と血のつながっている者であることは既に述べたが、これは「血のつながっている者の配偶者」もまた姻族になることを示している。上記の例で、本人からみて配偶者の兄弟姉妹が2親等内の姻族であると書いた。これは、この兄弟姉妹からみると「兄弟姉妹の配偶者」=本人ということになり、逆からみたら姻族にならないというのはおかしな話であるから、兄弟姉妹の配偶者もまた姻族としてカウントされる。先ほどの孫の配偶者も姻族となる。
ただし、姻族の姻族は姻族にはならない(たとえば姉の夫と妹の夫など)。
以上の解説によって、肢5以外は「四親等内の親族」であることがわかったと思う。
そこで肢5の「本人のいとこの配偶者」を分析してみる。本人のいとこは、本人の「親の親の子の子」なので4親等血族である。そして、そのいとこの配偶者は4親等の姻族となる(血族の配偶者は姻族)。
一見「4親等内の親族」に入りそうな気もする。しかし、ここで「親族」の定義を思い出していただきたい。「親族」のうち、姻族は「3親等内」に限定されるのである。
つまり、そもそも本人のいとこの配偶者は「親族」ではない。つまり申立権者となれない。
言い換えると、「4親等内」ではあるのだが「親族」にあたらないのである。
よって正答は5。
評価
親族に関する条文操作+条文にはないが通説的に解釈されていることの知識を前提として丁寧に解説すると上記のようになる。基本書を確認しながら書いたものであるがかなり細かいルールを駆使してその正誤を判定することができる。
しかし、これは司法試験の短答式問題であっても些末に思うような問題である。それはすぐに出てこないと困るという超基本知識なら別だが、調べれば済む問題を、法律の勉強に時間が割けない社会福祉士、精神保健福祉士の受験生に対して暗記問題のように出すのはどうなんだろう…とも思う。
もっとも、これらの知識を知らない場合でも、一番縁遠いのはいとこの配偶者だよな…、ということで解答を導きだすこともできるので、常識問題という範疇として見たほうが良いのかもしれない。
※この記事は、弁護士の筆者が、社会福祉士、精神保健福祉士の国家試験問題を趣味的かつおおざっぱに分析しているものです。正確な解説については公刊されている書籍を確認したり、各種学校の先生方にご質問ください。